第47話　真紅眼の貴公子　作：ター坊

「兄さん！兄さん！」
明日香さんは自分の兄、吹雪に叫ぶが何も応えない。吹雪は無言で、無表情で、デュエルディスクを構える。
「そんな…？兄さん…！」
まるでこちらを駆逐することだけを命令された機械のようだ。しかし、その眼差しは剣のように鋭くこちらに突き刺さる。
「…明日香さん。ここは俺がやる」
「え？ユイくん…！」
「デュエルに勝てば、凌牙や梶木のようにお兄さんも戻るかも」
「それなら、私が！」
「…いいんだ。だって身内と、こんなデュエルやりたくないだろ？」
「ユイくん…」
「任せとけ」
「だがユイ、気を付けろ。吹雪さんはデュエルアカデミアでも最強クラスのデュエリストだ」
「ありがとう、万丈目。気を付けるよ」
俺は3歩前に出てデュエルディスクを構える。
「さぁ始めようか！」
「デュエル…」


先攻:吹雪

「僕のターン。『伝説の黒石』を召喚。このカードを生け贄に捧げることで『真紅眼の黒竜』をデッキから特殊召喚する。さらに魔法カード『黒炎弾』を発動。相手に2400ダメージを与える」
「ちっ！いきなりか！」
「カードを1枚伏せ、ターン終了」

ユイ:LP 5600
吹雪:LP 8000

「俺のターン、ドロー。Pスケールに『赤薔薇の救世者 ラブリ』をセッティング！さらに『勇気の救世者 シグナム』を召喚！召喚時のコイントス効果をラブリの効果で表にする。これで『真紅眼の黒竜』を破壊！そのままダイレクトアタック！」
「永続罠『リビングデッドの呼び声』発動。『真紅眼の黒竜』を対象にする」
「ダメか！なら手札から速攻魔法『救世の聖火』、シグナムをリリースして発動！これで『リビングデッドの呼び声』を破壊して1枚ドロー！」

「くっ。正気を失ってもキング吹雪は健在か…」
「けど、ユイくんも凄いわ…。兄さん相手に一歩も引かないなんて…」

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

ユイ:LP 4800
吹雪:LP 8000

「僕のターン。魔法カード『真紅眼融合』発動。デッキから『真紅眼の黒竜』と『タルワール･デーモン』を墓地に送り、融合召喚『悪魔竜ブラック･デーモンズ･ドラゴン 』」
「させるか！『奈落の落とし穴』！」
「手札から速攻魔法『禁じられた聖槍』発動。魔法･罠の効果を受けなくなる」
「くっ…。手札から『護法の救世者 ゴールド･ゴーレム』を捨て、このターン、すべてのダメージを0にする！」
「僕は墓地の『伝説の黒石』の効果発動。墓地の『真紅眼の黒竜』をデッキに戻し、このカードを手札に加える。これでターン終了」
「俺のターン、ドロー！俺はチューナーモンスター『金管の救世者 シエラ』召喚！コイントス効果発動！」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「これでデッキから2枚ドローし、『慈愛の救世者 ココロナ』を墓地に送る。墓地に存在するココロナの効果発動！」

ﾁﾘｰﾝ…裏！

「よって、俺はLPを1200回復する。さらにPゾーンに『白薔薇の救世者 ピュアリー』をセッティング！これでレベル4~8のモンスターが同時に召喚可能！ペンデュラム召喚！『錬成の救世者 オリハルコン･クロック』！特殊召喚時のコイントス効果をラブリの効果で表にする！俺はシエラとオリハルコン･クロックをリリースして融合召喚！『剣聖の救世者 ボルガラッド』！ボルガラッドの融合召喚成功時、ブラック･デーモンズ･ドラゴンを墓地に送り、攻撃力の半分のダメージを与える！」
「…！」
「ボルガラッドの効果発動。サイコロを1回振る。ダイスロール！」

コロコロコロコロコロ…5！

「よってデッキの上から5枚確認」

『サイクロン』『奏笛の救世者 アルル』『輝翼の救世者 プラチナ･フェザー』『強制脱出装置』『誠実の救世者 タリス』

「したがって、このターン、ボルガラッドは4回連続攻撃可能！ダイレクトアタック！」

剣聖の救世者 ボルガラッド ATK 2800 ×4　直接攻撃（ただし半分)

「…ウゥ！」
吹雪はその場で蹲ると低く呻いた。
「よし！効いてる。俺はこれでターンエンド」

ユイ:LP 5200
吹雪:LP 800

「僕のターン、ドロー」
しかし吹雪はすぐに立ち上がり、こちらを見据える。
「魔法カード『真紅眼融合』発動。これでデッキから『真紅眼の黒竜』2体を墓地に送り、融合召喚『真紅眼の漆黒皇龍（レッドアイズ･ダークキング･ドラゴン）』」
融合召喚によって現れたのは禍々しい姿をした漆黒の魔龍だった。
「『真紅眼の漆黒皇龍』の効果発動。LPを500支払い、フィールド･手札のカードをすべて墓地に送る」
「なら、罠カードを」
「この効果にはチェーンできない」
「な、何！」
「バトル」

真紅眼の漆黒皇龍 ATK 3600　直接攻撃

「ぐあぁあ！」

「ユイくん！」
「ユイ！しっかりしろ！」

「僕はこれでターン終了」

ユイ:LP 1600
吹雪:LP 300

「俺のターン、ドロー！（いけるか？)チューナーモンスター『誠実の救世者 タリス』を召喚！コイントス効果を発動！」

「あのモンスターは…」
「コイントスで表が出れば1500ダメージを与えれる。それが出ればユイの勝ちだが…」

ﾋﾟｰﾝ…

「お願い、ユイくん。兄さんを…」




ﾁﾘｰﾝ…裏！

「そんな！」
「しかも相手の手札は0枚。裏の効果も無駄になっちまった！」
全員がどよめく。ふと見ると、吹雪は勝利を確信したのか、口角を釣り上げニヤリと笑っていた。


「…まだだ。俺が信じた未来は、運命はまだ止まらない！墓地のココロナの効果発動！」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「ココロナの表の効果！こいつ自身を特殊召喚する！」
墓地からチアガールのような格好をした少女が飛んでくる。
「俺はココロナとタリスでオーバーレイ！エクシーズ召喚！『闘魂の救世者 ダイブレード』！ダイブレードの効果でオーバーレイユニットを１つ消費し、デッキから『救世の継承』を加える。バトル！」
「…？」
「ダメージ計算時、ダイブレードの効果！コイントスを行い、表の数だけ攻撃力が800上がる！」
「2回出れば、ユイさんの勝ちよ！」
「いきなさい！ユイ！」
「コイントス判定！」


ﾁﾘｰﾝ…表！

「よし！」
「まだ油断できませんわ」
「いや、ユイならやる。俺はそう思うぜ」

ﾁﾘｰﾝ…





表！

「よってダイブレードの攻撃力は1600アップ！」

闘魂の救世者 ダイブレード ATK 4200 VS 真紅眼の漆黒皇龍 ATK 3600



「…！？」
「ば、馬鹿な！」
「あいつ最強じゃなかったのかよ！」
「俺達じゃ勝てねぇ！逃げろー！」
黒タイツの集団は吹雪が負けたと見るや一目散に逃げ出した。吹雪は糸が切れたようにその場にバタンと倒れる。明日香さんが駆け寄る。
「兄さん！目を開けて！兄さん！」
「……。ん…？」
「兄さん？」


「あ…す……か？」