DRAW:７２ 枯れない意思　作：人喰い

(72)



◉結維side◉
〜山岳エリア・洞窟前〜


結維「“私達”の反撃開始よ。鈴華」

鈴華「…結維さん……！」

結維「…じゃなかった、チョココロネ」

鈴華「鈴華で合ってますわよ！！
…っと、それはそれとして！ これから行くアテはありまして？」

結維「…とりあえずは急いでセントラルホールへ向かいたいのだけど……ここどこ？」

鈴華「…あなた、目的の場所にどうやって行くのかもわからないのに……『“私達”の反撃開始よ(キリッ)』なんてよく言えましたわねぇ」

結維「…うっ、うるさいわね…っ。私の『DUEL GEAR』、イかれて使えなくなっちゃったのよ、あなたの貸してもらえる？」

鈴華「…いいけど…、はい」

結維「……ありがと。…って、あれ？ これ電波届いてない…」

鈴華「…えぇ！？ 洞窟から出て見たらどうですか？」

結維「…！ あ、洞窟から出たら電波届く。
でも洞窟入った途端急に電波届かなくなる……何よこれ」

鈴華「…確かに奇妙ですわね……。何か外部の電波を遮断するものでも奥にあるのかしら」

結維「……っ」

鈴華「…奥、入って調べてみましょうかしら？」

結維「いや、私は遠慮しておく」

鈴華「…？ どうしたのよ」

結維「奥、とても暗い上に、DUEL GEARも使えない空間で迷子になったら大変よ」

鈴華「むむ」

結維「それに暗いし、足場も悪そうだし、何が起こるかわからないわ。もしかしたら凶暴な猛獣が潜んでいるかも…」

鈴華「ふむ」

結維「それから、とにかく暗いしーーー」

鈴華「要するに暗いのが怖いんですのね」

結維「断ッッじて！ 違いッッますッッ！！」

鈴華「…じゃあ行ってみましょう。電波が届かなくてもDUEL GEARの明かりは付くから真っ暗闇というわけではありませんし〜」

結維「わーっ！ 待って！ この馬鹿…っ引っ張らないでぇぇーっ！！」
















遊戯王 Ph.X DRAW:７２
《枯れない意思》
















◉明日人side◉
〜セントラルホール付近の森林地帯〜


明日人【LP 8000】

放浪【LP 8000】


◉TURN:０１◉


放浪「…先攻は俺だ、俺のターン！」

明日人「……」

放浪の決闘は今さっきこの目で見てる…！
その情報アドバンテージの分、この決闘は俺に分があるはずだ…！ いいか…落ち着け俺…！ 後ろは見るな…！ この決闘勝つぞ…ッ！

放浪「…俺は『妖刀ー不知火』を召喚！」[ATK 800]

《妖刀－不知火/Shiranui Spectralsword》
チューナー・効果モンスター
星２/炎属性/アンデット族/攻 800/守 0
「妖刀－不知火」の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが墓地に存在する場合、チューナー以外の
自分の墓地のアンデット族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターとこのカードを墓地から除外し、
その２体のレベルの合計と同じレベルを持つ
アンデット族Ｓモンスター１体をエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


明日人「…妖刀ー不知火を攻撃表示だって…！？」

放浪「更にカードを１枚伏せてターンエンドだ」【手札 3】

明日人「…！」

アンデットワールドこそ来なかったが、伏せカードが１枚…！ これは、誘っているのか…？ 俺が展開するのを……


◉TURN:０２◉


明日人「俺のターン！ ドロー！」【手札 6】

あの伏せがさっきの決闘と同じ『不知火流 燕の太刀』だったら…俺が展開し始めた途端すぐに止められ、次の返しにシンクロ召喚で大打撃を受けてしまう。
だったら……

明日人「俺は、『ローンファイア・ブロッサム』を召喚！！」[ATK 500]


《ローンファイア・ブロッサム/Lonefire Blossom》 †
効果モンスター
星３/炎属性/植物族/攻 500/守1400
(1)：１ターンに１度、自分フィールドの表側表示の
植物族モンスター１体をリリースして発動できる。
デッキから植物族モンスター１体を特殊召喚する。


明日人「ローンファイアの効果発動！ ローンファイア自身をリリースし、もう一体のローンファイア・ブロッサムをデッキから特殊召喚！」[ATK 500]

放浪「……植物族…、やはりか…」

明日人「もう一度ローンファイアの効果で自身をリリース、そして現れろ！
ーーーその気取らない優美さで、あらゆるものを包み込め！ 現れろ！『椿姫 ティタニアル』！！」[ATK 2800]

《椿姫
つばき
ティタニアル/Tytannial, Princess of Camellias》 †
効果モンスター
星８/風属性/植物族/攻2800/守2600
自分フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター１体をリリースして発動できる。
フィールド上のカードを対象にする魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。


明日人「更に手札から、『おろかな埋葬』を発動！ 俺はデッキの『薔薇恋人』を墓地へ送る！！」

《薔薇恋人
バラ・ラヴァー
/Rose Lover》 †
効果モンスター
星１/地属性/植物族/攻 800/守 800
「薔薇恋人」の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：墓地のこのカードを除外して発動できる。
手札から植物族モンスター１体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、
相手の罠カードの効果を受けない。


明日人「そして墓地の薔薇恋人を除外し、手札の植物族モンスターを特殊召喚する！
ーーー紅く染まりしその葉の舞で、見るものすべてを虜にせよ！ 舞い踊れ！『紅姫 チルビメ』！！」[ATK 1800]

《紅姫
あき
チルビメ/Chirubimé, Princess of Autumn Leaves》 †
効果モンスター
星８/地属性/植物族/攻1800/守2800
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は他の植物族モンスターを攻撃対象に選択できない。
また、このカードが相手によって墓地へ送られた場合、
デッキから「紅姫チルビメ」以外の植物族モンスター１体を特殊召喚できる。


放浪「……チッ…！」

明日人「薔薇恋人の効果で特殊召喚したモンスターは罠の効果を受けない！
バトルだ！ チルビメで妖刀ー不知火を攻撃！！〝紅蘭演舞〟！！」


放浪「…無駄だッ！ 伏せカードオープン！ 永続罠『不知火流 輪廻の陣』！！」

《不知火流
しらぬいりゅう
輪廻
りんね
の陣
じん
/Shiranui Style Samsara》 †
永続罠
(1)：このカードは魔法＆罠ゾーンに存在する限り、カード名を「不知火流 転生の陣」として扱う。
(2)：１ターンに１度、以下の効果から１つを選択して発動できる。
●自分フィールドの表側表示のアンデット族モンスター１体を除外して発動できる。
このターン、自分が受ける全てのダメージは０になる。
●除外されている自分の守備力０のアンデット族モンスター２体を対象として発動できる。
そのモンスター２体をデッキに戻してシャッフルする。
その後、自分はデッキから１枚ドローする。


明日人「…燕の太刀じゃなかったのか…っ！」

放浪「…俺の場の妖刀ー不知火を除外し、俺がこのターン受ける全てのダメージは０となる！！」

明日人「…くっ！ 防がれた…！」

だけど盤面的に有利なのは俺だ…！ このまま行けば…！ 押し切れる！！

明日人「…ターンエンド…っ！」【手札 3】


◉TURN０３◉


放浪「（…チッ…、雑魚が小賢しい真似を…ッ！）…俺のターン、ドロー！」【手札 4】

放浪「どうやらお前もこの領域に招待されたいようだな……フィールド魔法『アンデットワールド』発動！！」

《アンデットワールド/Zombie World》 †
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上及び墓地に存在する
全てのモンスターをアンデット族として扱う。
また、このカードがフィールド上に存在する限り、
アンデット族以外のモンスターのアドバンス召喚をする事はできない。


明日人「…来たか…！！ アンデットワールド…！」

放浪「『不知火の隠者』を召喚！」[ATK 500]


《不知火
しらぬい
の隠者
かげもの
/Shiranui Solitaire》 †
効果モンスター
星４/炎属性/アンデット族/攻 500/守 0
「不知火の隠者」の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分フィールドのアンデット族モンスター１体をリリースして発動できる。
デッキから守備力０のアンデット族チューナー１体を特殊召喚する。
(2)：このカードが除外された場合、「不知火の隠者」以外の除外されている
自分の「不知火」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果の発動時にフィールドに「不知火流 転生の陣」が存在する場合、
この効果の対象を２体にできる。


明日人「……っ！」

放浪「隠者の効果発動！ 自身をリリースし、デッキから『ユニゾンビ』を特殊召喚！！」


《ユニゾンビ/Uni-Zombie》 †
チューナー・効果モンスター
星３/闇属性/アンデット族/攻1300/守 0
「ユニゾンビ」の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
手札を１枚捨て、対象のモンスターのレベルを１つ上げる。
(2)：フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
デッキからアンデット族モンスター１体を墓地へ送り、対象のモンスターのレベルを１つ上げる。
この効果の発動後、ターン終了時までアンデット族以外の自分のモンスターは攻撃できない。


放浪「…俺はユニゾンビを対象に、ユニゾンビの②の効果を発動！」

明日人「…！」

デッキからアンデットモンスターを墓地に送ってレベルを上げる効果か…！
さっきの決闘で東雲先輩はあいつで馬頭鬼を落としてからのシンクロ召喚を防ぐために隠者に神の警告を打ったって訳か…！
だったら俺はユニゾンビ自体を止めてやる！

明日人「ティタニアルの効果発動！ 場の植物族モンスターを……、！！」

放浪「……残念だったな、お前の僕はもはや植物では無い」

明日人「…！！ しまったッ！ アンデットワールドか…ッ！」

放浪「ユニゾンビの効果によりデッキから『馬頭鬼』を墓地へ送り、ユニゾンビのレベルを１つ上げる」

ユニゾンビ[☆3→☆4]


《馬頭鬼
めずき
/Mezuki》 †
効果モンスター
星４/地属性/アンデット族/攻1700/守 800
(1)：自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、
自分の墓地のアンデット族モンスター１体を対象として発動できる。
そのアンデット族モンスターを特殊召喚する。


放浪「墓地の馬頭鬼の効果を発動ッ！ 馬頭鬼を除外し、墓地より現れろ！『不知火の隠者』！」[DEF 0]

明日人「…！ まずい…！ レベルの合計は8…！！」

放浪「まぁ焦んじゃねぇ…。お前のティタニアルを対象にユニゾンビの①の効果を発動！ 手札から『炎渦の胎動』を墓地へ送り、ティタニアルのレベルを１つ上げる」

明日人「…！ 俺のカードを対象に、手札を墓地へ送るためだけに効果を発動することもできるのか…！」

でも今墓地へ送ったカードは罠カード…？ 一体何の為に…？

放浪「更に、手札から魔法カード『封印の黄金櫃』を発動！！」


《封印
ふういん
の黄金櫃
おうごんひつ
/Gold Sarcophagus》 †
通常魔法
(1)：デッキからカード１枚を選んで除外する。
このカードの発動後２回目の自分スタンバイフェイズに、
この効果で除外したカードを手札に加える。


明日人「！！ あんなレアカードまで使ってくんのか…ッ！！」

放浪「俺は黄金櫃の効果でデッキの『不知火の宮司』を除外！」


《不知火
しらぬい
の宮司
みやづかさ
/Shiranui Spiritmaster》 †
効果モンスター
星４/炎属性/アンデット族/攻1500/守 0
「不知火の宮司」の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚に成功した時に発動できる。
自分の手札・墓地から「不知火の宮司」以外の「不知火」モンスター１体を選んで特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。
(2)：このカードが除外された場合、相手フィールドの表側表示のカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


放浪「宮司が除外されたことによりお前の場のティタニアルを破壊させてもらう…！！」

明日人「…くっ…そッ！」

ダメだ…っ、デッキパワーが違いすぎる……ッッ！！

放浪「……待たせたな…！ お前にも味あわせてやる…ッ！
ーーーレベル4『不知火の隠者』に、レベル4『ユニゾンビ』をチューニング！！」

明日人「…来る…！！ シンクロ召喚が…！！」


放浪「ーーー不屈の魂煌めかせ、戦を統べる焔を燃やせッ！！ シンクロ召喚！！ レベル8
『戦神ー不知火』！！」[ATK 3000]


《戦神
いくさがみ
－不知火
しらぬい
/Shiranui Shogunsaga》 †
シンクロ・効果モンスター
星８/炎属性/アンデット族/攻3000/守 0
アンデット族チューナー＋チューナー以外のアンデット族モンスター１体以上
自分は「戦神－不知火」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：このカードが特殊召喚に成功した場合、
自分の墓地のアンデット族モンスター１体を除外して発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで、
除外したモンスターの元々の攻撃力分アップする。
(2)：フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、
除外されている自分の守備力０のアンデット族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを墓地に戻す。


放浪「戦神ー不知火の効果ァ！ 墓地の隠者を除外し、ターン終了時までその攻撃力を吸収する！」

戦神ー不知火[ATK 3000→3500]

放浪「そして除外された隠者の効果により、除外されている『不知火の宮司』と『妖刀ー不知火」を特殊召喚！！」

明日人「…何…！？ まだ展開できるのか…！！？」

放浪「……俺は“ヤツ”とは違うのでな…。誰であろうと全力で叩き潰す！！
レベル4『不知火の宮司』に、レベル2『妖刀ー不知火』をチューニング！！」

明日人「……ッッ」

放浪「ーーー不屈の魂輝かせ、燃え盛る刀で敵を断つ！ シンクロ召喚！レベル6
『刀神ー不知火』！！」[ATK 2500]

《刀神
かたながみ
－不知火
しらぬい
/Shiranui Samuraisaga》 †
シンクロ・効果モンスター
星６/炎属性/アンデット族/攻2500/守 0
アンデット族チューナー＋チューナー以外のアンデット族モンスター１体以上
自分は「刀神－不知火」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：１ターンに１度、除外されている
自分のアンデット族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターをデッキに戻し、
その攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て守備表示にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2)：このカードが除外された場合、
相手フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力は５００ダウンする。


明日人「…連続でシンクロ召喚を…！！」

放浪「…バトルだ！ 刀神ー不知火でチルビメを攻撃！〝不知火流奥義・霊炎の太刀〟！！」

『刀神ー不知火』
[ATK 2500]
ーーーVSーーー
[ATK 1800]
『紅姫 チルビメ』


明日人「…が…っ！ はァ！！」【LP 8000→7300】

たった700のダメージでも結構いてぇ…！！
これがあいつらとの決闘…っ！ 東雲先輩はこんな決闘をしてたのか……！

明日人「……ッ！ チルビメが墓地へ送られたことで、効果発動！俺はデッキから植物族モンスター１体を特殊召喚する！ 現れろ！『薔薇恋人』！」[DEF 800]

本当はロードポイズンを呼びたかったけど、アンデットワールドの所為でまともに動くことができねぇ…！！

放浪「……こざかしい…ッ、戦神ー不知火でを攻撃！！
〝不知火流奥義・紅蓮双破斬〟！！」

『戦神ー不知火』
[ATK 3500]
ーーーVSーーー
[DEF 800]
『薔薇恋人』

明日人「…くっ…！！」

放浪「……俺はこれでターンエンドだ」【手札 1】

明日人「……はァ…！ はァ…ッ！ 何とかライフは守れたか…！」


◉TURN０４◉


明日人「…俺の…ターン…！」

放浪「……」

明日人「……ッッ」

やっぱりあいつはーーー放浪は尋常じゃなく強い…！ 初めて植物園会った時からそれはわかってた！！
あの時から放浪は俺が越えるべき目標の１つになっていた！！ なのに……！

放浪「……ここまで、か」

なんでだよ…！ なんで…手が動かねぇ…！ カード引けよ！ 俺！

明日人「……なんでだよ……ッ！！ なんでだよッッ！！」


なんで俺は……ッ、大切なものを守れねぇんだよ……ッッ！！！

力が……欲しい…！！
大切な植物達を守る…力が…っっ！！






俺の頬を伝う涙が、地に落ち草木をわずかに濡らした、その時だった。









『ーーーその“意思”、しかと受け取った』






俺の脳内に、野太くも、優しい口調の男の声が響いた。


明日人『ーーー！？ 誰だ…っ！？』





アルセイ『我が名はアルセイ。大樹の守神だ』











To Be Continued…




《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:７３ 森羅の守神