DRAW:７７ 昇る光柱　作：人喰い

(77)



〜反帝アリーナ入り口〜


男「…強大な次元の“ズレ”を感じる……。
まさか『精霊王』がもうこちら側へ来ているのか…？」

無精髭を生やした男は反帝アリーナの入り口に足を踏み入れる。

男「…一般人をこんなに巻き込んで……YAGAMIの連中は一体何を考えている……」

身長は180センチほど。
獣のように伸び跳ねた黒髪に、夏だというのにファー付きのコートを羽織り、その瞳は鷹の如き鋭さだった。


男「ーーーだが、これも仕事だ。
終焉の焔………奴らは俺が斬る。一人残らずな」















遊戯王 Ph.X DRAW:７７
《登る光柱》














〜YAGAMI本社〜


橋本「…綾小路理事長！ 先ほど、ヨーロッパ代表の“あの男”から連絡がありました！ 反帝アリーナに侵入できたようです！」

阿澄「それに会場の運営からは、デュエルポリスの応援もあり、セントラルホール内にいた観客と、精霊を持たない決闘者の避難は完了したとのことです」

綾小路「…そうですか。それはよかった」

橋本「……ただ、侵入できたのはヨーロッパ代表の“あの男”と『メアリー=ベイクウェル』のみで、他の海外代表の決闘者達は皆、反帝アリーナを囲うようにして突如大量に発生した“瘴気”に道を阻まれ、足止めを食らっています…！！」

綾小路「…ふむ…。“彼女”との交信はうまく行っていますか？」

阿澄「ええ、かなり順調です。“彼女”ーーー『精霊王』は、間も無く反帝アリーナに現れると思います」

綾小路「…となると、あとは王に頼るしかないようですね」

橋本「しかし『八神社長』も、随分無茶な作戦を決行したものだ…」

綾小路「…ホッホッホ！ 社長にはきっと、私達には見えない“何か”が、視えているのでしょうーーー」






＊＊＊




◉明日人side◉
〜セントラルホール付近の森林地帯〜


放浪「……真和、俺の邪魔をするな」

真和「…そういきたいとこなのですがねぇ、マイン様にはもう時間がない。さっさと精霊だけでも回収するのが100%正しい選択だ」

放浪「……チッ…！！ 好きにしろ…」


真和「…よし、じゃあ決まりだな。
ーーーさぁ、授業を始めようか」


明日人「……ッッ！！！」







◉結維side◉
〜山岳エリア・洞窟前〜


結維「…らぁああぁあぁぁああああっっっ！！！」


終焉の焔A「う……ぐぁあぁあああっっ！！」【LP 1200→0】


結維「……まだまだ…っ、次はあなたよ…！！ 迅雷の騎士 ガイアドラグーンで、黒焔トークンを攻撃！！」

『迅雷の騎士 ガイアドラグーン』
[ATK 2600]
ーーーVSーーー
[DEF 0]
『黒焔トークン』

結維「ガイアドラグーンは守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、貫通ダメージを与える！！」

終焉の焔B「うぐふぉっぉおおっっっ！！！」【LP 2500→0】

結維「…はぁ…はぁ…！！ 今ので半分は削ったかな…！！ さぁ…ッ、次は、誰ですか…っ！？」

流石にこのモードでの連戦はキツいな…っ！ でも、やるしかない！ 私はこんなところで倒れるわけにはいかないの…ッ！！










〜森林エリア〜



プルルル…プルルル…


メアリー「ーーーハァイ♪ こちらメアリーよ。どうやらワタシ達以外はアリーナの外にはじき出されちゃったみたいネ」

メアリー「…えぇ、ワタシは森を調べながら山岳エリア、砂地エリアへと回るわ。けどポリスの救援もすでに来てたみたいで、一般人の避難はほぼ完璧……これワタシのやることあるかしら？」

メアリー「とにかくまぁ、そっちは任せたわよ、“次元の旅人”サン♪」


ブツンッ
ツー……ツー……

メアリー「さて、と。『レラ』！ 精霊の場所、わかった？」

レラ『はい！ 森林エリアに３つ、山岳エリアに２つ、砂地エリアに２つ、それからセントラルホール付近には…密集しすぎて正確な数がわからなかったんだけど…７から１０、ってとこねっ！』

メアリー「センキュー、レラ。やっぱ予想はしてたけどかなり少ないわね……そのうち味方は何人残っているやら…」

レラ『…あと、セントラルホールの前でとてつもない精霊反応が渦巻くのを感じる……っ、多分、「精霊王」様が、“こちら”に来られるのかと…』

メアリー「why！？ マジ！？
精霊王が直接来るってそれめちゃくちゃヤバイ状況ってことじゃない！？」

レラ『急ぐのよメアリー！ こっちを早く終わらせて、向こうと合流しなきゃ！』

メアリー「…走るのはニガテなんだけどなぁ〜っ」






◉戒side◉
〜砂地エリア〜


戒「ーーーこの辺りは一通り片付いたか…」


次はもう一度森林エリアに向かうか…。この辺りは見晴らしがいい所為か終焉の焔もほとんど寄ってこない。

戒「ーーー！！」

そこで何かの気配に気づき身構える。
だがこの辺り約20メートルは砂地だ……考えられるとしたらーーー

戒「……下かッッ！！！」

俺が後方へ飛び退いた刹那。
砂中から何者かが現れる。

戒「……！！」

巻き上げられた砂で目が……！！

？？「……♪」

仕掛けてくる…！！
この一瞬を敵は逃せないはずだ…！

戒「…チィ…！！」

俺は微かに目を開くが、敵の姿は確認できない。だが、前方から突き出される傘の柄のような物が一瞬確認できた。いや、あれはステッキか…？ …どっちでもいい、それだけ見えれば十分だ…ッッ！！

戒「……ッ！」

ガキンッッ！！

俺は胸元に構えた決闘盤で迫り来る何かを弾き返す。

ザクッ！

砂埃も晴れ、弾き飛ばした……ステッキが砂の中に突き刺さるのを横目で確認する。

？？「…ありゃりゃ、防がれちゃったか…！」

ローブ姿にフードを被っているが、その口調と、吐き気のする汚い手口……！！
この男だけは、忘れるものか…ッ！！

戒「貴様……ッッ！！」


？？「ーーーまた会えて嬉しいよ。斬波 戒」

戒「……俺も待ちわびていた。貴様を斬るこの瞬間を…ッ！！」



？？「パパとーーー婦警さんは元気？」



戒「…ッッ！ ディスクを構えろッッ！！！
『ジャラン』！！！」


ジャラン「……おぉ、怖い怖い…♪ けど残念。今は君とは戦えないんだ」

戒「…何だと…ッ…？」

ジャラン「そろそろタイムリミットだからね……。今日は挨拶に来ただけなんだ」

戒「…ふざけるなッッ！！ 今ここで俺と戦えぇッ！！」

ジャラン「…とにかく急いでるの。……じゃあまたね…♪ どうせまた会うことになる…！」

ジャランはそう言い残すと、突然ジャランの足下から発生した白い煙の中に姿を消してしまう。

戒「…！！ チ…ッ！ 逃したか…ッ！！」

奴は何処へ向かった…！？ 新たな精霊を刈りにか…！？ だが、奴は俺の手に精霊のカードがあることを知っていながら、それをわざわざ見過ごした…。

戒「……」

だとすれば、この地での目的は、既に達成されたということなのか…？


戒「ーーー！」

そこで辺りを見回していると、セントラルホール付近が白い結界のようなもので覆われているのが見える。


戒「……何だ……？ あれは……ッ！？」


そこへ向かえとでも…いうのか…？











◉火群side◉
〜セントラルホール前〜



千愛（ーーーさっきから、この辺りの空気がなんかおかしい…！ 瘴気が、だんだん薄くなって来ている…？ いや、この感じ……まさか……ッ！！）


マイン「これで終わらせる……！！ 俺は墓地のシラユキの効果をーーー」

火群「……ッ！」


マインがシラユキの効果発動を宣言しようとした、その時だった。

突如眩い光が俺たちを包み込む。

火群「ーーーっ！？」

マイン「ーーーッ！！」

和泉「……なっ…！？」

雫「何ですか…っこれ…っっ！？」

ニクス『…！ この光は、まさか……！！』



千愛『ーーー「精霊王」………「ルナ」様…ッッ！！』



俺は慣れ行く光の中で、目を開く。

視界に移ったのは、一人の女性の後ろ姿だった。
黄金に輝く、後ろで９つに束ねられた髪。
ところどころ褐色の肌を露出させた、ギリシャ神話の神を想像させるような白を基調とした服装。その上から羽織った淡い橙色の羽衣が、より存在感を際立たせている。
そして何より目につくのが、彼女の背後に浮かぶ9台の楕円形の『鏡』ーーー


この人がーーー『精霊王』ーーー！！！










ルナ『ーーーそこまでです。マイン』










戦場に響いたその声は、とても透き通っていた。





To Be Continued…




《次回予告》



次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:７８ “精霊王” ルナ光臨