第166話　俺が選んだ道　作：ター坊

~ユイ サイド~

『ユイ！お願い、帰ってきて！私もユイを支えるから！！』
『ユイ様！囚われないでください！！もう一度、一緒に戦ってくださいませ！！』



―っ！今の声は…！


「ひゃっ！ユウどうしたの？」
気付けば俺は迫ってた美羽を、肩を掴んで止めていた。あの声を聞いてある思いに達した。



そうだ、これは…夢なんだと。


頭の中では分かってた。俺は遊月を妊娠させるような事をした覚えはないし、死んだ筈の両親も姉さんも存在する筈もない。ましてや、こんな立派な家で笑顔に囲まれて暮らせるなんて、ある訳ないと思っていた。
けど、俺はこの夢を理想郷として受け入れようとしていた。

それは
―逃げたかったから。
急に全ての次元の世界の命運を背負うことになり、その重責から逃げたかった。
―恐かったから。
ディヴァインとの圧倒的な力の差の前に敗れ、もう戦いたくないと恐がっていた。


俺はその重責と恐怖にまみれて、大事なことを見失っていた。けど、あの声で、また見えるようになった。



重責なんかいらない。恐がることもない。



守りたい大切な人のために戦えばそれでいい。大切な人と共に支え支えられながら歩くから恐がらなくていい。


「早く帰らなきゃ。大切な人の泣く声が、ここまで聞こえてるから」

その瞬間だった。


ﾋﾟｼｯ

突如、空間がガラスのようにひび割れ亀裂が走る。
「えっ！？これ！？」
「あっ…あ…ユウ…さ…ま……」
美羽と遊月の体は仄かに光り、金粉が風で舞うようにサラサラと消えていく。
「…これが正夢になれるよう頑張るから。今は俺を元の場所に帰らせてくれ」
走った亀裂はさらに広がり





ﾊﾟﾘｰﾝ


理想郷が砕け散った。









白い何も無い空間にポツンと俺は立っていた。気付けば元々着ていた服を纏いデュエルディスクも装着していた。


「ユウ君」

聞き慣れたら声がする。
「姉さんか」
さっきの夢の中の姉さんではないことはすぐに分かった。
「私達も手伝うから、早くあの子たちのところに行きなさい」
「私…達？」

ﾄﾞｼｰﾝ

不意に後ろから何かが降り立つ。
「え？お前達は…」

ｷﾞｬｵｰ、ｶﾁｺﾁ、ｷｭﾙｲﾝ、ｻﾞｯ

「ギア・フェイト…オリハルコン・クロック、ソルＲｅB、ピュアリー、シグナム…」
そこに集ったのは今まで共に戦い、支えてくれた『救世者』達だった。
「ユウ君。この子達も私も、ユウ君が進みたいと思う道を歩けるように一生懸命支えるから、ちゃんと戦いなさいよ」
「ああ…」
俺はデュエルディスクを高く掲げる。すると、集まった救世者達は光の珠になり、デュエルディスクに吸い寄せられていく。
「じゃあ、頑張ってね、ユウ君♪」
最後に残った姉さんはそう笑って光の珠になり、デッキの一番上に蛍火のように留まってパッと弾けた。
俺はそのデッキの一番上のカードを力強くドローする。
「俺は…戦う道を選ぶ。夢なんかじゃない、大切な人と一緒に暮らせる世界のために。…行こうか。『未来の真救世者（トゥルーメシア）-スキュルート Eternal Ace』。遊月と美羽のところへ」
召喚した天使の杖から放たれた光で、空間はより白く包まれた。











~一方のその頃のみんな~



「ブラック・マジック！！」

LP:1300→0

「シューティング・ソニック！」

LP:2100→0

「螺旋のストライク・バースト！」

LP:1500→0

まるで何度も打ち寄せる荒波のように巨人の軍勢は遊戯をはじめ、多くのデュエリスト達を消耗させていった。歴戦のデュエリスト達とはいえ、無尽蔵に湧く敵を捌くのに精一杯である。
「ユイ…。お願い、帰ってきてよ…」
「ユイ様…。お戻りになって…下さい…」
大切な人を目の前で失い、二人の少女―美羽と遊月の瞳は涙で濡れ、心が折れそうになっていた。

終わりが見えぬ戦い

刻一刻と迫る世界が滅びるカウントダウン

そして大好きな人が永遠に帰ってこないかも知れないという絶望

それらに押し潰されそうになった時だった。



ビカーー


その場の誰もが目が眩むほどの閃光が迸る。




「…なに？」
美羽と遊月はそっと目を開ける。するとそこには…




「ユイ様！」
「ユイ！！」
その姿を確認するやいなや、二人は帰ってきた人の元へ駆け抱きつく。
「ユイ…ユイィ…」ｸﾞｽﾞｯ、ﾋｯｸ
「ユイ様…。よく、御無事で…」ｩｩ
「ごめんな。…そしてありがとう。二人の声、ちゃんと聞こえた。その声のおかげでこうして帰ってこれたんだ」
泣きつく二人の髪をユイは優しく撫でる。



ｼｭﾙﾝ、ﾋｭﾝ

「なっ！」
突如、ユイの両足首に何か填められる。それは鎖で繋がれ、２体の巨人のサイコデュエルディスクへと続いていた。そいつらはクロウとⅢと交戦中だったが、突然現れたユイに迎撃対象を切り替えたようだ。
「ユイ！おめぇ大丈夫か！？」
「あまり無理しないでください」
「…大丈夫だ」
ユイはデュエルディスクを構える。
「迷ったりしたけれど、もう決めたんだ。誰かに頼まれてとかじゃない。自分の意思で、自分が進みたい道を歩む為にディヴァインを倒す！」

乱入ペナルティー
ユイ:LP 8000→4000

「邪魔をするな！」


巨人A:LP:7500
モンスター:ＴＧハルバード・キャノン
クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン
星態龍
魔法＆罠カード：伏せ１枚

巨人B:LP 7000
モンスター:サイバー・ドラゴン・インフィニティ
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
迅雷の騎士ガイア・ドラグーン
魔法＆罠カード：伏せ１枚


カオスジェネレーションシステム
稼働準備完了まであと　６０分