第116話　みんな、ただいま！　　作：ター坊

~美羽サイド~

「え？嘘……」
私は未だに信じられなかった。だって……目の前で消えたユイが…。
「美羽。大丈夫か？」
こうして帰ってきてくれた。
「ユイ…！」ｳｯｸﾞ,ﾋｯｸ
私が泣いてるとユイはそっと頭を撫でてくれた。
「ごめんな、心配掛けて。…それより、なんで俺がもう一人いるんだ？しかもアレは…サイコ･デュエルディスクじゃないか！」
「分かんない…。ユイが帰ってきたと思ったら、もうクロウさんがやられてて…」
「そっか。だが、サイコ･デュエルディスクを着けてる以上、敵ってことだな。なら遠慮は無しだ！遊月達とも早く話したいし、ちゃっちゃと決着をつけようか！」

~遊月サイド~

良かった…。これほど喜ばしいことがあるでしょうか？どうしてユイ様が二人いるのかは分かりません。けど、美羽様を助けたユイ様が本物のように思えました。最初からいたユイ様は目が冷たかった。けれど、今のユイ様の目は私が知っている温かさを感じます。
「ユイ様、おかえりなさいませ！」
私はそう叫ばずにはいられませんでした。するとユイ様は私の方を振り向いて
「遊月！ただいま！すぐ終わらせるから待っててくれ！」
そう返し、式霊決闘に臨みました。

~ ユイサイド~

後ろから遊月の声援に応えた後、俺はすぐもう一人の俺と対峙する。
「俺は途中参加だからな。ライフは美羽と同じ数値でやるぞ」
もう一人の俺は嘲笑うように言う。
「馬鹿な奴だ。多少計算は狂ったが貴様もまとめて始末してやる」
「それはどうかな？俺のターン、ドロー！」

ユイ:LP 1300
美羽:LP 1300
偽ユイ:LP 5000

「ごめん…ユイ。私がもう少し頑張ってたら…」
「いや。美羽は頑張ってくれたと思うぞ。よく1000以上のライフを維持してくれた。俺は『黄薔薇の救世者 フレンディー』をペンデュラムゾーンに置き、効果発動！これで1000ライフを支払い、デッキから『赤薔薇の救世者 ラブリ』と『白薔薇の救世者 ピュアリー』でペンデュラムスケールをセッティング！運命の振り子よ。俺を勝利の未来へ導け！ペンデュラム召喚！『黄薔薇の救世者 フレンディー』『勇気の救世者 シグナム』！そして新たに力を得た光よ！虹の輝きを以て希望と夢が溢れる未来を描け！(姉さん頼んだ！)『未来の救世者 スキュルートEP(エピオン)』！」
久々に見たように後ろからみんなの声が聞こえる。
「救世者…。やっぱりあのユイ様は本物です！」
「しかも切り札のスキュルート…。細部が変化している？」
「ああ。だが」
「あの布陣を完璧に崩すのは」
相手のモンスターは俺が以前使ってた炎王のようだ。黒いガルドニクスは…たぶんマスターDが生み出したカードだろう。
「俺はさらにレベル4のシグナムにレベル4のフレンディーをチューニング！運命の歯車を司る聖竜よ！新たな可能性に出会い、得た力を今こそ示せ！シンクロ召喚！『運命の救世者 ギアフェイト･Ｘ(クロス)ドラゴン』！」
「何！？スキュルートEPにギアフェイト？そんなデータは…！」
偽者は驚いた様子だった。
「そりゃそうだ。だって俺自身初めて出したからな。ギアフェイト･Ｘドラゴンの効果発動」
聖竜は咆哮を上げると翼に付けられた小型のビーム砲を展開し、全て偽者の場に向ける。
「フルバースト･フィナーレ！」
そのビーム砲から、両腕の主砲から幾千ものビームがフィールド上のカードを全て破壊する。
「何！？全滅！？」
「このカードは相手フィールド上に表側表示で存在するカードを全て破壊して1枚につき500ダメージを与える！ただし、この効果を使用した場合、バトルフェイズは行えないけどな。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
「あ、ユイ！」

ユイ:LP 300
美羽:LP 1300
偽ユイ:LP 1000

「え？どうした美羽？お前のターンだろ？」
「いけない！」
「馬鹿め！もうターンエンドしちまったからなぁ！早くドローしてスタンバイフェイズに入りな！」
「どうしよう…」
「美羽。俺なら大丈夫だ。引いてトドメを刺すんだ」
そう。このターンは凌げる。何故なら…
「私のターン…。……ドロー…」
「この瞬間！スタンバイフェイズに入ったことでバジリニクスが」

シーーン…

「何！？特殊召喚できないだと！？」
「実はギアフェイト･Ｘドラゴンの効果には続きがあってな。さっきの効果で破壊されたカードの効果は全て無効化されるのさ！これでガルドニクスなどの復活効果を全部封じたぞ」
「ば、馬鹿な！」
「美羽！トドメを！」
「うん！私は…カードを１枚伏せてターンエンド…」
うーん。引けなかったか。
「あっはは。まぁ簡単に引けないかぁ。ドンマイ、ドンマイ」
「ユイ…！」
「貴様！なぜそんなにヘラヘラと！」
「だって人の前のデッキを真似するような奴には負けないからな」
「この野郎！俺のターン、ドロー！！よし！魔法カード『死者蘇生』！蘇れ！『炎王邪神獣バジリニクス』！これでまずは美羽を仕留めてくれる！！」
「…ひ！」
「大丈夫だ美羽。スキュルートEPの効果発動！相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをリリースすることでその攻撃モンスターを手札に戻す！」
「何！？」
スキュルートEPが杖を振るうと虹の輪がバジリニクスを包み、フッと消えてしまった。
「くっ！ターンエンドだ…！」
「この瞬間、スキュルートEPは特殊召喚される！」
「な！」
空に七色に光る紋章が浮かび、そこからスキュルートEPが再臨する。
「じゃあ俺のターン。これでThe ENDだ！偽者め！」

運命の救世者 ギアフェイト･Ｘドラゴン ATK 2900　直接攻撃

「グアアァ！…キノウ……停…止」



デュエルが終わるとみんなが俺に駆け寄る。
「ユイ！」
「ユイさん！」
「ユイ殿！」
「ユイ！」
こう見ると俺は本当に帰ってきたんだなと実感できる。
「ユイ様！」
「遊月…。泣いてたのか？目が真っ赤じゃないか」
「だって…だって！」
「…心配掛けてごめんな」
俺は遊月の髪を撫でる。
「そうだ！俺の偽者は？」
俺は負けて吹っ飛んだ偽者に近づく。みんなも俺に続く。
「これは…！」
吹っ飛んだ俺の偽者のデュエルディスクは壊れ、体にも傷があったが…。
「何でしょうか…」
「人間ですらないとは面妖な！」
遊月や柳生さんの指摘通りだ。傷口から露出してるのはバチバチとショートしてる導線だった。
「これって…ロボット？」
蹴ってみても反応がない。どうやら壊れたようだ。
「マスターDの刺客なのは間違い無さそうだけど…」
今後もこういったマスターDの刺客や遊戯達も立ち塞がり、激しい戦いになりそうだ。だけど今は…
「みんな。改めて、ただいま！」