第126話　26cm差の甘い恋　作：ター坊

~美羽サイド~

昨日、ユイと遊月さんが早くデートから帰ってきてどうしたのかなって思ったけど、柚子さんの友達が戻ってきて良かった。あれからけっこうゴタゴタしたけど何事もなく、私はこの日を迎えた。
「おとと…」
少しよろける。今までこんなヒールの高いパンプス履いたことなかったから…。転ばないよう気を付けなきゃ。

コンコン

部屋をノックする音がする。
「美羽？」
ユイの声がする。私はドアに駆け寄り開く。
「へぇ~、可愛いな。プリーツスカートがなんとも」
ユイはホントに嬉しそうに微笑む。
「じゃあ、今日はよろしくな、美羽」
「私こそ…/ / / 」
人生で初めてのデートを前に思わずはにかむ。こんな私に、こんな素晴らしい日が来るなんて。

「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい。美羽も楽しんでね」
「うん。行ってくる」
アキに見送られて私とユイは船を出た。



友達はおろか一人で出歩いたこともなかったから、そこそこ住んでたハズの街並みが知らない景色だったと思い知らされる。
「そうだな…此方には何があるのやら」
「あれ？昨日遊月さんとも来たんじゃあ…」
「いや。昨日とは逆方向だな」
「へ？そうなの？」
「さすがにデートコース使い回しは嫌かな~と」
「そう…なんだ」
嬉しい…。私のためにわざわざ新しい所にしてくれたんだ。
「それよか、美羽。足がふらついてるみたいだけど、大丈夫？歩き疲れたならひと休みするか？」
疲れたんじゃなくて、履き慣れないパンプスというだけだ。だってこんなにヒールが高いのを選んだのは…
「う、ううん！全然大丈」

グラ~

「あっ！」

コケッ

少しバランスを崩して転んでしまった。
「美羽、大丈夫か！擦りむいてないか？捻ってもない？」
「うん…。大丈夫…」ｸﾞｯｽ、ﾋｯｸ…
自然と瞳が潤み、涙が流れる。
「泣くほど痛かったのか？」
「ううん…。違うの…。なんだか自分が情けなくて……」
「？」
私は涙を拭きながら言葉を続ける。
「ユイはやっぱり……大人っぽい子が好きでしょ？」
「？」
「私ってさ…身長も胸もちっちゃいから……ユイが一緒に歩いても、つまんないんじゃないかって……」
「それでその靴を？」
私は黙って頷く。馬鹿だな、私。逆にユイに迷惑掛けちゃって…。
「…とりあいず、立てるか？」
「う、うん…」
私はユイに促されるまま立ち上がる。
「ありがとうな。美羽」
「え？」
ユイは優しく笑いながら髪を撫でてくれた。そんなこと言われるなんて思わなかった。てっきり、呆れさせてしまったと…。
「デートのためにわざわざ歩き慣れない靴履いてくれたんだ。女の子にそこまでしてもらえるなんて嬉しいさ」
「… / / / 」
「俺も何かしないとな」
「へ？」
ユイは姿勢を低くして
私とユイの視線が合って
そして―
ｸﾁｭ
「ん」
ﾌﾟﾊ
終わった後、私自身の顔が真っ赤になったのが分かるくらい火照っていた。
「ユイ？急に… / / / 」
「美羽が努力して慣れない靴を履いたように、俺も好きな女の子のために少ししゃがむくらいの努力はするさ」
…ホントに優しいな。だから遊月さんも私もユイの事、好きになったんだ。
「でも歩いててまた転んでも困るしな…。おっ！良いところに。よっと」
「ひゃっ！」
ユイが急に私を抱き抱えた。これって…
「お姫様…だっこ？」
「あれ？おんぶの方が良かったか？」
「う、ううん！とっても嬉しいけど…重いんじゃ…」
「全然。美羽って軽いし」
「でもずっとこれじゃ…」
「それであれだ」
ユイの視線を追うとある看板が目に入る。



お姫様だっこのまま抱えられてやって来たのはオシャレなブティックだった。そこにはパンプスも扱っていて履きやすくて気に入った物を選び直すと良いと言ってくれた。
「でも高いんじゃ…」
「なら下取りとしてその靴を置いてけば良いんじゃないか？それもそこそこするだろ？」
「…うん」

ユイに新しいパンプスを買ってもらって(気持ちばかり元のパンプスと一緒にお金も置いてきた)、デートは再開となった。とっても歩きやすい。
「喜んでもらって良かった」
「うん♪」




あちこち廻って時間はお昼くらい。私とユイはオープンテラスがあるカフェでひと休みしていた。
「そうだな…。そろそろ小腹も空いた事だし、なんか作るか」
ユイはテーブルにあったメニュー表を眺め始める。
「なるほど…。ここはデザート系が充実してるな…」
「ユイ？」
「ちょっと厨房見てくる」
「え？どうするの？」
「ありあわせのものでなんか作るさ。食材もたぶん冷凍保存されてるから大丈夫だと思うし。美羽はここで待ってて」
「私も…行っちゃダメ…かな…」
「そうだな…。共同作業ってのも良いよな」
私とユイは厨房に向かった。





「さてと。メニュー表の写真より良い出来映えだな」
私達は冷蔵庫にあったクリームや果物、アイスを組み合わせてパフェを作った。
「じゃあ、いただきま」

ブゥウン！

「きゃ！」
私の耳元で虫の羽音が大きく響く。驚いた拍子で腕が引っ掛かり…

ガチャン

パフェの器を落としてしまった。
「美羽、大丈夫か！どうした？」
「えっと耳元に虫が飛んでて…ビックリして」
「そっか。器ぶつかって怪我とかしなかった？」
「うん大丈夫…でも……」
「おぉ…」
クリームやらチョコソースやら、ベッタリと服や脚に付いてしまった。
「もったいないな…。……♪」
ユイが少し笑った気がした。何かを閃いたようないたずらっ子のような。








「もったいないからな」ﾊﾑｯ
「ひゃう！ユユ、ユイ！？」
急にユイが私の脚を開いて、脚や太ももに口を付けてクリームを舐め始めた。
「ん。んま♪」ﾍﾟﾛｯ,ﾁｭﾊﾟｯ
「ひゅイ…らめぇ…。そんにゃとこ…」
「ふぁってもっふぁいにゃいはろ？」
「にゃ、にゃめがらしゃべっちゃ！」
脚に、太ももに、ユイの舌の感触が伝ってくる。止めさせようにも両手はスカートを抑えるために使えない。恥ずかしさで呂律が回らない。
ｼﾞｭﾙ,ﾁｭﾊﾟｯ、ﾚﾛｯ､ﾁｭｰ
「ひゃめ…。もう……」ﾊｧ,ﾊｧ
恥ずかしさを通り越して、なんか自分でも分からない感覚が込み上げる。私が知ってる感覚で一番近いものを挙げるとすれば……快感だろうか。
「ん！ひゃあっ！」
ｸﾁｭ、ｼﾞｭﾙ…ﾌﾟﾊ
「…ふぅ。こんなもんだろ」
「…へ？」
「だいたい取れたからな。あとはおしぼりとかで…な♪」
ユイは笑顔で言ってるけどこれは意地悪な笑みだと直感した。
「どうした？」
「分かってるくせに…。ユイの意地悪……」
「…美羽って、ついからかいたくなるからな」
「もう…」
「…素直に言えたら……するけど？」
ユイの意地悪な笑みに逆らえない。
「もっと…して……」
「具体的に？」
「… …もっと…脚や太ももを…な、舐めて、綺麗にして欲しい…です… / / / 」
言っちゃった。子供みたいにおねだりしてるみたいで、恥ずかしい。
「よく言えました。じゃあ遠慮なく…♪」ﾊﾑｯ
「ひゃっ！ユ、ひゅイの、ひぇんたい…」
「ふぉんなふぉふぉいうこは…」ｽﾞｽﾞｯ
「ひゃうっ！！」
ユイの舌が太ももを一気に横一文字に這って、変な声が出てしまう。







ブオオォォ

なんだろう？エンジン音？ユイもそれに気付いたのか、太ももから唇を離す。
「バイク音…ってことは」
さっきまでのいたずらっ子のような表情とはうってかわって、険しい顔になる。そしてエンジン音がこっちに近づくように大きくなっていく。

ブオオォォン！

向こうの曲がり角から1台の赤いバイクが飛び出してきた。そのバイクはカフェの前辺りで停止する。
「そのバイク…いや、D･ホイール…だっけか」
バイクのライダーは降りてヘルメットを外す。その顔は信重との決戦の時、阿津血城で見た…。
「不動…遊星だったな」
「おい。その子を寄越してもらおうか」
「来て早々、人の彼女を横取りする気か？」
「黙れ！お前のせいでアキ達は戻れないんだ！お前を倒して皆との絆を取り戻してみせる！ユイ！俺とデュエルしろ！」
「…良いだろう。遊矢に続いて今度はお前を取り戻す！！」
お互いにデュエルディスクを構えて向き合う。

「「デュエル！！」」