第118話　臆病な恋心　天秤な恋心　作：ター坊

~美羽サイド~

「美羽…。愛してる」
「え！？そんな……私…/ / /」
「ごめん…。自分の気持ち、抑えられそうもないや」
「ま、まだ…心の準備が！」







って私の馬鹿！
思わず自分のやったことに突っ込みを入れる。こんな漫画みたいなのを描いて、なにやってるんだろう。
……私なんかじゃ…無理なのに。
「美羽？」
「ひゃあ！」ﾊﾞｻｯ
急に後ろから呼ばれて驚いてしまった。
「ああアキ！？」
「美羽どうしたの？あら？スケッチブックが」
「あ！ダメ…」
終わった…。


「美羽…。これって…」
私は黙って頷く。
「えっと…なんて言えばいいのか…」
「…引いたよね」
「ううん。そんなことないわ。だって美羽はユイのこと…」
「いいの。実際は無理だからこうやって…」
「無理って…どうして？」
「だって…。私なんか…背だって胸だって小さいし、面白いこともできないし、それに……こんなの描いてる変態なんて知ったら、絶対嫌われちゃう…」

なんだろう。泣きたくなってきた。
自分の惨めさに―。
何も取り柄がない自分に―。

ユイは…とってもカッコいい。
傷つけたのに、そんな私を許して手を差し伸べてくれた―。
信じてくれて、私にアキを助けることを任せてくれた―。
危ないとき、王子様みたいに私を助けてくれた―。

無理だよね…。やっぱり……。私なんかに、ユイは眩しすぎるや…。
「美羽…。その…私もあまり強く言えないけど、行ってみなきゃ分からないと思うわ」
「ううん。やっぱり無理だよ…。それに」
「それに？」
「……恐いの。もし好きって言って断られたらどうしようって…。変に気まずい関係になったらどうしようって…。それだったらずっと片想いでも良いのかなって思ちゃうの…」
「美羽…」
ごめんね、アキ…。面倒だよね。本当に自分は情けないって思ってる。今はポロリポロリと涙で頬を濡らすことしかできなかった。



~遊月サイド~

「…はぁ~」
ダメです…。集中できません。なんでしょう、この気持ちは…。ユイ様のことが頭にちらつきます。確かにユイ様はこちらの世界でお世話になってますし、信重公を討ってくださったり、私にとって恩人です。でも、ユイ様があの決戦の後に帰ってきたときから、もっと一緒にいたいと思うようになりました。
「姫様？いかがなさいましたか？」
「お春さん…」
物思いに耽っているといつの間にかお春さんがいました。
「あの…。お春さん、相談したいことが」
「なんでしょうか？」
私はお春さんにこの気持ちは何なのか訊ねてみました。
「…と言うわけなのです」
「……姫様」
「はい」
「それは恐らく…恋かと」
「え…？」


―/ / / ！？
こ、ここ、恋！？
「お、お春さん、そんな、恋ってあの！？」
「はい。お話を聞く限りそれは恋かと」
そんな！私がユイ様に恋なんて恐れ多いことを！
「姫様の以前の縁談では恋と言うよりも国の為という意向が強かったので、今回のようなときめきは無かったものかと…姫様？」
恋と言う言葉を聴いてから胸の高鳴りが治まりません。あくまでもユイ様は恩人。恋なんて一方的な感情を押し付けてご迷惑を掛ける訳には…。でも許されるなら…って私はなんて淫らなことを！？
「あの…姫様？」
「ふぇ！？」
お春さんの声を聞いてハッとしました。
「あの…いかがなされましたか？額に汗が」
「えっと…な、何も邪(よこしま)な考えは…」
「いえいえ。姫様くらいの年頃には普通の考え方と思います。素敵な殿方に惚れ、好かれ、抱かれるのは女人の喜びです」
「……そうでしょうか…」

お春さんの言葉を聴いて心が揺らぐ。身も心も愛されたいと叫ぶ感情と迷惑を掛けてはいけないと諭す理性が拮抗する。私はどうすれば…。