第184話My Future＆Dream　作：ター坊

土埃が晴れるとそこにはまだ立ち続けるユイの姿があった。

ユイ:LP 1200→100

「そんな…。どうして…」
「俺のＬＰが０になるダメージを受ける時、墓地に存在する『救世の鎮魂歌』を除外することでＬＰは１００残る！」
「あの時のドローに使ったカードが…」
「…まぁ結構な賭けだったけどな」
「え？」
「もし美羽のフィールドにもう１体モンスターがいればそれこそ負けてたさ。…ペンデュラム召喚しなかったということはそれはモンスターではないんだろ？」
「…うん。私はカードを１枚セットしてターンエンド」
美羽は仕留められなくて悔しいというより、むしろ、何処か期待というかときめくような表情をしている。
「俺のターン、ドロー。美羽…決めるぞ」
「うん。だけど私も負ける気はないよ！」
「なら止めてみろ！俺はペンデュラム召喚！フレンディー、ヴェルネッタ、スキュルート Eternal Ace ！！スキュルートの効果によってエクストラデッキのミスリル・メイドを戻して」
やろうとした瞬間、デジャヴというべきか

ガシンッ！

「なっ！」
「永続罠『美麗魔術-クリアコフィン』！」
「２枚目か…。だが、もうこれ以上妨害はないな！俺はレベル４のヴェルネッタにレベル４のフレンディーをチューニング！月満ち輝く時、愛しき者の力の片鱗重ね新たなる救世の力が生まれる。顕現せよ、シンクロ召喚！レベル８『夢幻の真救世者-ルシア・ライトムーン』！！」
「ユイと私の力が重なったカード…」
「ルシア・ライトムーンの効果発動！これで美羽のルシアを吸収させてもらう！フルムーン・ルーラー！！」
似た姿を持つモンスターだが、全く異なる効果を持つのだ。
「私のルシアが…。でも…」
「ああ。お前のＬＰは余裕があるし、そのセットカード、前々のターンで加えた『美麗魔術-フラワーシャワー』もある。戦闘ダメージを受けた時点で発動することでそのターンのバトルを強制終了させるカード…だったな」
「そこまで分かってて…勝てるって言い切るの？」
「ああ。俺には決めた夢があるからな」
「夢？」
「プロとして身を立てて、お前と遊月の二人と、いや、二人と俺の子供とも不自由なく暮らせるくらいのデュエリストになる！」
「％＃＄§※＠☆！？」
その突然の改めてのプロポーズとも取れる、というか子供とか結婚前提のようなユイの宣言に美羽は顔を真っ赤にする。それもその筈、周囲は白熱の展開で息を飲んで黙って観戦しているギャラリーに囲まれているのだから。

「やるねぇユイ君」
「観察結果２８。人間は不意に愛を告げる」
「ユイ殿…なんと大胆な…」

そのユイの告白に固唾を飲んでデュエルを見守っていたギャラリーも和む。しかし、その中で浮かない顔の人間が一人いた。
「…」
複雑な表情の遊月に気付いたユイは言う。
「遊月。俺はまだ諦めてないからな！別れるその瞬間まで一緒にいようと言い続ける！絶対だ！」
「…ユイ様」
遊月に言うだけ言ったユイは美羽と再び向き合う。
「さて、デュエル続行だ。俺はレベル８のルシア・ライトムーンとスキュルート Eternal Ace でオーバーレイ！！」
「えっ！ランク８の救世者エクシーズ！？」
「２体の救世者でオーバーレイネットワークを構築！命の源湧く時、愛しき者の力の片鱗継ぎし新たな救世の力が目覚める。降臨せよ、エクシーズ召喚！ランク８『永劫の真救世者-アデラノリュウオウ』！！」
エクシーズの光の渦から巨大な水柱が上がり、そこから黄金の鎧を纏った水龍が姿を現す。
「これって…遊月さんのアデラノナナタキ…」
「愛してる気持ちは遊月にもあるからな。俺はアデラノリュウオウのオーバーレイユニットを全て使って効果発動！これで取り除いたオーバーレイユニットの数＋１枚分の数だけフィールドのモンスターを破壊し、この効果で破壊したモンスターのコントローラーは破壊されたモンスター１体につき５枚のカードをデッキの一番上から裏向きで除外する。俺はアデラノリュウオウとジェイド・ワイバーン、エムシー・サキュバスを破壊！」
アデラノリュウオウの吐き出した水の塊は激流の滝となって全てのモンスターを打ち流す。
「私は２体で１０枚除外か…」
「俺の狙いはここからだ！アデラノリュウオウが破壊された場合、墓地からコイツ以外の救世者を特殊召喚できる。蘇れ、スキュルート Eternal Ace ！！」
流された水の中から虹色の翼の天使が再び空高く舞い上がる。
「そしてこれでThe END だ。ＬＰを半分払い、魔法カード『救世の願い』を発動！」

ユイ:LP 100→50

「自分モンスターゾーンに１体の救世者モンスターしか存在しない場合、自分の墓地から３体まで救世者モンスターを選択し、スキュルートに装備カード扱いで装備させる。選ぶのはアデラノリュウオウ、ルシア・ライトムーン、メルティエルだ」
ユイのデュエルディスクの墓地から青と紫と赤の光の球が飛び出し、それぞれがスキュルートの翼に宿る。
「そして装備したモンスターの攻撃力の合計分攻撃力がアップ！」
「…ユイ。やっぱり…かっこいいや…」
「美羽にダイレクトアタック！！望む未来を、叶えたい夢を掴むための一撃！シャイニングハート・ストライク！！」

未来の真救世者-スキュルート Eternal Ace ATK 6900　直接攻撃


スキュルートの放った魔法弾は虹色に輝くハートの形となり、美羽に直撃した。

美羽:LP 4800→0





「決着！決勝進出はユイさん！」
司会の小鳥がユイの名前を高らかに告げる。それと同時に健闘とこれから先の未来を祝福するかのような拍手が巻き起こる。
「勝てなかった…」
「悪いな美羽。未来の旦那が未来の嫁さんに負けちゃ、先が思いやられるからな」
ユイはそう言って笑いながら美羽の頭を撫でる。
「ユイ… / / / 」
美羽はユイの言葉にはにかむばかりだった。






「さぁて、いよいよ決勝戦！」
大会はいよいよクライマックス。司会のミエルの声にも熱が入る。
「では今更ながら決勝進出のd」
言おうとした瞬間―







グゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴッ！！


「なっ！なになに！？」
突如として鳴る地響き。それは体を揺らす地震となってデュエリスト全員が体感する衝撃となる。
「あかん！思ったより時化引くの早いわ！！みんな、はよ船に戻りぃ！」