第149話　全てを見透かす占い　作：ター坊

~ユイサイド~

「フフフ…さぁダーリン…」
方中ミエル…。確かお春さんを救出する時に戦ったけど…。
「そう…以前のミエルはそのオバサンに負けたけど」
「…」ﾋﾟｸ
「舞、落ち着こうか」
「あら、ユイ。アタシは冷静よ？」
「ふーん。どうだかね、オバサン？」
「ユイ。この子の相手はアタシがしていいかしら？」
おお。怒りの炎が燃えてる。ここでダメと言う理由も無いし、逆らうと恐いしなぁ…。
「じ、じゃあ任せたぞ」
「ええ。たっぷりと…ね！」
ブーツのヒールが折れんばかりに舞の一歩前に出る踏み込みが強い。
「あら、一人でミエルに勝てる気かしら？」
「なんですって？」
挑発するような口ぶりであるが、あながちハッタリという訳でもあるまい。サイコ･デュエルディスクを装備している以上、普通に済むデュエルではないだろう。
「なぁ舞。相手もああ言ってるし、より確実に勝つために…」
「アタシが負けるとでも？」
「そ、それは…」
目力が恐い。俺が怯んでいると

ｷｰﾝ

「舞」
「遊戯？」
遊戯…いやもう一人の遊戯と言うべきか。普段の遊戯とは違いかなり強気になっている。
「お前が負けるとは思っちゃいないが、相手は危険なサイコ･デュエルディスクを持っているんだ。なら複数人であたって確実に勝つべきだとユイは言いたかったと思うぜ」
「ま、まぁ…確かにそうかもしれないけど」
「ミエルは１対2の変則でも構わないわよ？」
「へぇ言ってくれるじゃないの。じゃあお望み通りやってあげるわ」
「なら舞さん。俺に」
遊矢が前に出ようとした時だった。
「えー？ダーリンはイヤよ！」
「え？」
「だってダーリンとは全員をやっつけた後に愛のイチャラブデュエルをする予定なんだもの」
「そんな…」
「なら遊矢。ここは俺に任せてくれねぇか？」
「城之内さん…」
「安心しろって！お前のダチ、取り戻してやっからよ。それに俺と舞が組んだ方が息合わせやすいしよ」
「…分かりました。ミエルをよろしくお願いします」
さて、これでミエルVS舞･城之内コンビの対決になるのか。
「さぁ行くわよ、オバサン」
「言ってなさいお子ちゃま」

「「デュエル！」」

【順番はミエル→城之内→舞】



「ミエルのターン。ミエルはモンスターを裏守備でセット。さらにカードを１枚セットしてターンエンド」
「俺のターン」
「あなたのスタンバイフェイズ時、ミエルは永続罠『運命抹消(デスティニー･イレイス)』を発動！ミエルはカード名を３種類まで宣言して相手の手札を確認し、宣言したカードがあるなら全て除外するわ」
「何！？」
城之内が驚くのも無理はない。ミエルは一切城之内の手札の情報を得るような行為を行っていない。仮に城之内のデッキの内容を100%把握していたとしても、手札に何を握っているかなんて分かるハズもない。
「外したら、その外した種類の数×１０００ポイントのライフを失うけどミエルは全て当てるわ」
そう言うとミエルは城之内に向けて掌を突き出し目を瞑る。
「…」
３つ数えたくらいの間を置いてミエルの目が開いた。
「ミエルが宣言するのは『奈落の落とし穴』、『マジックアーム･シールド』、『鉄の騎士ギア･フリード』！」
「！？」
果たして城之内の手札には…？

『奈落の落とし穴』『ベビー･ドラゴン』『マジックアーム･シールド』『鉄の騎士ギア･フリード』『人造人間サイコ･ショッカー』

「嘘…だろ」
「さぁ、除外しなさい」
「クソッ…！」
城之内はヤケクソ気味に手札を除外する。それにしても全て言い当てるなんて…。とてもだが偶然や奇跡なんかじゃない。何かカラクリが…
「テメェ！どっかに手札を覗かせてる奴がいるんじゃねぇか！？」
城之内は辺りをキョロキョロ見回す。しかし、周辺は建物が並び、遠方から覗くことはできない。それに真後ろには俺達がいるため見ることはできない。
「あら？ミエルは貴方の現在を占っただけよ。その占いの結果がこれってだけの話。さぁ、続けなさい。それとも敗北の運命を受け入れてサレンダーする？」
「俺は諦めねぇ。俺はモンスターを裏守備で出してターン終了だ！」
城之内のセットモンスターは『ベビー･ドラゴン』…。
「アタシのターン、ドロー！」
舞のターンに回り、ここからドローが可能になる。城之内と違う点は手札が６枚になることで若干の余裕があることだ。３枚除外されたとしても残った３枚でなんとかなるかも知れない。
「『運命抹消』を発動！ミエルが宣言するのは『ハーピィの羽根帚』『ハーピィ･チャネラー』そして『ハーピィ･レディ』！！」
「くっ！」
舞の手札は

『ハーピィ･レディ１』『ハーピィの羽根帚』『万華鏡-華麗なる分身-』『ハーピィ･チャネラー』『ハーピィ･レディ３』『ハーピィズペット竜』

『ハーピィ･レディ』として扱うルール効果が仇となり、一気に１と３が除外されてしまった。しかも城之内より状況は悪く、壁として出せるモンスターもいない。
「アタシはカードを１枚伏せてターン終了よ…」
城之内ほど感情的にはなっていないが、明らかに闘争心は削がれている。
「ミエルのターン、ドロー！ミエルは『運命抹消』のコストとしてライフ2000を支払うわ」
まぁ…維持コストくらいはあるか。
「ミエルは裏守備モンスターを反転召喚。『占術姫コインノーマ』の効果でデッキから『占術姫アローシルフ』を裏守備でセット。そして儀式魔法『聖占術の儀式』を発動！これで裏守備のアローシルフと手札の『占術姫クリスタルウンディーネ』をリリースして儀式を執り行うわ。全てを見通す太古の巫女よ。古の秘術によりて今よみがえれ！儀式召喚！レベル９！『聖占術姫タロットレイ』！」
相手の切り札クラスが出てきたか…。
「さらに『占術姫ペタルエルフ』を召喚して全てのモンスターでオバサンにダイレクトアタック！あの時の怨みよ！」

聖占術姫タロットレイ ATK 2700 + 占術姫コインノーマ ATK 800 + 占術姫ペタルエルフ ATK 800　舞に直接攻撃

「…っ！」
サイコ･デュエルディスクの影響で実際にダメージもあるハズ…。声に叫ばなかったが激痛が走っているだろう。
「ミエルはターンエンド時にタロットレイの効果で墓地からクリスタルウンディーネをセットしてターンエンドよ」

ミエル:LP 6000
城之内:LP 8000
舞:LP 3700

…正直、勝てる気がしない……。ミエルが言う、現在を占うという意味は謂わば透視能力のようなものなのか？だとしたらあの『運命抹消』を引かれないうちに決着をつけるしかないか…。……待てよ？そう言えば心を読む相手に戦いを挑むマンガは幾つかあった気がする…。現実で通用するかは解らないが…もう破れかぶれだ、やるしかない。でもそのためには…
「柳生さん、ちょっと…」


~城之内サイド~

あのミエルって奴には俺と舞の手札が見えているのか？そうとしか言いようがねぇ。俺達はこんな相手に勝てるのかよ？いや、男城之内、やってやるぜ！
「俺のターン、ドロー！」
「この瞬間に『運命抹消』の効果を発動！宣言するのは『人造人間サイコ･ショッカー』と『ヘルモスの爪』！」
「やっぱりか…」
これで俺の手札が尽きちまった。こうなればもうライフを少しでも削ってやるぜ！
「俺は裏守備の『ベビー･ドラゴン』を反転召喚！『ベビー･ドラゴン』でコインノーマを攻撃！」
「ふん。タロットレイの効果発動。１ターンに１度、フィールドの表側表示のモンスター１体を裏守備に変更できるわ。これでコインノーマを裏守備表示に！」
「しまった！」

ベビー･ドラゴン ATK 1200 VS 占術姫コインノーマ DEF 1400

「反射ダメージで２００受けてもらうわ。そしてコインノーマのリバース効果でデッキから『占術姫ウィジャモリガン』をセット！」
「俺はこれでターン終了…」

ミエル:LP 6000
城之内:LP 7800
舞:LP 3700

「アタシのターン…。城之内」
「なんだよ、舞？」
「アタシなりにあの突破方法を考えてみたんだ…。アタシが試していけそうなら頼むよ」
「舞、何言ってやがる！」
舞は俺の言葉を無視して目を閉じてデッキに指を置く。
「見えるんだけど、見えないもの…」
「え？」
舞が静かに言う。
「アンタがアタシに言ったことだよね」
「何よそれ！とっととドローしなさいよ！」
「今見せてあげるわよ！ドロー！！…さぁ、当ててみなさい」
舞は目を閉じたままドローしたカードをミエルに突きつける。
「ちっ！」
「カードは見えるけど、カードに秘められた可能性は見えない…でしょ？」
そうか…。ミエルは俺達が見たカードを言い当ててた。けど俺達が知らないカードなら…！舞、考えたな！
「キーーッ！！なら分かってるカードを言えば良いわよね！『ハーピィズペット竜』！！」

『ハーピィ･レディ-鳳凰の陣-』『ハーピィズペット竜』

「そんな！舞！」
「ごめん城之内。アタシはここまでみたいだ。…ターン終了」
「所詮こんなもんよね！ミエルのターン、ドロー！維持コスト２０００を支払って全てのモンスターを攻撃表示に変更し、タロットレイとウィジャモリガンでトドメよ！！」

聖占術姫タロットレイ ATK 2700 + 占術姫ウィジャモリガン ATK 1300　舞に直接攻撃

「きゃああぁぁ！！」
「舞！」
「余所見してる暇は無いわよ！クリスタルウンディーネで『ベビー･ドラゴン』を攻撃！」

占術姫クリスタルウンディーネ ATK 1400 VS ベビー･ドラゴン ATK 1200

「さらにダイレクトアタック！」

占術姫ペタルエルフ ATK 800 + 占術姫コインノーマ ATK 800　城之内に直接攻撃

「があぁぁぁ！」
クソ、舞はこんなダメージを受けてたのか…。マリクとの闇のゲームを思い出すぜ…！
「さらにタロットレイの効果でペタルエルフを裏側守備表示に直してターンエンドよ」

ミエル:LP 4000
城之内:LP 6200
舞:脱落

「俺のターン…」
俺は一呼吸置いて目を閉じて指をデッキの上に置いた。舞。お前が見せてくれたやり方、やってやるぜ！
「ドロー！！」
「ミエルは何も宣言しないわ」
よし！だけどこの１枚で…いや、勇気を出せ！俺は目を開く。
「…！よっしゃあ！！俺が引いたカードは『時の魔術師』だ！こいつを召喚！」
「『時の魔術師』…」
召喚した途端、顔色が変わった。
「フフフ…」
「何がおかしい？」
「貴方にとっては希望のカードでしょうけど、ミエルの占いではそれは破滅をもたらすカードと出ているわ」
「へっ！そんなもんにビビってられるかよ！やってくれ『時の魔術師』！！タイム･マジック！」
『時の魔術師』のルーレットが回り始める。





ヒュンヒュンヒュン…

頼むぜ…！





ヒュンヒュン…

俺は信じてるぜ…！






ヒュン…

止まる！






ピン！










ハズレ

「そんな！チクショー！！」
すまねぇ、舞、遊矢…。
「だから言ったでしょう？ミエルの占いは絶対なんだから」
「ターン終了…」

ミエル:LP 4000
城之内:LP 5950

「ミエルのターン、ドロー。もう維持コストを払う必要は無いわね。全モンスターで一斉攻撃！」

聖占術姫タロットレイ ATK 2700 + 占術姫クリスタルウンディーネ ATK 1400 + 占術姫ウィジャモリガン ATK 1300 + 占術姫コインノーマ ATK 800 +占術姫ペタルエルフ ATK 800　城之内に直接攻撃

「ぐわぁぁああっ！！」


~遊戯サイド~

「城之内くん！」
俺はダメージで吹き飛んだ城之内くんに駆け寄る。
「城之内くん！しっかりするんだ！」
「遊戯…わりぃ。最後…決めれなかっ…た……」
城之内くんはガクッと気を失ってしまった。舞は遊月さん達が看てくれている。
「さて、次は誰が相手になるのかしら？まぁ一番嬉しいのはダーリンを置いて逃げてくれることだけど」
方中ミエル…。まるでペガサスの千年眼のようだ。
（もう一人の僕！）
え？相棒。
（それなら僕達の出番だよ！）
…そうか…！マインド･シャッフル！あれを使えばペガサスのように撹乱できるかも知れない。
「あ、そうそう。今後のデュエルはちゃんと手札を見ながらやってもらうわよ。…これが欲しいなら、ね」
そう言うとミエルはポケットから何かカードを取り出す。
「実はこれ、マスターD様の元へ行くためのカードキーなのよねー」
見せられたカードは先程見ていたハートランドのカードと似ている。
「ミエルの言うこと聞いてくれなきゃ、ペキンって折っちゃうかも？」
くっ！もしあれがマスターDへの手掛かりなら失うわけにはいかない…。だが、そのためにはあの戦術を破らなければならない。手札を見透かされるためマインド･シャッフルも通用しない。一体どうすれば…
「遊戯。俺が行こう」
「ユイ。だがミエルの奴は」
「それについては１つ、俺に対抗策というか考えがあるんだ。…まぁ、一か八かだけどな」
ユイは少しおどけたような笑みを浮かべるのであった。