第127話　未来を奪う竜VS運命を導く竜　作：ター坊

~ユイサイド~

先攻:ユイ

「俺のターン」
アキやクロウ達の仲間であったことを考えればシンクロ召喚を狙って来るハズ。
「俺は『誠実の救世者 タリス』を召喚し、コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これで相手に1500ダメージ。カードを2枚伏せてターンエンド」
俺が伏せたカードは『次元幽閉』と『救世の鎮魂歌(レクイエム)』。これでシンクロモンスターが攻撃してきても除外できる。そして『救世の鎮魂歌』は救世者をリリースすることで2枚ドローし、このターン発生する効果ダメージを回復に変換する効果。2枚ドローできるから『次元幽閉』が除去されてもディスアドバンテージを最小限に食い止めれる。まずまずの布陣だ。

ユイ:LP 8000
遊星:LP 6500

「俺のターン、ドロー！相手のフィールドにのみモンスターが存在する場合、手札から『アンノウン･シンクロン』を特殊召喚！さらに魔法カード『ワン･フォー･ワン』を発動！手札から『ジャンク･シンクロン』を墓地に送り、デッキから『スターダスト･シャオロン』を特殊召喚。『スターダスト･シャオロン』をリリースし、『サルベージ･ウォリア』をアドバンス召喚！これで墓地の『ジャンク･シンクロン』を復活させる！」
噂通りというか、ここまでの展開力…。さすがは未来を救った英雄とアポリアが言ってただけのことはある。
「そして俺はレベル5の『サルベージ･ウォリア』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング！集いし願いが新たな力となる。光差す道となれ！飛翔せよ！『スターダスト･ドラゴン』！スターダストのシンクロ召喚に成功したことで墓地から『スターダスト･シャオロン』を特殊召喚！」
これでレベル2のシンクロ召喚が可能になった。それともレベル10がそのまま？
「俺はレベル1『スターダスト･シャオロン』にレベル1『アンノウン･シンクロン』をチューニング！果てしなき絶望。いまここに顕現する。輝く未来を闇に包み込め！シンクロ召喚！『DT(ダーク･チューナー)-ホロウ･シンクロン』！」
「何？」
ダーク･チューナー？ただ単に闇属性のチューナーという訳では無さそうだが。
「ダークチューナーをシンクロ素材とする場合、通常のシンクロ召喚とは異なりシンクロ素材のレベルの合計からダークチューナーのレベル分マイナスするのさ」
「なんだって？つまりそのままではレベル6のシンクロを？」
しかしおかしい。それなら『サルベージ･ウォリア』と『アンノウン･シンクロン』で充分なハズ。
「それはどうかな。俺はホロウ･シンクロンの効果発動！1ターンに2度、自分のエクストラデッキからシンクロモンスターを除外し、そのレベル分、フィールドのモンスターのレベルを変動させる。まずはこの効果で『ジャンク･ガードナー』を除外しスターダストのレベルを6下げる」
ん？それではレベル0。そんなのが召喚出来るのか？
「さらに２回目の効果を使い、『シューティング･スター･ドラゴン』を除外してホロウ･シンクロンのレベルを10上げる」
「レベル12？」
何か嫌な予感がする。本能的に察知したのか、俺はほぼ反射的にカードを発動した。
「罠カード『救世の鎮魂歌』を発動。これでタリスをリリースして2枚ドローする。さらにこのターン、全ての効果ダメージを回復にする」
「俺はレベル2の『スターダスト･ドラゴン』にレベル12のホロウ･シンクロンをダークチューニング！漆黒の闇よ。光差す道を閉ざし、未来を悲哀と絶望に塗り潰せ！ダークアクセルシンクロ！招来せよ！レベルマイナス10『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』！！」
「レベルがマイナス値！？」
デュエルモンスターズでは0よりも下はないハズ。攻撃力にしても0として扱うのが通例だ。
「バトル！『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』でダイレクト･アタック！」
「させるか！『次元幽閉』！」
向かってきた謎のモンスターが次元の裂け目に吸い込まれた。
「？拍子抜けしたけど。あまり大したことはなかったようだな」
「…俺はこれでターンエンド」
「俺のターン、ドロー」
「この瞬間、『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の効果発動！」
「え？」
「このカードが除外されたターンの次のターンのスタンバイフェイズ時、コイツは俺のフィールドのカード全てを破壊して再び舞い戻り、相手に1000ポイントのダメージを与える！」
「何！？」
馬鹿な！除外から復活しつつダメージ効果だと！突風が俺を貫く。
「くっ！だが！それ以外なら！俺は『礼弦の救世者 アリア』を召喚し、コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「これでデッキから『輝翼の救世者 プラチナ･フェザー』を特殊召喚。再びコイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「これで相手の墓地から『ジャンク･シンクロン』を除外する。俺はこの2体でオーバーレイ！エクシーズ召喚！『闘魂の救世者 ダイブレード』！！」
除外できないなら戦闘破壊するまでだ！
「ダイブレードで『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』を攻撃」
「『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の効果発動！このカードは1ターンに1度、除外できる！」
フリーチェーンで自分を除外できるのかよ！となると他の除去は通用しそうにないな。
「ならダイレクトアタックで…」
「それはどうかな？」
「何！」
空間に消えた『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の跡に謎の球体が２つ浮いている。
「これは…」
「『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』が自身の効果で除外された場合、俺のフィールド上にダーク･スフィアトークンを2体特殊召喚できるのさ」
防御策まであるなんて…。ここは攻撃しても無駄か？
「俺はダイブレードの効果発動。オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから『救世の賛美歌』を手札に加える。1枚伏せてターンエンド」

ユイ:LP 7000
遊星:LP 6500

俺が伏せたカードは『救世の賛美歌』と見せ掛けて『神の警告』だ。戻ってくる効果は特殊召喚効果。これで無効にしてしまえば…。
「俺のターン、ドロー！スタンバイフェイズ時、『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の効果発動！」
そこだ！そう思い『神の警告』を発動しようとするが
「なっ！発動…できない？」
「相手は『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の効果発動に対してチェーンしてカードを発動することはできない！どんな企みを持っていようと、お前の野望の未来、叶うと思うな！！」
そんな…。効果が無効にできないモンスター…。なんていうモンスターだ。
「『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』が帰還し、お前に1000ダメージを与える」
「うっ！」
「そして『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の効果発動。俺のデッキの上から5枚めくり、その中に含まれるチューナーの数だけフィールド上のカードを除外し、除外したカード1枚につき、800のダメージを与える」
「なんだって！？」
対象に取らない除外。しかしそう易々当たるわけが…

ﾍﾟﾗ…『デブリ･ドラゴン』『ロード･ランナー』『クイック･シンクロン』『ニトロ･シンクロン』『くず鉄のかかし』

「3枚だと？」
「これでカラミティ自身、ダイブレード、そのセットカードを除外し2400ダメージを与える！」
黒い竜の咆哮と共にカードが次元の渦に呑まれていく。
「ただし、この効果を発動したターン、バトルフェイズは行えない。俺はこれでターンエンド」

ユイ:LP 3600
遊星:LP 6500

「俺のターン、ドロー…」
「再び『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』は帰還し、1000ダメージを与える」
「ぐあっ！」
…無理じゃないか？効果にカウンターができない以上、確実に効果は通してしまう。除去しようにもフリーチェーンで簡単に逃げられる。そしてほぼ毎ターンの1000バーンに強力な除外効果。ここまで無茶苦茶な効果……倒せるのか？
「ユイ！」
唐突に美羽が叫んだ。
「…こんな言い方すると無責任かも知れないけど…。ユイならきっと、遊星さんのこと変えれるよ」
「美羽…」
「ユイと出会って…、す、好きになって…私、変わった気がするの！この先の未来も、変わると思うの。私だけじゃない。遊月さんだって変わったから。ユイにはきっと、そんな力があると思うの…」
美羽…。嬉しい励ましだな。前の俺なら、そんなことは無いと一蹴しただろう。けど今はそう言われると自分はそれが出来ると思えてくる。


ん？この先の未来も、変わると思う？未来を変える……。……！

「美羽！」
「へっ？ユイ？」
「励ましてくれてありがとうな。それに」
「それに？」
「美羽の言葉のおかげであのドラゴンの攻略法も閃いた」
「なんだと！俺の『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の攻略法！？」
「今見せてやろう。俺は手札からスケール9の『赤薔薇の救世者 ラブリ』をペンデュラムゾーンに置き、『友愛の救世者 エミュリン』を召喚する。コイントス判定するがラブリのペンデュラム効果で800支払い、表の効果を適用させる。墓地からプラチナ･フェザーを手札に加える。そして魔法カード『死者蘇生』を発動してタリスを復活させる！」
「チューナーモンスター…ということは！」
「俺はレベル4のエミュリンにレベル4のタリスをチューニング！運命の歯車司る聖竜よ。幾重にも交錯する運命から我が望む勝利の運命を導け！シンクロ召喚！『運命の救世者 ギアフェイト･Xドラゴン』！」
「くっ！だが、攻撃力は2900。俺の『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の3300には及ばない」
「そのためにプラチナ･フェザーを加えたのさ。コイツを捨てれば攻撃力が1000アップするって訳だ。バトル！」
「フッ。忘れたのか？俺は『カラミティ･フューチャー』の効果発動！このカードを除外し、ダークスフィア･トークンを特殊召喚する」
「そのままアタック」

運命の救世者 ギアフェイト･Xドラゴン ATK 2900 VS ダークスフィア･トークン DEF 1000

「無駄だと分からないのか？」
「いや。それはどうかな？」
「ん？」
「俺はこのままエンドフェイズに入るが、ここでギアフェイト･Xドラゴンのある効果が発動できる」
「何？」
「ライフを半分支払い、効果発動！デッキの上から5枚めくり、その中に含まれる救世者が3枚以上なら次の相手ターンをスキップする」
「なっ！」
「未来を変える…。そのドラゴンが戻ってくる未来を変えれば俺は勝つ！」
「だが、そんなに3枚のカードが都合よく…」
「遊星。お前だってさっき3枚引き当てて除外しただろ？今度は俺の番だ！行くぞ！まず1枚目！」

ﾍﾟﾗ…『激流葬』

「ふっ…」
「あっ…ユイ…。まだだよ！」
「そうだな。2枚目！」

ﾍﾟﾗ…『護法の救世者 ゴールド･ゴーレム』

「やったぁ！」
「まだ行くぞ！3枚目！」

ﾍﾟﾗ…『勇気の救世者 シグナム』


「あと1枚！」
「くっ…！」
「4枚目！」

ﾍﾟﾗ…『救世の聖火』

「ユイ…。頑張って…」
「ラスト1枚…突破できるチャンスはこれだけ…引き当てる！」


ﾍﾟﾗ…









『青薔薇の救世者 ウェンダー』

「よし！」
「ユイ！」
「なんだと！」
「これで条件は達成された！回れ！運命の歯車！デスティニー･オブ･ヴィクトリー！！」
ギアフェイト･Xドラゴンの胸部が光輝き、全てを閃光が包み込む。

ユイ:LP 900
遊星:LP 6500

「遊星のターンがスキップされたことで『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』の次のスタンバイフェイズ時という戻ってくるタイミングを逃したため復活しない！」
「くっ！」
「俺のターン、ドロー！魔法カード『無限の可能性』を発動！これで墓地のタリスとアリアを融合する！顕現せよ！『剣聖の救世者 ボルガラッドVG』！！ボルガラッドVGが特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードを1枚除外し、1000ダメージを与える。ダークスフィア･トークンを除外。さらにデッキの一番上のカードを確認しカードの種類で効果を得る」

ﾍﾟﾗ…『サイクロン』

「これで全ての救世者の攻撃力を1000アップさせる」
「そんな…。クロウ、アキ、龍可、アポリア…。俺は誰も救えないのか…」
「これでThe ENDだ！2体でダイレクトアタック！！」

運命の救世者 ギアフェイト･Xドラゴン ATK 4200 + 剣聖の救世者 ボルガラッドVG ATK 4300　直接攻撃

「グアアァァ！！」




勝った。

ん？

遊星が吹き飛ばされた跡に『カラミティ･フューチャー･ドラゴン』のカードが落ちていた。それを拾おうとすると

ｻﾗｻﾗｻﾗ…ﾋｭｰ

急に、燃え尽きた灰のように細かくなり、そよ風に流れていった。
「ユイ！」
「おう」
美羽に呼ばれて倒れた遊星に駆け寄る。気を失ってるようだ。ほっといてデートの続きという訳には…
「……」
美羽は少ししょんぼりした表情だった。
「…その…美羽……。ごめんな」
「ううん。今日は…いっぱい楽しかったよ。それに…きっと、アキ喜んでくれると思うし」
「ああ。そうだな。とりあいずD･ホイールに乗っけて、押して帰るか」