DRAW:５６ 闘いの伝導　作：人喰い

《WDCS予選・バトルロイヤル》

◉大まかなルール

参加者全員は、予選開始時に反亭アリーナの敷地内のどこかにランダムで転送される。そしてそれと共に反亭アリーナの館内と館外の一帯に散らばる“1〜16の数字が書かれた16種のパスカード”(1枚ずつではなくそれぞれ複数存在)のいずれかを手にし、『セントラルホール』前の受付に戻ってきた決闘者に本戦への出場資格与えられる。セントラルホール内にて予選終了まで待機。



＊決闘の申し込みは、DUEL GEARにより半径1メートル以内の一番近い距離にいる決闘者に申し込みコードを送る事で強制的に決闘となる。


◉決闘条件と勝敗による判定

・パスカードを持っていない決闘者同士
→勝者のDUEL GEARのマップに5分間、“全てのパスカードの位置が表示される”。
敗者は10分間、“決闘の申し込みができない“。

・同数字パスカード持ち決闘者同士(ゴールしていてもしていなくても)
→敗者の持っていたカードは運営によって“会場のどこかに飛ばされる”。

・異なる数字のパスカードを持つ決闘者同士
→勝者は10分間、“他の決闘者からの決闘申し込みを受けない”。敗者のカードは“会場のどこかに飛ばされる”。


◉禁止事項
・参加者及び観客・スタッフへの暴力・暴言
・参加者から直接パスカードを奪い取る行為
・パスカードの破壊
・パスカードの譲渡
・パスカードを2枚以上所持する事


◉持ち込める物
・40〜60枚のメインデッキ
・0〜15枚のエクストラデッキ
・支給されたDUEL GEAR
・支給された決闘盤



















遊戯王 Ph.X DRAW:５６
《闘いの伝導》















謎の光に包まれた火群は、気がつくと森林の中に飛ばされていた。





火群「ーーーここは…？」



あたりを見渡していると、一人の少女と目が合った。
距離はおおよそ30センチ。
身長は火群とおなじくらい。目が隠れるくらいの前髪から覗かせる瑠璃色の瞳をはち切れんばかりに丸くしていた。



少女「はわわわーーーっ！！？」

少女は肩に掛かるぐらいの青髪をびくりと揺らしながら驚き声を上げる。


火群「うぉえぁっ！？」


火群は驚きながらも距離を取り、決闘盤を構える。


少女「はわっ、ま、待ってください！」


火群「……へ？」



少女「わ、わたし、その、あなたと戦うつもりはなくてっ」

少女は両手を肩の高さまで上げて左右に振る。
それを見て火群は構えていた左手をおろし、挙動不審気味に少女に問う。


火群「…えと、じゃあその、君はなんでこの大会に……？」


火群のその問いかけに対し少女は、


少女「…それは、いまは言えません」


俯いてそう答えた。



火群「…ま、まあ、なんかしら理由があるって事はわかったよ。俺は市瀬火群。君は？」




雫「…『柏木 雫(かしわぎ しずく)』です」




火群「柏木さん、か。よろしく。
それじゃあまた会えたら」



そう言って火群がその場を立ち去ろうとした時だった。







ピピピッピピピッピピピッ！



突然の警告音の後、




『Duel Standby』



そう発せられた。
音声の出処は火群のDUEL GEARだ。


火群「…！？？」


火群は驚いてポケットからDUEL GEARを取り出す。
その画面にはこう記されていた。


【Duel Standby】
VS 「SYOUTA YOSINAGA」






火群「…さっそくか……！！」


草陰から1人の少年が現れる。


翔太「…さあ、やろうぜ！ 俺は吉永 翔太。あんたは？」



火群「…俺は火群。市瀬、火群！」



ニクス『…WDCS初陣だな、火群。自信はどうだ？』


火群『もち！ 大アリよぉ！』




「「デュエルスタンバイ！！」」



火群【LP 8000】

翔太【LP 8000】




「「決闘！！！」」




火群「…俺の先攻！」[手札 5]



雫（…はわわ〜、思わず隠れちゃった…っ。
けど2人とも、どんなデッキを使うんだろう………“奴ら”の手がかりになるかもしれないし、一応チェックしておかなきゃ…）





火群「俺はモンスターをセット、更にカードを1枚伏せてターン終了！」



翔太「…おいおいそんだけでいいのか？ そんじゃ、遠慮なく行かせてもらうぜ！ 俺のターン！ ドロー！」[手札 6]


翔太「俺は、儀式魔法『高等儀式術』を発動！！」


火群「…儀式召喚か…！」



雫（……！）



翔太「俺はデッキの『甲虫装甲騎士』2体をリリースしーーー儀式召喚！！ 現れろ！『終焉の王 デミス』！！」[攻 2400]



火群「………っ！！」







＊



〜セントラルホール観客席〜



千愛『さっそく市瀬火群のデュエルが始まったみたいね、和泉ちゃん』

和泉「…頑張って…っ、火群くん…！」




？？「ーーーあれ？ いずみん？」



和泉「あっ、瑞希先輩！？ どうしてここに？」


瑞希「それはこっちのセリフだよーっ！ 隣、座ってもいい？」


和泉「どうぞ！ 今ちょうど決闘が始まったところなんです！」


瑞希「へ〜、彼の応援に来たんだ？」


和泉「…え、えっと、そういうんじゃ無くて…その、友達の…」


瑞希「ははっ！ そんなに顔真っ赤にしてまで否定しなくてもいいのに〜！」


和泉「そういう瑞希先輩はどうなんですか〜っ」


瑞希「…あたしは、ちょいと用事でね…」


和泉「……？」


瑞希「おっ？ 彼、ちょっといきなりまずいんじゃない？」


和泉「！ ……火群くん…っ！」




＊





翔太「…俺はライフを2000払い、デミスの効果を発動！」【LP 8000→6000】


翔太「デミス以外のフィールドのカードを全て破壊する！！」



火群「…くっ…！！」


デミスが大斧を一振りすると禍々しい瘴気が辺りを包み、火群の場を一掃した。



火群「…この瞬間、破壊された『炎王獣 ヤクシャ』のモンスター効果発動！」



雫（……炎…王…っ？）



火群「…俺の手札の『炎王神獣 ガルドニクス』を破壊する…！！」



雫（…あれは……っ、いや、違う。違うよね…）


翔太「自分のモンスターを破壊してどういうつもりだ？ この状況にヤケになったか！？ だけどまだこんなんじゃ終わらないぜ！
俺は墓地の甲虫装甲騎士2体をゲームから除外しーーー現れろ、『デビルドーザー』！！」[ATK 2800]



翔太「更に俺はまだこのターン通常召喚を行なっていなァい！ 甲虫装甲騎士を召喚！」[ATK 1900]


翔太「バトルフェイズ！ いけ！ 俺のモンスターたち！！」



翔太のモンスターが火群へと次々に襲いかかる。


火群「くぅ…！ がぁああ…っ！！」【LP 8000→6100→3700→900】


翔太「そしてデビルドーザーが戦闘ダメージを与えた時、デッキの上からカードを1枚墓地に送ってもらうぜ！」




火群「！ 死者蘇生が墓地に…！」



翔太「俺はこれでターンエンドだ！」



雫（…やっぱり気のせいだよね…、）



◉TURN:０３◉


火群「……俺の、ターン！！ ドロォーー！！」【手札 ４】


ゴオォオオッッ！！


雫（！？ なにあれ…？ 手が燃えて……！！）



火群「…俺のスタンバイフェイズ時、カードの効果で破壊されたガルドニクスの効果発動！！」


ニクス『ったく、ヒヤヒヤしたぞ…火群』



雫（！ どこからか女の人の声が…？）


火群「効果で破壊された次のスタンバイフェイズ時に墓地のこのカードを特殊召喚する！！」


翔太「…なにっ！？ 自分のカードを破壊したのはそのためかッ！」



火群「ーーー不滅の焔その身に纏い、墓地より来れ紅蓮の翼！！
『炎王神獣 ガルドニクス』！！」[ATK 2700]



火群の足元の地が割れ、溶岩の噴出と共に不死鳥が現れる。



雫（……噓…！ あの姿……ッ！）



火群「 自身の効果により蘇ったガルドニクスは、自分以外の全てのモンスターを焼き払う！
ﾘﾊﾞｲﾊﾞﾙ・ﾌﾞﾚｲｽﾞ
《再生の業火》！！」


雫（…あの効果……ッ！）


翔太「なにいい！！？ うわぁああぁああ！」


不死鳥の業火が翔太の場のモンスターを焼き払う。


雫（………あの炎………ッッ！！）



火群「炎王獣 バロンを通常召喚！」[ATK 1800]



雫（……市瀬、火群さん…）



火群「バトルフェイズ！ 2体のモンスターで攻撃！！」


雫（……優しそうな人だった）



翔太「…！！ ぐわあああぁああ！」【LP 6000→4200→1500】


雫（……けど）


翔太「だけどまだおれのライフは残ってる…！」


雫（……信じたくはないけど）


火群「勘違いすんな！ まだ俺のバトルフェイズは終わってねぇ！ 速攻魔法発動！『炎王炎環』！俺の場のバロンを破壊し、墓地のヤクシャを復活させる！」[ATK 1800]


雫（……あの人は間違いなく）


翔太「なんだって！！？」


雫（……私の故郷の村を襲ったーーー）


火群「これで終わりだぁああ！ ヤクシャでダイレクトアタック！！」





雫（ーーー『終焉の焔』）







＊



次の決闘の申し込みが火群のDUEL GEARに届いたのは、火群が予選発勝利を収めたその後およそ3秒後だった。



DUEL GEARに対戦相手が表示される。




【Duel Standby】
VS 「SIZUKU KASIWAGI」



火群「！ ………間違えてコード送っちゃった、ってわけじゃなさそうだな…」



雫「……けた」



火群「…？」



雫「………見つ…けたーーー『終焉の焔』。」



火群「……何っ…？ 終焉の焔だって…！！？」



火群（クラースんとこの植物園を襲ってきたあの連中の事か…！？）




雫「…いい人だと思ったのに……騙してたんですね」


火群「…待ってくれっ！ 話を聞け！」


雫「…行きますよ……っ！！」



火群「…話すらする気はねえか……クソッ！」


ニクス『連戦でキツいとは思うが、こんなところで立ち止まってはいられん！！ 全力で行くぞーーー火群ッ！』




「「決闘！！」」




＊


〜セントラルホール・観客席〜


和泉「二連戦か…っ！ 火群くん…！ 頑張って…っ」


瑞希「………」


和泉（…瑞希先輩……にくすさんを見てから急に黙り込んで、じっと決闘ディスプレイから目をそらさない…。どうしちゃったんだろう…）




＊





先攻【火群】


◉TURN:０１◉



火群「俺のターン！！」[手札 5]



火群「…俺は、モンスターをセット、更にカードを1枚伏せてターンエンド！」




◉TURN:０２◉


雫「…私の……ターン！！ ドロー！」[手札:6]




雫「私は手札の『ヴィジョン・リチュア』を捨て効果を発動！」



雫「この効果でデッキから『イビリチュア・ガストクラーケ』を手札に！」



雫「そして手札から儀式魔法『リチュアの儀水鏡』を発動！」


雫「手札のもう1枚のガストクラーケをリリースしーーー儀式召喚！！」


雫「ーーー相手の魂をも深海へと誘う暗黒の魔手！『イビリチュア・ガストクラーケ』！！」[ATK 2400]



下半身に巨大なイカのような触手を持つ赤髪ツインテール少女のモンスターの登場と同時に、火群の足元から二本の触手が突き出て来る。



火群「…っ何だ！？」


雫「…見せてもらいます…っ、あなたの正体を…！」


火群「さっきから何言ってるんだよ！ …うおっ！！」


先ほど地面から突き出した二本の触手が火群の手札を二枚掴み取る。


雫「ガストクラーケが儀式召喚に成功した時、相手の手札をランダムに二枚確認し、その中の一枚をデッキへ戻します…っ。〝アビス・インバイト〟！！」


火群の手札は雫の目の前にて開示される。




『炎王獣 バロン』
『炎王神獣 ガルドニクス』



雫「ーーーやっぱり、あなたが私の故郷をを……！！」



火群「…っっ！！？」



雫「『ーーー墓地より蘇り、我以外の全てを焼き払う終焉の焔ーーー』。
私の住んでいた村が『終焉の焔』と呼ばれる集団に襲われた時に聞いた言葉です。その言葉とこのモンスターの効果、そして遠目に見た姿もよく似ています」



火群「……っ！」


雫「もう思い出したくないの！！ デッキへと戻って！『炎王神獣 ガルドニクス』！！」


火群「…くっ！」



雫「……墓地の儀水鏡の効果発動っ！ 墓地の儀水鏡をデッキに戻し、墓地のガストクラーケを手札に加えます！」


雫「更に、手札の『シャドウ・リチュア』を棄て、効果でデッキのリチュアの儀水鏡を手札に！」


雫「まだ終わりませんよ…っ！ 私は『リチュア・アビス』を通常召喚！」[ATK 800]


雫「リチュア・アビスが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから守備力1000以下の『リチュア』モンスター１体を手札に加えることができます。私はヴィジョン・リチュアを手札に！」


火群「…！ また来るか…ッ！」


雫「ーーー再びリチュアの儀水鏡を発動！ 手札のヴィジョン・リチュアの効果でヴィジョン・リチュア1体のみのリリースで儀式召喚！！来て！『イビリチュア・ガストクラーケ！！」[ATK 2400]


火群「…くっ……！！ またあのカードか…！！」



雫「…もう一度です…っ！〝アビス・インバイト〟！！」



再び火群の足元から触手が2本突き出され火群の残り2枚の手札を容赦なく奪い取る。



『炎王獣 バロン』
『炎王炎環』


雫「…炎王炎環をデッキへ！」


火群「…くっそ…！ これじゃろくに戦略が立てられねえ！」



雫「ーーーバトル！！ ガストクラーケでセットモンスターを攻撃！！〝スパイラル・ガスト〟！！」


ガストクラーケの触手が高速回転し竜巻を作り出し、火群のモンスターを攻撃する。




『イビリチュア・ガストクラーケ』
[ATK 2400]
ーーーVSーーー
[DEF 200]
『炎王獣 ガルドニクス』



火群「…ガルドニクスは破壊されたが、タダじゃあ倒れない！ 炎王獣ガルドニクスが相手によって破壊された事で効果発動！ デッキから『炎王獣』モンスター1体を特殊召喚する！ 再び現れろ！ 炎王獣 ガルドニクス！」[ATK 1600]



雫「…2体目のガストクラーケでガルドニクスを攻撃！〝スパイラル・ガスト〟！」



『イビリチュア・ガストクラーケ』
[ATK 2400]
ーーーVSーーー
[ATK 1600]
『炎王獣 ガルドニクス』





火群「…ぐぅぁっ！」【LP 8000→7200】



火群「ガルドニクスの効果でデッキから『炎王獣キリン』を特殊召喚！』[ATK 1000]



雫「…くっ…、アビスの攻撃力じゃ届かない…！ カードを2枚伏せてターンエンド！」[手札 1]



◉TURN:０３◉



火群「…俺の……ターン！！ ドロー！！」[手札 2]



火群（…ドローカードは炎王の孤島！ これで立て直す！）



雫「…何を引いたか知りませんが、無駄ですよ！ 伏せカードオープン！『水霊術ー葵』！！」


火群「…何っ！？」


雫「私の場のリチュア・アビスをリリースし、あなたの手札を確認してその中から1枚を墓地へ送ります！」


『炎王獣 バロン』
『炎王の孤島』


雫「それではせっかくなので…いま引いたばかりの炎王の孤島を墓地に送ってもらいます…！」


火群「…くっ……！！」


雫「…ふふっ♪」



火群（…完全にペースを掴まれた…ッ！！ どうすりゃ、いいんだよ……！？）







To Be Continued…






〜おまけ〜



. . 人人人.人人人.人人人.人人人.
＜教えて！ スッキーせんせー！＞
. . Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y



◉このコーナーは、読者のみんな(少数)から寄せられた質問(多分無い)に、『美 好先生(以下スッキー先生)』が一刀両断！ 快刀乱麻の回答をしていくコーナーだ！
質問が無い場合は、キャラ紹介や自問自答をしていく痛々しいコーナーになるから気をつけな！(ドン☆)
＊質問をいただいた時点で、本SSに載せる事を承諾したものと見做します。あらかじめご了承ください。
匿名希望の場合は言ってくださいね！



質問待ってるぜ！！(切実)





《次回予告》


翳すカードは、何の為か。


次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:５７ 復讐を映す儀水鏡


ーーー想いがカードに力を宿す。