第23話　新たな敵　作：ター坊

~ ユイ サイド ~

俺達は2階の捜索を始めた。２階は雑貨や服屋のテナントがあちこちあり、隠れ場所は多そうだ。そこで、さらに二組に分かれ、俺は小鳥と権現坂を連れていた。
「ふむ。同じ仲間になってくれるならば良いがな」
「そうね。…！ユイさん！」
「ん？どうした？」
「今あっちから物音が！」
小鳥が指差した先は非常階段の入り口。扉を開けると広い踊り場があり、そこには脚立やら段ボールやら色々と乱雑に置かれていた。
「ん？」
そこで気付いた。ひっくり返った段ボール箱が微かに動いたのを。
「む？あれか？俺が確かめよう」
「気をつけろ、権現坂」
不自然に動いた段ボールに近づく権現坂。一歩、また一歩と近付きそれの前の位置についた。
「隠れないで正々堂々勝負しろ！」
「きやぁああぁ！！」
段ボール箱を外した途端、女の子の悲鳴が響く。
「む？アユ！」
「ご、権現坂？…ふ、ふえぇえぇん！」
女の子は不安から解放されたのか、権現坂に泣きつく。
「うーん。とても敵とは思えないな。小鳥、万丈目と舞を呼び戻してきて」
「はい」

万丈目と舞が戻ってきて、女の子が落ち着いた頃合いで色々と聞いてみた。
「権現坂。その子とは知り合いなのか？」
「うむ。この子は鮎川アユといってな。遊勝塾に通っているのだ」
「あ、アユです。よろしくおねがいします…」
「アユか。よろしくな。俺はユイだ」
「万丈目だ」
「舞よ。舞お姉ちゃんって呼んでね？」
「小鳥っていうの。よろしくね、アユちゃん」
「は、はい。…あっ！」
「どうした？」
「克也お兄ちゃんが！？」
「か、克也？君のお兄さんなのか？」
「何？アユに兄がいるなぞ、聞いたことないぞ」
「ち、ちがうの！克也お兄ちゃんは…」
拙い説明だったが、おおよそ理解できた。話をまとめると、この子も俺達と同じように雷に巻き込まれ、いつの間にかこの街に来てしまったらしい。そこで城之内克也という高校生くらいの人と出会い、色々と手助けしてもらったそうだ。今回も謎のデュエリスト集団に追い詰められ、その城之内が囮になって逃がしてくれた、と言うことだ。…ん？
「待てよ？謎のデュエリスト集団って…もしかしてクロノス教諭たちか！？」
「みてないからわからないけど…」
「それは俺達の仲間だ！勘違いで戦ってなければ良いけど…」
「いや、たぶんあのバカならやってるかも…」
「あれ？舞、城之内とか言うのと知り合いなのか？」
「…まぁね」
俺達は非常階段を上がっていた。

俺達が3階に着いた時点で、もうデュエルは引き分けという結果で終わっていた。。引き分けなんて珍しいこともあるなと思った。
「克也お兄ちゃん！」
「あれ？アユ！？どうして…って舞！？お前もどうしてここに！？」
「それはこっちの台詞よ！」
「いや、俺は町内大会に出ようと思ったら、遅刻しそうでよ！どしゃ降りの中、チャリこいでたらすげぇ雷が…」
「あー。もういいわ。だいたい分かるから」
舞はうんざりと言った顔で適当に応える。けれど険悪といった感じはなく、腐れ縁との絡みといった印象だ。
「城之内殿。知り合いを助けていただき、男権現坂、感謝いたす！」
「おう！気にすんなよ」
「ハッハハ。それにしても城之内。次やるときは白黒はっきり着けようぜ」
「あぁ！ゴーシュ、またいつかな！」
これで人数は11人。なんだか賑やかになってきたな。その場が和気あいあいとなったその時


「はーーい。そこまで」


パンパンと手を打ちながら少年の声が聞こえた。全員声がした方向に振り向く。
「素良！？素良なのか！？」
「素良！」
「やぁ、権ちゃんもアユも来てたんだ。けど僕はこれから仕事で忙しいんだ」
権現坂とアユは知り合いのようだが…。
「じゃあ…首謀者を狩らせてもらうよ！」
素良という少年は俺にツララのような冷淡で鋭利な視線をぶつけながらデュエルディスクを構える。首謀者？俺は何かやっただろうか？
「さぁ、エネミーどもめ。俺達オベリスク･フォースが相手してやろう。光栄に思えよ？」
俺達はいつの間にか仮面を着けた謎のデュエリスト集団に囲まれていた。今までの黒タイツの集団とは違うのだろうか？
「くっ。ユイ！ここは俺達がやるから素良とか言う奴を叩きのめせ」
「分かった、万丈目！」
俺もデュエルディスクを構えた。