第74話　降臨！究極機皇神　作：ター坊

~龍可サイド~

あのD･ホイール…。私は信じたくなかった。けれど、
「遊星！」
私はその名を叫んでしまった。
「大瀧！大丈夫か！？」
「おぉ。よくぞ来た、同志よ」
「遊星。足止めは俺に任せとけ」
「はい。お願いします、十代さん」
遊星は私の叫び声に見向きもせず、ペンギンを乗せて走り去って行く。先に飛び降りたあの人は明日香さんの話だと遊城十代さんらしい…。
「ドロップアウト･ボーイ！なんであんな奴等と一緒ナノーネ！？」
「クロノス先生。それに明日香、万丈目。それはこっちが聞きたいぜ。…けど無事で良かった…」
十代さんの目に光はない。乾いた笑みを浮かべる。
「そうだった！こんなところにいると俺達帰れなくなっちまうぞ。元の世界に帰ろう！」
「十代！話を聞け！確かに俺達は帰らなければならない！しかし、今は帰る手段が分からない以上、ユイって奴と一緒に探してるんだ！」
「そうよ十代。だから十代も私達と一緒に来て。今の貴方は正気じゃないわ」
「お前ら騙されてるぞ！ユイって奴がこんな世界にした元凶だぞ！」
あれ？はじめクロウもそんなことを言ってた…。もしかしたら十代さんもクロウと同じ感じなのだろうか？
「どうしちまったんだよ！？もしかしてアイツに操られているのか？…こうなったら全員の目を覚まさせてやる！」
十代さんはデュエルディスクを構える。
「そんな！十代…」
明日香さんはひどく困惑している様子だった。それも当たり前だろう。私だって、遊星と戦うことになったら……そう思うだけで辛い。

「あら？なにかしら？空から何か…」
おジャマイエローの視線を追うと確かに空に赤く光る球体があった。
「なんナノーネ？」
「どんどん大きく…」
「いや！近付いてる！こっちに落ちてくるぞ！気を付けろ！」
そう言ってる間に赤い球体はグングン近付き

ドッゴーン！

最終的に粉塵を上げながら床の上に落下した。
「なんだ？一体…」
「……着いたか」
粉塵が晴れるとそこには見たことのある姿があった。
「ア、アポリア？」
「む？龍可か？久しいな」

アポリア ―かつて絶望の未来を改変するためにやって来て私たちチーム5Dsと戦った存在。けれど最後は遊星たちの希望を信じて、Z-ONEに希望を思い出してもらうためにデュエルしたけど、敗北して力を遊星に託して……。そんなアポリアがどうして？
「なんだ！？このデカいのは？」
「君は…。確かパラドックスと戦った精霊を従えるデュエリスト･遊城十代だったか」
「なんで俺の名前を…。さてはユイの手下か！？」
「臨戦態勢か…。状況確認は君を倒してからにしよう」
「デュエル！」



先攻:アポリア

「ワタシのターン！私は『機皇兵ワイゼル･アイン』を召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー！魔法カード『融合』を発動！手札のスパークマンとクレイマンを発動融合させ、『E･HEROサンダー･ジャイアント』を融合召喚！サンダー･ジャイアントの効果で手札を1枚捨て、ワイゼル･アインを破壊する！」
「くっ！だが、ワタシのモンスターが破壊されたことで手札から『機皇帝グランエル∞』を特殊召喚する！グランエル∞の攻撃力はワタシのLPの半分の数値となる！」
「攻撃力4000かよ！けどまだだ。魔法カード『O-オーバー･ソウル』を発動！これで手札から捨てた『E･HEROネオス』を復活！さらに『N･グラン･モール』を召喚！バトルだ！グラン･モールはバトルするモンスターとこいつ自身を手札に戻す効果がある！」
「そうはさせん。罠カード『機限爆弾』を発動。これによりグランエルとグラン･モールを破壊する」
「くそっ！けどこれでがら空きだ」
「それはどうかな？グランエルが破壊されたことで手札から『機皇帝スキエル∞』を特殊召喚」
「だけど、そのくらいなら…！行け！サンダー･ジャイアント！ボルティック･サンダー！！」

E･HEROサンダー･ジャイアント ATK 2400 VS 機皇帝スキエル∞ DEF 2200

「さらにネオスでダイレクト･アタック！」

E･HEROネオス ATK 2500　直接攻撃

「ぬあぁぁ！」
「俺はこれでターン終了だ」

アポリア:LP 5500
十代:LP 8000

「十代の奴。正気を失ってもあの強さか…」
「アポリア、大丈夫？」
「……問題ない。でなければ、ワタシがここに来た意味はない！」
「それってどういうことなの？」

「後で話そう。ワタシのターン！ワタシは『機皇兵スキエル･ツヴァイ』を召喚！これによりデッキから『機皇』カードを墓地に送る。これでワタシは『機皇帝ワイゼル∞』を墓地に送る。……これで条件は揃った」
「なんだって？」
「ワタシは墓地に存在する3体の機皇帝、グランエル･スキエル･ワイゼルをゲームから除外することでこのカードを特殊召喚する」
墓地から飛び出した3体の機皇帝は分離して別の形へと組上がっていく。
「Z-ONE。君の作ったカード。使わせてもらう。いでよ！『究極機皇神アヴァロニアス』！！」
3体の機皇帝が合体した姿はどこか神々しい巨神を思わせるものがあった。
「遊城十代…。君の眼は絶望に染まっているような気がする」
「何を言ってるんだ！俺はまともだ！」
「かつてワタシもそうだった。だが今は違う。ワタシも不動遊星のように希望を与えよう！君に勝利することによって！アヴァロニアスの効果発動！これにより相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚したモンスター1体を装備する！」
「な！サンダー･ジャイアントが！」
サンダー･ジャイアントはアヴァロニアスの核に吸い込まれるように宙を舞い、光の粒となった。
「これによって装備したモンスターの攻撃力分、アヴァロニアスの攻撃力･守備力がアップする」
「攻守、5900！？」
「アヴァロニアスの攻撃！」

究極機皇神アヴァロニアス ATK 5900 VS E･HEROネオス ATK 2500

「ぐあぁぁ！」
「さらにアヴァロニアスは相手モンスターを戦闘破壊した場合、このモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える！」
「うわぁぁ！！」
「ワタシはこれでターンエンドだ」

アポリア:LP 5500
十代:LP 1100

「俺のターン…」

「来るか…十代のここ一番の引き」
「だから十代は強いのよね」

「ドロー！…うっ！！」
十代さんの様子が…？
「俺は『E･HEROバブルマン』を特殊召喚。バブルマンの効果発動。手札とフィールド上にこいつ以外のカードがない場合、2枚ドローする。……っ」
なんだろう…。体が震えている？
「俺が弱いせいで…みんなを守れなかった……。アアァァ！！」
「なんだ？彼は絶望に嘆いているのか？」
「この力で、今度コソみんなヲ救ウ！魔法カード発動！『D(ディスペアー)-フュージョン』！！」

「なんだ！あのカードは！？」
「十代があんなカード持ってたの？」
「見たことのないカードナノーネ！」

「コレハ自分ノ手札･フィールド･墓地カラ融合素材ヲ除外シテ融合召喚スルガ、相手ノフィールド上ニ攻撃力2000以上ノモンスターガイル場合、デッキカラモ除外デキル！」
「なんだと！？」
「俺ハ墓地ノネオストデッキノ『N･フレア･スカラベ』『N･エア･ハミングバード』ヲ融合！イデヨ！『D(ディスペアー)･HEROティザスター･ネオス』！！」
「なんなのだ！この禍々しいモンスターは？」
「ティザスター･ネオスノ攻撃力ハ相手フィールド上ニ存在スルモンスターノ元々ノ攻撃力ノ合計分アップスル。ヨッテ攻撃力ハ7400」

「もし、攻撃表示のスキエル･ツヴァイが攻撃されたらアポリアのLPは…」
「あんなの、十代じゃないわ…」

「バトル！ティザスター･ネオスデ、スキエル･ツヴァイを攻撃！」
「アヴァロニアスの効果発動！1ターンに3度までバトルを無効にする」
ティザスター`･ネオスの攻撃をアヴァロニアスの腕から発生したバリアが阻む。
「マダダ！ティザスター･ネオスハ墓地ノHEROヲ除外シテ追加攻撃ヲ行ウ！モウ一度行ケ！」
「再び攻撃を無効！」
「マダマダ！サラニ除外シテ……ギャアアァァ！」
十代さんは猛攻を仕掛ける中、突如頭を抱えてその場に崩れ、倒れこんでしまった。

「十代！」
「十代！しっかりして」
万丈目さんと明日香さんが倒れた十代さんに近付こうとすると、十代さんのデュエルディスクが不意にとてつもない閃光を放った。
「マンマ･ミーア！」
「まぶしくて何も見えないわぁ~！」
その場にいた全員は光ってる間、何も出来なかった。




閃光が収まり目をあけると、そこに十代さんの姿は既になかった。






~十代サイド~

「ハァ、ハァ、ハァ……」
俺は情けなかった。自分の仲間を救えなかったなんて…。あんな事があってダメだと思ってた万丈目、明日香、クロノス先生に会えて良かったけど、連れて帰りたかったな…。どうして俺なんかよりユイって奴を信じてるんだろ？
「大丈夫かい？十代くん」
「あっ。マスターDさん…」
「回収が間に合って良かったよ。危うく君までユイの手先に堕ちるところだった」
「あんたには世話になりっぱなしだな」
「気にすることはないさ。私の貴重な協力者なのだから」
「あぁ。ありがとう」
「休んでいたまえ」
そう言ってマスターDは部屋から立ち去った。