第108話　地獄より出でし邪龍　作：ター坊

~遊月サイド~

信重公…。やはり手強いです。今では五行の巫女の化身まで魔王の傘下とは。
「遊月姫よ。主は無力よ」
「え？」
「見てみよ周りの者を。主は何も守れぬ。余が滅ぼした魅河のように主の家来も、異国の者も滅ぶであろう」
「そんなことは…！」
「させぬと言うか。だが主に何ができる。主の五行の巫女の末裔としての宿命(さだめ)に周りは翻弄され、悉く不幸の目に遭う」
「…違います！」
「そうか？ならば何故魅河は滅んだ？何故無関係な異国の者を巻き込んだ闘争となった？」
「それは…」
思わず口ごもってしまう。
「主は知らぬが、五行の巫女の力を巡っての戦は幾度となくあった」
「戦？」
「古くは覇を唱えんとする平家から始まる。その後も五行の巫女の末裔を巡る戦は繰り広げられ、その度に多くの兵が、民が死に絶えた」
「そんな…！」
五行の巫女の力を巡っての戦…。それでは私の存在は…
「謂わば五行の巫女の末裔は戦の連鎖の根源よ。故に余がその五行の巫女の力を収め、それを巡る闘争の歴史に終止符を打とうと言うのだ」
そんな…。私のせいで魅河の民が…。それに今ユイ様達にも…
「遊月姫よ。主がおる限り平和は訪れぬ。生きておる限り主を巡って戦が起き、多くの人間が滅ぶのだぞ？」
「なら、私は…」

「…何を言ってるんだ？」
ユイ様…？
「黙って聞いてれば全部五行の巫女のせいにして！その力を欲しがってるお前や昔の奴らが悪いじゃないか！」
「異国の者よ。そちらの世界にもないのか？力を求める争いが」
「あるさ！けど力が欲しいからじゃない。国や人を守るために戦うんだ！」
「守るだと？主が遊月姫を守るというのか？」
「まぁ大袈裟に言えばそうだな。どこまで出来るかは分からないが、可能な限りやってやるさ」
「そやつが戦の根源だとしてもか？」
「遊月だって、好きで巫女の末裔になったわけじゃない。たまたま遊月になっただけだ。お前みたいな奴がいなければ遊月だってお姫様として、いや、普通の女の子として普通に暮らしてたハズなのに。その平穏を奪ったのは巫女の力を求めるお前達だ！」
ユイ様…。そんな風に言っていただけるなんて…。
「それは愛ゆえか？」
「そりゃあ、遊月みたいな可愛い女の子に好かれたら嬉しいけど…。見た目平凡、特に賢くもないし特技は料理とデュエルくらい。それでモテると思うほど自惚れてはいないさ。俺は仲間として遊月と一緒にお前を倒す！それだけだ！俺のターン、ドロー！」

ユイ:LP 1900
遊月:LP 5500
柳生:LP 5000
明智:LP 2600
織田信重:LP 11700

「リバースカード発動！『救世の継承』。これによってデッキから墓地にいるシエラと同じ種族の『奏笛の救世者 アルル』を手札に加える」
「……」
やはりこの程度でオオウドウロウの効果は使わないか。なら先に退場させるのは！
「アルルを召喚！コイントス判定」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これで墓地からシエラを特殊召喚！そしてレベル4のアルルにレベル4のシエラをチューニング！シンクロ召喚！『天舞の救世者 アメウズメ』！手札のオリハルコン･クロックと『勇気の救世者 シグナム』を見せることでアメウズメの効果発動！ダイスロール！」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…4！

「これでまずは500回復。続いてオオウドウロウをデッキに戻す。さらに2枚ドロー」
「うぬぬ…」
「さらに手札から魔法カード『無限の可能性』を発動！これでダイブレードを特殊召喚し、オーバーレイユニットとして墓地のシエラとアルルを下に重ねる。バトル。ダイブレードでフドウフジに攻撃」

闘魂の救世者 ダイブレード ATK 2600 VS 大地の明王フドウフジ ATK 2500

「よし！巫女の化身の内、二体を倒せましたか！」
「さすがユイ殿！」
「そしてメインフェイズ2。ダイブレードのオーバーレイユニットを１つ使ってデッキから『救世の恵み』を加え、発動！自分フィールド上の救世者の数だけサイコロを振る」

ｺﾛｺﾛｺﾛ…5！
ｺﾛｺﾛｺﾛ…2！

「まずは5の目で1000回復。さらに2の目で1枚ドロー。カードを1枚伏せてターンエンド。あとは任せた」

ユイ:LP 3400
遊月:LP 5500
柳生:LP 5000
明智:LP 2600
織田信重:LP 11600

「私の番、札を引きます！伏せ札、『水鏡の呼び水』を発動サドダイダラを対象として星が同じ数になるように山札より水鏡の式霊を特殊召喚します。サドダイダラの星は十。よって山札より星二の仲宇那阿『水鏡の踊り子シズク』と星四の『水鏡の幼龍アマグモ』を二体特殊召喚します。私はアマグモ二体にシズクを仲宇仁愚！命の始祖(みなもと)たる水の守り神よ。私の祈りに応え、力をお貸しください。秦苦露召喚！『水鏡の神龍アデラノナナタキ』！」
「来たか、水の巫女の化身よ」
「そして私は手札から魔法札『水鏡の荒波』を発動します！これで全ての水鏡式霊の攻守を入れ替えます！」
「遊月…。お前」
「ユイ様。私も戦います。私が巫女の末裔としてだけではなく、徳川遊月として生きている証を立てるために！行ってください！アデラノナナタキ！」
「むうぅっ！？防ぎ切れぬか」

水鏡の神龍 アデラノナナタキ ATK 3000 VS 黄金の魔神サドダイダラ ATK 2800

「私は札を1枚伏せて終わりにします」

ユイ:LP 3400
遊月:LP 5500
柳生:LP 5000
明智:LP 2600
織田信重:LP 11400

「拙者の番！まずは清輝で五百回復。さらに『妖の刀　骸烏』を発動！」
「出た！柳生さんの三刀流！！」
「『秘剣-星斬』」
八兵衛が放った三刀の軌跡はサクラビを切り裂きました。
「だが所詮は無力。サクラビは再生…せぬだと！」
「三刀で放つ星斬はその式霊を除外して攻撃力分の衝撃を与える！」
「グアアァ！」
「さらに鎮雪の斬撃、骸烏の攻撃を食らうがよい！」
「むぅぅ！」
「拙者はこれにて。明智殿！」

ユイ:LP 3400
遊月:LP 5500
柳生:LP 5500
明智:LP 2600
織田信重:LP 7700

「はい！全ての巫女の化身を消し、開いた徳川の道、拙者が進みます！拙者は『亡霊武者イカリ』を召喚。これにより手札より『亡霊武者ウラミ』を追加で召喚します。お行きなさい」

亡霊武者イカリ ATK 1300 + 亡霊武者ノロイ ATK 1000 + 亡霊武者ウラミ ATK 500　直接攻撃

「イカリが戦闘損傷を与えたことで偏出湯羅武札を全て破壊します！」
「おのれぇい！影政めが！！」
「信重！まだ終わりませんよ！拙者は伏せ札を発動！『呪言唱和』！これにより、戦闘中の融合を可能とします！これで三体の亡霊武者を束ねます！現れよ！『呪怨腐龍シビトモリ』！」
体のあちこちが腐った龍が明智様の場に現れる。
「シビトモリで追撃の攻撃！」

呪怨腐龍シビトモリ ATK 3000　直接攻撃

「さらにシビトモリの効果発動。相手に戦闘で損傷を与えた場合、守備表示で二体まで亡霊武者を蘇らせます。これでノロイとウラミを復活。再び札を一枚伏せて拙者の番は終いです」

ユイ:LP 3400
遊月:LP 5500
柳生:LP 5500
明智:LP 2600
織田信重:LP 1900

皆様の連携によって信重をここまで追い詰めました。
「あと少しで終わる。戦国時代の戦いも！」
「姫、あと一押しですぞ！」
「信重！積年の怨み、義父上の仇、覚悟はよろしいですね！？」
「…クク、フフ、フハハ！」
「何が可笑しいんだ！？」
「鼠共が。この余を、魔王を倒せると本気で思うておるのか？片腹痛いわ」
「何を言っている！お前は手札もデッキも0！場もがら空き。しかもさっきの巫女の化身の展開に使用したカードは自身の効果で除外されているため使用できない。おとなしく降参しろ！」
「フフッフ。巫女の化身など余の駒に過ぎぬ。むん！」
信重公は手で印を組み、謎の経を吟い始めました。

ゴゴグアアァッシャアァァン！

「なんだ！？地震！？」
「おのれ信重。怪しげな術を！」
「待って下さい！あの地面の模様は」
明智様の指差す先に何やら淡く光る円陣が現れ、中から闇が滲み出し

シャオオォォン！ジャァギャアアァ！

「あれは！？」
「なんだありゃ…。あれがラスボスってところか」
「禍々しいまでの負の障気…この龍は一体…？」
円陣から現れた八つの頭の龍…。これは
「これぞ『獄界邪龍 遠呂智(オロチ)』。全てを滅ぼす地獄の龍よ」