第100話　決戦！敵は阿津血城にあり！！　作：ター坊

俺達が飛び立ってものの5分で狼煙が上がった辺りの地点に到着した。そこは阿津血城と目と鼻の先にある広場だった。降り立ち、そこに待っていたのは明智と数人の兵士だった。
「皆様。よくぞ来て下さった」
「まあ、あの書状はホントっぽいからな。それにしてもなんでこんな計画を？」
「それは」
「報告します！」
俺と明智の会話に割って入る兵士が来た。
「どうしましたか？」
「はっ！奇襲は功を奏し、織田軍足並み揃わず混乱。阿津血城城外を制圧しました！」
「うむ。全軍に伝えよ！そのまま城内に突撃。一気に織田信重の首を獲る！敵は阿津血城にあり！！」
「はっ！御意！」
割って入ったのは伝令のようで、今の所は明智側が優勢のようだ。
「拙者達も急いで入りましょう！」
「え！？ちょ、おま」
明智はそそくさと城の方へ向かい、俺達もそのあとを追った。
明智を追い、阿津血城の門を潜る。城そのものは和風だが構造は洋風のようで門から入ると庭が広がる。
「明智！待ってくれ！」
「…はっ！ユイ殿。これは申し訳ない。つい勇んでしまい」
「まあ、決戦だしな。無理もないと思うが、せめて裏切った理由くらい聞きたいな」
「そう」
明智が話そうとした時だった。
「ウッキー！影政！信重様を裏切ってタダで済むと思っとるっきゃーか！？」
城内への入口の上から小柄な男がピョンと飛び降りてきた。
「なんだ？あの猿っぽい奴は？」
「くっ！藤吉郎(とうきちろう)！」
「そこのお前！オイラを猿っぽい言うたなー！ウッキー！」
明智が言う藤吉郎と言う男、その辺が猿っぽい訳なんだが。
「明智。アイツは？」
「あの男は林上(はやしがみ)藤吉郎。あやつも織田四天王の一角です」
あの男も幹部か。それにしても林上の怒り具合から、とても芝居とは思えない。やはり明智は本気で信重を討つ気だろう。
「くっ。早く信重の元に行かなければ！」
「ならば、ワシに任せよ！」
「じいや？」
「有馬殿？」
有馬さんがずいっと前に出る。
「ウキャキャ。貴様は確か徳川の老いぼれか。とっとと遊月姫を信重様に捧げれば良かったものを！」
「だまらっしゃい！殿は…家雅様は信重のような獣(ケダモノ)に姫様を渡す気は毛頭なかったわい！さぁ姫様！ユイ殿達と明智と共に城内へ！」
「…シニョーレ有馬。ワタシも残るノーネ！」
「え？クロノス教諭？どうしたと言うのです？」
「シニョーレ吹雪。アカデミアの生徒として、みんなを頼むノーネ」
「クロノス殿…いったい何故？」
「子供達がやりたいことを出来るよう導くのが教師の務めナノーネ！」
「クロノス様…」
「大丈夫ナノーネ、プリンセス遊月。あんなモンキー･ヤングマン。倒したらすぐ追い付くノーネ。さぁ、早く行くノーネ！」
「…遊月。行こう。二人の強さなら、あんなのすぐ倒せるって！」
「…はい！」
「それでは有馬殿、クロノス殿、御武運を！皆様。行きましょう」
俺達は明智と明智の兵と共に城内へ流れ込む。
「ウッキャー！！オイラの事を無視して三文芝居見せよって！」
「クロノス殿。助太刀感謝する」
「これが大人の役目ナノーネ。では行くノーネ！」



城内にも織田の兵がいたがそこは勢いがある俺達に分があった。明智の兵と協力して織田軍を蹴散らしていく。走りながら明智は口を開く。
「…そう言えばまだお話していませんでしたね。拙者が謀反を起こした理由…」
「まぁ…そうだけど…。別にいいや」
「え？」
「俺達は遊月に協力して信重を討つ。お前は目的があって信重を討つ。お互いに討つ相手が同じだから協力する。それで良いじゃないか」
「……いい加減な奴だな」
「うっさい黒咲」
そんな会話をしていると広間に出た。そこにいたのは
「よっ。シャーク。久しぶりだな」
「なっ！遊馬！？」
九十九遊馬―ゴーシュや小鳥から聞いたことがあったがこんな少年も世界を救ったことがあるのか。けど、その目には生気を感じない。それに阿津血城にいるってことはマスターDが寄越した増援か？
「なぁシャーク。頼むからその皇の鍵を返してくれ。じゃないと世界が大変なことに…」
「遊馬！テメェこそ目を覚ませ！お前はマスターDに騙されているんだ！」
「くそ！マスターDの言う通り、ユイに洗脳されてんのかよ！こうなったら…デュエルだ！シャーク！」
「へっ！望む所だ。ユイ。俺はコイツを叩き起こしてから行く。先に信重の所に行け」
「おおっと凌牙。俺もやらせてもらうぜ」
「Ⅳ？」
「勘違いすんなよ。テメェの為じゃねぇ。Ⅲへの良い土産に、遊馬を取り返してやるぜ」
「へっ。やりたきゃ勝手にやれ」
二人とも遊馬と向き合い、デュエルディスクを構える。
「ここは任せたぞ、凌牙」
「ああ…」
凌牙の背中を見ながら俺達は上の階層の階段を目指した。




階段を登って廊下を進むとまた広間に出た。
「よくここまで来たものだ。裏切り者め」
そこには織田の兵士を従えた女性がいた。
「ああ。美しい女性だ…」
「吹雪さん…今そんなこと言ってる場合じゃ」
「吹雪殿…その言葉は…！」
「そこの。今何て言った？」
「えっと…。美しい女性だ…と」
「ざけんじゃねぇぞテメェ！口に豚の糞詰めっぞ！」
急に女性が汚い言葉で吹雪さんを罵る。
「明智さん。これはどういう…」
「…あやつは森蘭蔵(もり らんぞう)。見た目はあぁですが、れっきとした男ですよ、吹雪殿」
「明智さん。それは本当かい？だとしたらこの天上院吹雪、一生の不覚…！」
「見た目が女性なのですが女と間違われると激昂してあんな感じに」
「うっせえ影政！テメェもキ〇タマ潰してやろうか！あ？」
完全に相手はブチギレてるな。
「フン。くだらん。貴様の見た目がそうだから言われても仕方ないのにな」
「んだとテメェ！根暗そうな面しやがって！」
「ユイ。このうるさい女みたいな男は俺に任せて先に行け」
「テメェ！タダぶっ殺すだけじゃ済ませねぇぞ！首とキ〇タマ飛ばして河原に晒してやらぁ！！行け！お前ら！」
蘭蔵の号令と共に織田の兵士十数名がやって来る。
「男なら、手加減する必要はないね。ユイ君。僕も残るから先に行って。ちゃんと遊月姫をエスコートするんだよ」
「吹雪さん…。分かった。行こう、みんな」
「明智の兵もお使いください。では頼みましたぞ！」
俺達は黒咲と吹雪さん、それと明智の兵を残して上の階を目指した。
「…余計なことを」
「まぁまぁ。たまには共闘も良いんじゃないかな？黒咲君」
「何、余裕ぶっこいてる？地獄見せてやらぁ！！」




階段を上がり、空中に浮かぶ渡り廊下を走ってある部屋に入った。
「アキ、アポリア…」
「遊星…」
不動遊星―アキ達、チーム5Dsのリーダーがそこにいた。しかしその眼は遊馬の時と同じように生気がない。
「不動遊星！君はワタシに希望と言うものを教えてくれた。そんな君が絶望に呑まれてはいけない！」
「そうよ遊星！私も貴方に救われた！大切な人との絆を取り戻してくれた！新しい世界も見せてくれた！だから遊星！戻ってきて」
「アキ…。やはりお前もユイに洗脳されて…」
「違う！ユイはそんなことしないわ。間違ってるのは遊星の方よ！」
「これだけ言っても届かないか…。待ってろよ、アキ、アポリア！俺が絆の力で正気に戻してみせる！」
「…ユイ。先に行って」
「アキ…」
「私は遊星に助けてもらった。今度は私が遊星を助ける番よ！」
「ワタシも同感だ。協力するぞ、十六夜アキ」
「アポリア、ありがとう。…ユイ。お願い」
「…ああ。気を付けろよ」
「ねぇ、アキ…」
「美羽？どうしたの？」
「…絶対勝ってね」
「もちろんよ。美羽も気を付けて」
「…うん」
俺達はアキとアポリアの気持ちを汲み取って先を急ぐことにした。





「あと少しで信重がいる最上階です」
明智がそう言ったときだった。廊下の両脇の襖を破って織田の兵士が飛び出してくる。
「囲まれたか」
「これじゃ先に進めないよ…」
「無視するわけには参らんな…」
「仕方ありませんね。迎撃します」
しばらくの足止めだが、すぐカタが着くだろう。待ってろよ信重！

…ところで皆は本当に大丈夫だよな？