第40話　謎の邂逅 (特別企画)　作：ター坊

第1デュエルが終わり、俺は休憩がてら、トイレで用を足していた。手も洗い、みんなのところに戻ろうとしたとき、不意に

ガタン！

大きな物音がした。どうやら一番奥の個室トイレからのようだ。まだ小さくｶﾞﾀﾝｶﾞﾀﾝと音がする。まさか、新手の敵か？俺はそう思いながら、にじりにじりとトイレに接近する。ロックの表示を見ると開いてるようだ。

-よし！
「おい！だr」
意を決してドアをバンッと開け誰だと叫ぼうとした瞬間、俺は光に包まれた。


…


……ん？
気付くと俺は寝そべっていた。背中がフカフカと心地よい感触がする。起き上がって色々と見てみた。まず部屋全体としては白を基調としていてカーテンやカーペット、小物などは薄いピンクで統一されており、女の子の部屋っぽい印象を受けた。だとしたら棚とかを調べる訳にはいかないだろうと思っていると


たっ、たっ、た

「それで…かしの…しいだ…」

足音と誰かの話し声が近付いて来る。そしてすぐガチャとドアが開いた。
「え？」
「？」
「…えっと…」
「キャアアァアァァアァアｱｧ！」
まぁ、当然の反応だろう。鉢合わせになったのは二人組の女の子だ。
「あ、あんた！私の部屋で何してんのよ！」
「キョウコ…もしかしてさっきニュースでやってた…」
「ま、まさか！連続下着泥棒！？」
「いやいやいやいや！違う違う！」
誤解を解かなければ！と思った矢先、悲鳴を聞き付けて駆けつけるような速い足音がこっちに来る。
「キョウコ！ミア！どうしたんだ！」
「お兄さん！」
「ツヨシさん…」
この子達の兄であろうか？
「だ、誰なんだ？」
「さっきのニュースでやってた連続下着泥棒よ！きっと！」
キョウコ…と呼ばれている少女は俺を指差してツヨシという奴に言い付ける。ツヨシは少し考えこんだあと、俺にいくつか尋ねてきた。
「お前、ホントにそうなのか？」
「だから違うって！」
「じゃあ名前は？」
「ユイ…かな」
「それだけ？じ、じゃあどこから来た？」
「新横浜地区のショッピングモールDuelyからだが…」
「んー。聞いたことないな…」
ま、まずい。疑われている。それにこれってあいつらと同じ状況じゃないか。みんなも最初はこんな風に俺と接してたのかな。
「それって…デュエルディスクだよな？」
「あ、あぁ…」
そう答えるとツヨシは、よしと言って俺と女の子達を別の場所に移動させた。


連れてこられたのは広いスペースが確保された部屋だった。
「何をする気なんだ？」
「君は俺とデュエルしてもらう」
「え？」
「ちょっとお兄さん！こんな下着泥棒とデュエルなんて！」
「もしかしたら彼もミアみたいに記憶が抜けたり混乱してるだけかも知れないだろ？だからデュエルで思い出させようと」
まぁ、下着泥棒よりマシだが…今度は記憶障害者扱いか…(まぁ本名をド忘れしてるから完全に否定できないが)。
「いいだろう！その勝負、受けて立つ！」
俺の汚名を晴らすためにも！
「じゃあ行くぞ？」
「デュエル！」


先攻:ツヨシ

「俺のターン！俺は『機密兵器(シークレット･マシン)06 ブリンガー』を召喚！」
機密兵器？聞いたこともないシリーズだ。最も俺も人のこと言えないがな。
「ブリンガーの効果発動。召喚成功時にこのカードを除外し、デッキから『機密兵器04 シーラ』を手札に加える。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
「俺のターン、ドロー。俺は『勇気の救世者 シグナム』を召喚！」
「え？メシア？」
「はじめて見るカードです…」
デュエルを観戦してる女の子達は小首を傾げる。
「シグナムの効果発動！コイントスを行う」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「外したか…ならばダイレクトアタック！」

勇気の救世者 シグナム ATK 1800　直接攻撃

「うわっ！」
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
「速攻魔法『サイクロン』発動！今セットしたカードを破壊する」
「『救世の聖火』が…」

ユイ:LP 8000
強志:LP 6200

「俺のターン、ドロー！スタンバイフェイズ時、除外されたブリンガーを攻撃表示で特殊召喚する！」
空間がグパッと開き、そこから先程の機械がエンジン音を響かせながら、進んでくる。
「な、なんだ？」
まさかこれで展開していくタイプのデッキか！？
「俺は『機密兵器04 シーラ』を召喚！さらに魔法カード『機械複製術』でデッキからシーラを2体特殊召喚！」
あれでレベル4が4体…！
「俺はブリンガーとシーラでオーバーレイ！2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！エクシーズ召喚！『機密兵器α デストロイ』！」
渦からバカでかいロボットが出てくる！
「さらにシーラ２体でもオーバーレイ！エクシーズ召喚！『機密兵器δ バミューダ』！」
次は巨大な戦艦のような船が浮上する。
「まだまだ！俺は魔法カード『機密技術(シークレット･テクノロジー)-ミラージュ』！LPを1000支払い、自分のオーバーレイユニットとなっている『機密兵器』モンスターを2体特殊召喚する！俺はデストロイとバミューダでオーバーレイユニットとなっているシーラを１体ずつ特殊召喚！」
２体のオーバーレイユニットがフィールド上に落ち、元の機械の姿に戻った。
「俺は再びシーラでオーバーレイ！エクシーズ召喚『機密兵器Σ ビッグジェット』！」
今度は巨大な飛行機が空からやって来た。
「ビッグジェットが俺の場に存在する限り、自分フィールド上の『機密兵器』モンスターの攻撃力は『機密兵器』XモンスターのX素材の合計×200アップする！よって800アップ！バトル！」

機密兵器α デストロイ ATK 2800 VS 勇気の救世者 シグナム ATK 1800

「さらにビッグジェットでダイレクト･アタック！」

機密兵器Σ ビッグジェット ATK 2400　直接攻撃

ミサイルが雨のように降り注ぐ！
「ぐあぁ！」
「お兄さん！頑張れー！やっちゃってー！」
「俺はビッグジェットの効果発動！オーバーレイユニットを１つ消費し、1枚ドローしたあと手札を1捨てる。この時、捨てたカードが『機密兵器』モンスターならその攻撃力分のダメージを与える。俺はドローし、捨てるのは『機密兵器05 クラッシュ』！よって1300ダメージを受けてもらう！俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

ユイ:LP 3300
ツヨシ: LP 5200

「俺のターン、ドロー！(来たか！)俺はスケール9の『赤薔薇の救世者 ラブリ』とスケール3の『白薔薇の救世者 ピュアリー』でペンデュラムスケールをセッティング！」
「何！？」
「ペンデュラム…」
「嘘よ！ペンデュラム召喚はサカキユウヤだけのものじゃ…」
ひどく驚いた様子だが、どうしたのだろうか？ん？今聞いたことがある名前が…。いや、デュエルが終わったあとにでも訊くか。
「これでレベル4~8のモンスターが同時に召喚可能！ペンデュラム召喚！『友愛の救世者 エミュリン』、そして未来を司る女神『未来の救世者 スキュルート』！」
俺のペンデュラム召喚によって虹色の翼を持つ女神と小柄な少女の魔法使いが出てきた。
「なんだと！…いけない！ペンデュラム召喚時、『奈落の落とし穴』で破壊してやる！」
「ピュアリーのP効果発動。このカードを破壊し、全ての『救世者』に魔法･罠耐性を付ける！よって奈落は効かない！」
「何！」
「さらにエミュリンの効果発動！コイントスを行う！」

ﾁﾘｰﾝ…表！

「これで俺は墓地から『勇気の救世者 シグナム』を手札に加える。さらに手札からチューナーモンスター『金管の救世者 シエラ』を召喚し、効果発動時、ラブリのP効果発動！LPを800支払い、コイントスを行わず、シエラの裏の効果発動！2枚ドローし、手札を1枚墓地に送る。俺はドローし、(お！)手札から『護法の救世者 ゴールド･ゴーレム』を墓地に送る」
「何？あの人…」
「しかもチューナーということは…」
「俺はレベル4のエミュリンにレベル4のシエラをチューニング！運命の歯車を司る聖竜よ！今こそ起動せよ！シンクロ召喚！『運命の救世者 ギア･デスティニー･ドラゴン』！さらに魔法カード『無限の可能性(アンリミテッド･フューチャー)』を発動！俺はエクストラデッキより『闘魂の救世者 ダイブレード』を特殊召喚し、ゴールド･ゴーレムとシエラをオーバーレイユニットとして下に重ねる」
「ペンデュラムだけじゃなくて、シンクロとエクシーズまで使うのかよ…！」
「俺はスキュルートの効果発動！墓地のエミュリンを除外し、コイントスを3回行い、その内で表の回数分、相手のフィールド上のカードをデッキに戻す！」

ﾁﾘｰﾝ…表！表！裏！

「これでセットカードとバミューダを戻す！未来の彼方へ消えろ！」
スキュルートの杖から閃光が走り、カードは消えてしまった。
「バトル！」

運命の救世者 ギア･デスティニー･ドラゴン ATK 2900 VS 機密兵器Σ ビッグジェット ATK 2000

闘魂の救世者 ダイブレード ATK 2600 VS 機密兵器α デストロイ ATK 2000

「そしてスキュルートでダイレクト･アタック！」

未来の救世者 スキュルート ATK 2500　直接攻撃

「さらにバトルフェイズ終了時、ギア･デスティニー･ドラゴンの効果発動！こいつが相手モンスターを戦闘で破壊し、戦闘ダメージを与えた場合、その戦闘ダメージ分の効果ダメージを与える！」
ギア･デスティニー･ドラゴンの腕に装着されたレーザー砲がツヨシを捉える。
「食らえ！」
「ぐあぁあぁあ！」
「メインフェイズ2。ダイブレードの効果発動。オーバーレイユニットを１つ取り除いてデッキから『救世の聖火』を手札に加える。カードを1枚伏せてターンエンド」

ユイ:LP 2500
ツヨシ:LP 300

「俺のターン、ドロー！(勝てる！)俺は魔法カード発d」
そのときだった。急に俺の足元が赤く光る。
「なになに？」
「なんだ？うわっ！」
そして俺は浮いたような感覚がしたと思ったら目の前が真っ暗になった。

「人が…消えた？」
「嘘よ！信じられない！」
「ユイ…。なんだったんだろう。ただ、…物凄く強かった…」










……ハッ！俺が気付いた時、さっきのトイレに戻っていた。
「なんだったんだろう。幻？」
そう思ったが、ふと腕を見ると先程展開したモンスター達がデュエルディスクにセットされたままだった。トイレを見ても不審な点はない。腑に落ちない部分がありすぎだが、とりあえず、みんなの所に戻ることにした。


「ユイお兄ちゃんおそーい！」
「ユイさん、どうしたの？」
アユと小鳥が俺に詰め寄る。
「ちょっとトイレに…」
謎のデュエリストと戦っていたと言えば、余計な混乱を招くだろう。それにトイレに行ってたのは本当だしな。
「…一時間も？」
「ユイ大丈夫？具合悪いの？」
龍可とアキが心配そうな顔でこちらを見る。
「えーっと。うん、そう。さっき急にお腹の調子が悪くなってな。でも、もう大丈夫！」
「そう？なら良いけど…」
そんなに時間経ってたとは驚いた。
「小鳥？」
「なんですか？」
「大会はどうなってる？」
「ユイさんは遅すぎたので不戦敗ですよ。今決勝戦やってます」
「そうか。ゴメン」
さっきのことは俺の胸の内にしまっておこう。それに、リーダーにならずに済みそうだ。








コラボレーションに協力してくださった 名無しのゴーレム さん、ありがとうございました！