第154話　恐がらなくていいよ　作：ター坊

俺がやるべきことは…。


ｶｼｬﾝ

サイコ･デュエルディスクを構える美羽と遊月に対する応えとして同様にデュエルディスクを展開する。
「ユイ殿！血迷ってはなりませぬ！姫と美羽殿と戦おうなど！」
俺の行動がよほど意外だったのか柳生さんを始め、みんなが止めに入る。
「ユイさん、止めて！大切な人同士でこんな戦いをするなんて…そんなの辛すぎるわ！」
「それに相手はサイコ･デュエルディスク持ちだ！タダでは済まんぞ！」
「止めないでくれ。…美羽、遊月…。始めようか」
制止するみんなの言葉を振って一歩前に踏み込む。
「イヤ…。ュィ様…来ない…で…」
「ユイ…！逃げて……！」
サイコ･デュエルディスクを装着したばかりか、二人の意識はまだある。
「美羽、遊月。俺なら大丈夫。何も恐がらなくていいから。俺が二人に勝ってサイコ･デュエルディスクの呪縛を解く…。たったそれだけのことだから」
「ううっぅ…！」
「ああっ！…デ、デュエル…」
遊月が苦々しく宣言する。





【順番はユイ→美羽→遊月】


「俺のターン。『金管の救世者 シエラ』を召喚。コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「デッキから２枚ドローして手札から１枚墓地に送る。カードを２枚セットしてターンエンド」
「私のターン…！…くっ、うぅっ！」
自分のターンを宣言してしばらく動かない。まだ美羽の意識がサイコ･デュエルディスクに抗っているのか。
「美羽。遠慮しないでおいで」
「ユイ…恐いよ……！私が、私で…なくなって…ぃなく…」
「大丈夫だ。この戦いが終われば美羽は戻る。だから早く終わらせるためにも…な？」
「ぅう…ああっ！」
「美羽！？」
突如苦しみだす美羽。刻一刻とサイコ･デュエルディスクの侵食が進んでいるのか？
「私ハ魔法カード『悪夢融合(ナイトメア･フュージョン)』発動！手札ノ『悪夢人形(ナイトメア･パペット)ローズマリー』ト『悪夢人形バジル』ヲ融合！！可憐ナルモ絶望ニ突キ落トス魔性ノ人形！今、降臨セヨ！融合召喚！『悪夢人形ジャーマンダー』！」
見た目は美しいが不気味な雰囲気を醸し出す操り人形のデッキ…。マスターDが作った新たなカードか？
「…ダメ……！」
美羽は一生懸命サイコ･デュエルディスクに抗っている。
「悪夢人形が融合素材、トシて、墓地に送らレタ場合、相手に５００ダメージ、与エ…ちゃう」
美羽の悲痛な叫びと共に墓地から火の玉が２つ、飛んでくる。

ヒュン！

「くっ！」
２体で合計１０００バーンか…。それにサイコ･デュエルディスク特有の実際の痛みも全身に走る。だけど…！
「…ユイ！ごめん…なさ…！」
「…」
耐えられない痛みじゃない！
「美羽…。俺なら大丈夫だ。だからそんな悲しそうな顔をしないで…」
「ユイ…」
「俺はマスターDのカードなんかに負けない。だから美羽、気にしないでデュエルを続けてくれ」
「ユイ…、…う、あぁ…ウッ！サラニ墓地の『悪夢融合』の効果発動！コノ ターン ノ召喚権ヲ放棄スル代ワリニ、墓地ノコノカードト『悪夢人形バジル』を手札ニ加エル！カードヲ１枚セットシテ、ターンエンド！」

ユイ:LP 7000
美羽:LP 8000
遊月:LP 8000

美羽からは１０００ダメージを受けただけでなんとか収まった。しかし、あのジャーマンダー…どんな効果が…。それより次は遊月のターンか…。

~遊月サイド~

イヤだ…。ユイ様と戦いたくない！けど、私の心に逆らうように手が札を引こうと伸びる。
「ド、ロー！」
ユイ様は私と美羽様を解放するために戦うと仰って…

倒セ！

イヤ…。ユイ様を傷つけたく…

倒セ！倒セ！倒セ！倒セ！倒セ！！

「ああッぁ！」
「遊月！」
ダメ…！
「私ハ『雷龍ジガミナリ』ヲ召喚！コノ札ハ相手ノ場ニセットカードガアル場合、生ケ贄無シデ召喚デキマス！サラニ自分ノ場ニ雷龍ガ存在スルコトデ、手札カラ『雷龍シツライ』ヲ特殊召喚！」
雷龍…。触れたこともない札を扱って戦っている…。そしてユイ様を…。止めてと心で叫んでも体は動いてくれず、手を進める。
「私ハコノ二体デ オーバーレイ！エクシーズ召喚！『雷龍帝クロイカヅチ』！！バトル！」
「シエラが攻撃対象になったことで手札から『銀麗の救世者 ミスリル･メイド』を特殊召喚しバトルフェイズを強制終了させる。さらに特殊召喚成功時にコイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「１枚ドローして300回復する」
良かった…。しかし私の手と口は動きを止めない。
「クロイカヅチノ効果発動。オーバーレイユニットヲ１ツ使ウコトデコノカードノ攻撃力ノ半分ノダメージヲ」
ダメ…！ユイ様！
「与エる！」
一瞬意識を取り戻しましたがもう効果の宣言をしてしまった後だった。光の玉が雷撃となりユイ様を襲う。
「止めて…。止めて…」



ゴシャーーン！！



私の涙ぐむ声をかき消すように轟く雷がユイ様に当たり、粉塵が舞う。眼を背けたかった。見たくなんてない、愛した人が傷つく姿なんて…
「ユイ…様…」
「大丈夫だ。遊月」
粉塵から愛しい声が聴こえる。
「俺は罠カード『救世の鎮魂歌』をミスリル･メイドをリリースして発動したのさ。このカードは２枚ドローするついでにこのターン発生する俺への効果ダメージを回復に切り替えるオマケ効果があるんだ」
…良かった…。本当に…。
「遊月。絶対サイコ･デュエルディスクから解いてあげるからな…。だから待ってて」
優しく笑いかけてくれるユイ様…いけない…また、意識ガ…！
「キャアアァ！」
私よ！強く意思を持って！一瞬でも良いから！
「ワタしはこレで、ターんエんど！アァ…」
意識が呑まれそうになる寸前で言えて良かった…。ユイ様…御武運を…。

ユイ:LP 8600
美羽:LP 8000
遊月:LP 8000