第73話　再会と裏切り　作：ター坊

「待ちかねたぞ！」
「……」
階段を上がり、『第四ノ関』の貼り紙がある扉を開けるとそこに待っていたのは柴田と
「紫雲院素良…！」
「やぁ。黒咲隼、君も来てたんだ」
最後の相手はコイツらか。柴田も素良も強さは戦ってる俺が良く知っている。最終戦らしく激しいものになるだろう、と思ったが意外な展開を迎える。
「オジサン、IDカードちょうだい」
「む？まぁ、構わぬが。ほれ」
「ありがとう」ﾎﾟｰｲ
「なっ！」
「おわ！…え？」
なんと素良は柴田から黄色のIDカードを受け取るとこちらに放り投げ、俺はそれを慌ててキャッチする。
「小僧！どういうつもりじゃ！？」
「こういうつもりだよ」
「素良…なんでこんなことを？」
「もう僕は、いや僕たちは手を切ることにしたよ」
「…どういうことだ？」
「僕たちは元々、柚子を捕まえるために協力したのに、君たちの所に逃げ込まれちゃったからさぁ。柚子の捕縛は困難って本部が判断してこの世界から引き下がることにしたんだ」
「信用できんな」
「黒咲、そう言わないでよ。さっき連絡が入ってさ。柚子を奪還するためにアイツが君たちの拠点に行ったわけだけど失敗したみたいだよ？」
「なっ！？みんなが？」
「でも失敗ってことだから守れたみたいね」
「良かった良かった」
「そういう訳で協力する義理が無くなったってわけ。黒咲やユイとも決着つけたいって考えて来たけど…待ちすぎて興醒めしちゃったよ。僕の気が向いたら相手してよね？」
素良はそう言いながらデュエルディスクを操作する。
「あ、そうそう。そのIDカードを使う部屋は上の階の一番奥にある、カードリーダーの上にランプが横一列に４つ並んでる扉があるから。左から順番にランプの色と同じカードを読み込めば開くと思うよ？じゃあね♪」
素良は扉の場所やロックの解除方法まで教えてくれた後、光となって消えた。
「…まぁ。楽になったしいいかな？」
「早くお春さんの所へ」
「待たれぇい！」
急いで行こうとする俺達を柴田を呼び止める。
「この鬼柴田を素通りできると思っているのか！？」
「えー。もういいじゃん。もうIDカード貰ったし」
「おのれ卑怯な！？それでも男か？」
「卑怯って…人質取ったアンタはどうなのよ？」
「ぐぬぬ…。えーい、うるさい！我と勝負せい！」
「はー。面倒くせぇけど俺が行くか。暇潰しに相手してやるよ」
「凌牙…油断するなよ？」
「あぁ。問題ねぇ。すぐ終わらせるからよ」
「我を見くびるなよ小僧！」
凌牙と柴田が同時にデュエルディスクを構える。
「デュエル！」











「行け！ナイトメア･シャーク！」
「おのぉーーれぇぇ！！」
デュエルはそこそこ拮抗したが凌牙に軍配が挙がった。
「悪いな。待たせて」
「いや、全然」
「早く行きましょ？」
俺達は素良の教えてくれた通り、上の階を目指した。



アキも心当たりがあったらしく奥の部屋はすぐ見つかった。アキの話ではサイコデュエリストの中でも暴走する奴を閉じ込める独房のような場所らしい。扉の横には素良が言ってた通りランプが４つあるカードリーダーがある。
「左の順番で…か」
俺は手に入れた4枚のIDカードを取り出し、ランプの色に従って青→緑→黄→赤とカードを読み取らせるとガチャッとロックが外れる音がした。
「お春さん！」
「姫！危ないですぞ！」
遊月さんは扉が開くと駆け出すようにはいっていき、柳生さんがその後を追った。





部屋の中は薄暗く、蛍光灯がチカチカと点滅している。広々とした部屋の奥に鉄格子で区切られた空間があり、その中に
「お春さん！！」
ようやく見つけた。お春さんは鎖に繋がれてるためか動けないでいる。


パチ、パチ、パチ、パチ


「ど！どなたですか？」
「姫様！いけない！早くお逃げを！」
鉄格子の中から拍手が聞こえた。お春さん以外にも誰かいるのか？お春さんはかなり怖がっている様子だが。
「よく来たね」
お春さんの隣から現れたのは黒いマントを羽織って気味の悪い仮面を被った謎の人物だった。声はボイスチェンジャーを使ってるせいか甲高い声が部屋中に響く。
「てめぇは誰だ？」
「乱暴な口の利き方は感心しないねぇ。神代凌牙くん」
「何！？俺の名前を知ってるだと？」
「君だけじゃないよ。孔雀舞、天上院吹雪、クロウ･ホーガン、黒咲隼、十六夜アキ、柳生八兵衛、遊月姫、それにユイくん？」
「俺達の素性はバレているか…」
「もちろん。君達のことは色々調べたからねぇ。闇のゲーム、ダークネス、シグナー、バリアン、ランサーズ、水の巫女…色んなことをね」
「ストーカーは嫌だなぁ。ま、美女にやられるなら大歓迎だけどね」
「吹雪くん。それは残念だ。私は男だからねぇ」
「なーんだ。じゃあさっさとお春さんを返してくれないかい？」
「いいとも。しかもオマケも付けてあげるよ」
そう言って謎の人物はマントからデュエルディスクを取り出す。
「あのデュエルディスクは…？」
なんだか見覚えがあった。そう…あれは。
「あの時の女の子が着けてた…！」
俺達に襲いかかって火事を起こした、姉さんのビデオを探すとき自宅の前で戦ったあの少女のものと同じだった。
「はい、腕を出して」
謎の人物はお春さんの腕を強引に掴むとデュエルディスクを無理矢理装着させた。
「あぁ。何かが！何かが、私の中に…！」
「お春さん！お春さん！しっかりして下さい！」
「姫様…！お逃げヲ……。ワたしはモウ……ダメ…！アアァァ！！」
「お春さん！」
「姫！一度お下がりを！」
お春さんに向かって叫ぶ遊月さんを柳生さんが引き離す。
「じゃあ鍵を開けといてあげよう。それではサヨナラだ」
「待て！お前は何者だ！お春さんに何をした！」
「ユイくん質問が多いねぇ。まぁ1個だけ答えてあげよう。私の名はマスターDだ。それじゃあね」
そう言って謎の人物―マスターDは消えてしまった。
「……」
一方、苦しんでたお春さんは急に黙りこんだあと、すっと立ち上がった。
「お春さん、大丈夫ですか？」
遊月さんが近付こうとした時だった。
「デュエルだ。貴様らを…倒す」
突然デュエルディスクを構え、俺達を殺気を込めたような視線で睨みつける。
「そんな、お春さん。どうしたのですか？貴女は式霊決闘なんかできないはずじゃ…」






~万丈目サイド~

「いけ！『XVZ-ドラゴン･キャノン』！」
あらかた襲ってきた黒タイツの集団は片付いた。あいつらは柚子を捕らえるために来たようだが、この万丈目サンダーと愉快な仲間達に挑んでくるとは片腹痛い。変態ペンギンも明日香くん達にボコボコにされ、さぞ後悔しているだろう。
「アニキ~！たいへんよ、たいへんよ~！」
「なんだ！うるさいぞ！」
「本当にたいへんなんだってばぁ！」
おジャマイエローの指差す方向を見ると赤いバイクのようなものが走ってくる。二人乗りのようだが…。
「とう」
一人がバイクから飛び降りると…いや、アイツは…！！