第128話　すれ違う心　作：ター坊

ふぅ…。なんかボーッとする。
頭がボンヤリし、ベッドで寝転がっている。
昨日･一昨日のデートでは遊月と美羽との関係を深めた以外にも大きな収穫があった。一昨日に権現坂や柚子、アユが慕ってた遊矢が、昨日は遊星が帰って来てアキとクロウと龍可とアポリアが大喜びしてたっけ。二人は当初ぐったりしていたが回復が早く、もう元気に動き回れるほどである。また、最初に襲われた5人の内の二人ということで、今まで誰も覚えてなかった洗脳された経緯をおぼろげながら覚えていた。

遊矢は仮面を被っていた男と遭遇し、見たこともないシンクロモンスターを繰り出してきて負けてしまった
遊星も同様で、ボイスチェンジャーを使われ声が分からなかったが、何か引っ掛かる

と証言してくれた。十中八九マスターDの仕業だろう。それにしてもボイスチェンジャーを使ったり使わなかったり、何故だろうか？俺達がお春さんを助けに行ったときには使ってたが、何か意図が？

ｺﾝｺﾝ

ん？誰だ？昼御飯まではまだ時間があるし。
「はーい」
ガチャ
「遊月？」
入ってきたのは遊月だが…
「ど、どうした？」
「…昨日のでーとの件なのですが」
あれ？なんか怒ってる…。にこやかだけど、オーラが…怒ってる。
「えっと…美羽とのデートが……どうしたんだ？」
「…美羽様と楽しんだようですね。……色々舐めて」
アレか…。
「……ごめん。ちょっと…調子に乗ってて。いや、あの時邪魔が入らなければ遊月にだって…そういうことしてたし……」
「……」ｼﾞﾄｰ
「ホ、ホントだって」
「……そういうことにしておきましょうか」
恐い恐い。目が笑ってない。
「それでは失礼致しました」
そう言って遊月は部屋を出てった。…拗ねちゃったか。二人の事は大好きだから偏りなく愛したいとは思う。けれど口で言うのは簡単だがやると難しい。さて、どうやって遊月の機嫌を直そうか。
「おい！」
「遊矢！待つのだ！！」
寝そべって考えていると、今度は怒鳴るように入ってきた遊矢とそれを宥める権現坂がやって来た。
「な、なんだ？」
「遊矢！落ち着くのだ！男権現坂、ユイの人柄は保証する！」
「だけど！」
「ちょっと待て。全然話が見えないぞ。なんで遊矢はそんなに怒ってるんだ？」
「こんなところで立ち止まっていられないんだ！早く戻らないとアカデミアが！」
「遊矢。それは次元戦争のことか？」
「！？なんでそれを」
「話は権現坂や柚子から聴いてるよ。この世界から脱出するには元凶のマスターDをなんとかすれば良いだろうけど、所在も分からない今、闇雲に動いても仕方ない時なんだ。もどかしいとは思うけど我慢してもらうしか…」
「だけど！こうしてる間にもアカデミアが俺達がいた次元に攻めてくるかも知れないんだ！エクシーズ次元のように滅ぼされるかも知れない！アンタには故郷が滅ぼされる人の気持ちなんか解らないんだ！」
「…」
「遊矢！いくらなんでも言葉が過ぎるぞ！！ユイは…」
「いや、良いんだ。権現坂」
「だ、だがしかし！」
元の世界に帰りたがってる奴が多いのも事実だ。それで不満を募らせてるのも無理はない。誰かに当たり散らされるくらいなら…。
「やる気か！」
「それでお前の気持ちが落ち着くならな」
「なら外でアクションデュエルを受けてもらう！」
「アクションデュエル？」
確か権現坂達のデュエルの形式だったな。
「構わないけど…」
まぁ…大丈夫かな。
「そう言えば遊矢」
「なんだよ？」
「権現坂達から聞いたことあるけど、お前がやるエンタメデュエルって？」
「デュエルで見てる人も相手も笑顔にするデュエルだ」
「そうか…」
みんなを笑顔に……ね。





どうやらアクションデュエルには広いスペースが必要なようで船の外に出てDuely前の広い駐車場でやることになった。柚子やアユを始め、観に来たみんなにはこのデュエルの詳しい経緯を話しておらず、練習試合ということにしてる。
「遊矢おにいちゃーん！がんばってー！」
「遊矢ー！負けないでよ！」
声援がとぶ中、俺はちらりと観客の遊月を見る。
「…」
やっぱりまだご機嫌が斜めのようだ…。
「行くぞ！アクションフィールド魔法『クロスオーバー･ワールド』発動！」
え？いきなりフィールド魔法発動するの？遊矢がそのカードを発動させた途端、空中に何やら緑色のブロックが浮かぶ。
「戦いの殿堂に集いし決闘者が！」
「…？」
……何か口上がいるのか？
「あ、そっか。ユイおにいちゃん知らないんだ」
「じゃあ私達が…。モンスターと共に地を蹴り宙を舞い！」
「フィールドないをかけめぐる！」
「見よ！これがデュエルの最終進化系！」
遊矢が言った口上らしきものを柚子、アユ、権現坂が続ける。

「アクショーーン…」




「「デュエル！！」」