第157話　Ｒｅ Ｌｏｖｅ　作：ター坊

~遊月サイド~

―ん。

なんでしょうか。

とても温かくて、落ち着く。


私が目を開けると景色は横向きでした。私は起き上がろうとすると。


「おお。起きたか」
あの優しい声が聞こえ、私は咄嗟にその人の名前を口にする。
「ユイ…様…」
「おはよう。どう？痛いところとか、ないか？」
起き上がり眼を合わせた瞬間、あの時の瞬間が蘇る。


―センライが破壊サレ、戦闘ダメージが発生シタトキ、ライフを５００支払うコトデ相手に受ケたダメージヲ倍デ返しマス！―

雷撃で倒れ、そしてユイ様の頬からは血が…。



「―！！ユイ…様…」
すぐに視界は潤み、止めどなく涙が頬を伝う。
「申し訳あり゛ません！申し訳あり゛ま゛せん！！申し訳…あ゛り゛ま゛せん！！！」
声も震え、顔も直視できぬまま、子供のように泣きじゃくり謝ることしかできなかった。
「…」

ｷｭｯ

「……ぇ…」
頭に触れるユイ様の胸の広さ。肩に感じるユイ様の温かい腕。私はきゅっと抱き寄せられていました。
「遊月…。触ってごらん」
そっと触れるユイ様の手は私の手をユイ様の頬へと運ぶ。頬は一部カサカサしている。
「ほら。あの時に出た血…。もうないだろ？俺はもう大丈夫だから。だから、遊月が泣くことはもうないんだよ」
頭を撫でられながら聴く声は、ゆっくりと耳に染みていく。だけど…
「…私は…」
ユイ様の体を押し退ける。
ユイ様の言葉にすがってはいけないと罪の意識が叫ぶ。
「けれど、私には…もうユイ様を愛する資格なんt」






ｸﾁｭ

「―！！」
一瞬、何が起きたかは分かりませんでしたが、すぐに唇の感触が悟る。これは…。けどそう思った時には唇は離れていました。
「愛する資格なんて…いらない」
「ユイ…様」
「遊月のこと、大好きだから。一緒にいてくれるだけで充分だから…」
ユイ様はにっこりと微笑んでくれた。
「あっ。美羽も起きるかな」




~美羽サイド~


―はっ。私は一体…。


―悪夢人形が融合素材、トシて、墓地に送らレタ場合、相手に５００ダメージ、与エ…ちゃう―

飛び放たれる火の玉―

私は私を止めることができなかった。抗っても無駄だった―
そうだ！
「ユイ！」

ゴッ！

「痛っ！」
「～！」
ガバッと起き上がろうとしたら頭を強くぶつけてしまう。
「いてて…。でも、そんなに元気に起きれるみたいで安心した」
顎を擦りながら笑う大切な、大好きな人。
「ユイ…」
ユイの顔を見た瞬間、自分でも形容し難い感情が溢れ出す。

大好きな人を

見たことによって得る安心感か

傷つけてしまった罪悪感か

失ってしまうかもしれない恐怖感からか

それとも全部がどっと押し寄せたのだろうか。
「ユイ…！ユイ…！！ユイ…！！！」
私はただすがり付いて涙を流して名前を連呼することしかできなかった。




ｷｭｯ

「ふぇ？」
「恐かったよな。でももう…恐くないから。あれは全部悪い夢だったんだ。だから、もう泣くこともない…」
ユイが抱きついて私の頭を撫でながら耳元に囁く。
「ユイ…！ユイ…」

ｸﾁｭ

「ん…」
「…」

ﾌﾟﾊ

一瞬だったけど心の中を流れる感情の濁流が少し収まった気がした。
「これで…落ち着いたかな」
ユイは穏やかな笑みを浮かべるのであった。




~美羽･遊月サイド~


しばらくの沈黙の後―



「とにかく、二人とも無事で良かった」
「でも…ユイ様は…」
「さっきも言っただろ？俺はもう平気だって」
「だけど…私たちは…ユイにたくさん、酷いことした…」
「もう私達はユイ様のお側には…」
「…そっか」
「…」
「…」
「…美羽。遊月」
「…？」
「はい…」












「もう１度、恋人になってくれないか？」




―えっ…
「あの日、二人の想いを聴いて俺達は恋人になった。なら今度は俺の想いを聴いて欲しい」
「…」
「…」
「二人が恐がってるのは分かってるつもりだ。迷惑を掛けるかもしれない、また傷つけるかもしれないって。だけど、その不安と恐怖で俺から離れなくて良い。その不安も恐怖も全部、受け止めるから。だからもう１度、恋人になってくれないか？まだ、美羽と遊月と一緒に幸せを感じていたいから…」
「ユイ…」
「ユイ…様…」


心を凍てつかせていた罪悪感という氷が愛する人の言葉という太陽で溶けていく。その溶けた水は瞳に溜まり、すぐに頬を流れる星となってこぼれ落ちる。


「「はい…」」
「…また泣いてる。もう、泣き虫なんだから…。ほら、笑って」

こうしてまた、私たちは恋人同士として、幸せを歩み始めるのだった。