第35話　信じる心　応える心　作：ター坊

俺がデッキを完成させたとき、外から騒々しいエンジン音が響き渡る。

何事かと俺が駆けつけた時には、昨夜火事があった大広間にてアキたちと黒タイツの集団が睨み合っていた。その黒タイツの集団の先頭には羽蛾に勝った後に現れた黒バイクのライダー、クロウの姿があった。しかし、その目は生気がなく、様子がおかしいようにも見えた。
「来やがったな！黒幕め！」
開口一番、クロウが俺を指差して訳の分からないことを言ってきた。
「え？なんのことだ？」
「とぼけんなよ！テメェがこんな滅茶苦茶な世界にしたんだろ！」
「待ってクロウ！」
そこでアキが間に入る。
「彼だって望んでここに来たわけじゃないの！」
「アキ、騙されんな！そいつは色んなデュエリストを服従させて世界征服を狙ってる大悪党だぞ！」
えーー！なんだそりゃ！？
「待ってくれ！俺はそんなこと考えてないし、みんなを服従させてるつもりは…」
「うるせぇ！黙ってろ！」
「クロウ、ユイさんはそんなことしないわ！」
「龍可、お前もか！アイツに惑わされるな！それに！後ろにいる他のデュエリストも聞け！元の場所に帰りたくないのか！？」
その言葉にその場の全員がざわつく。
「そこにいる奴を倒せば全員帰れるんだぞ！？アキ、龍可！一緒に帰ろうぜ！」
俺を倒せば元の場所に帰れる。クロウが言ってることは誰に吹き込まれたのか知らないが、全くのデタラメだ。だが、帰ることは全員が望んでることでもある。それに他のみんなはどう判断するか知らないが、アキと龍可はどうだろうか？長い間チームメイトとして過ごしてきた仲間の言葉と、出会って1週間も経ってないような奴の言葉では、どっちを信じるだろうか。誰だって前者だろう。
「アキ、龍可！他のデュエリスト共も！考えるまでもないだろ！」
しばらく沈黙が続く。







「クロウ、ごめんなさい…」


最初に口を開いたのはアキだった。
「やっぱり、その話は信じられないわ…」
「アキ、なんでだよ！？俺の言うことが信じれないって言うのかよ！」
「それは…。分からないわ。けど、ユイは絶対違うって思うの。彼は自分のデッキ全てを捨ててまで私を助けてくれたの！デッキの大切さはクロウも分かってるでしょ？」
「~~っ！！」
「そんな彼を悪者とは思えないの…」
アキ…

そしてアキの言葉を皮切りに他のみんなも口々に言う。

「私も！ユイさんはそんな人じゃない！そう思うわ！」
龍可…

「ユイはいきなり会った俺を信用してくれたからな…。俺も信じてやろう！」
「そうよ~！ユイのダンナはいい人よ~」
万丈目…、おジャマイエロー…

「そうね。それにユイを倒して帰れるなら昨日の夜にもう帰れてるわよ」
舞…

「へっ。俺はユイ側に付くぜ。こんなノリのいい奴、悪党のはずがねぇからな！」
ゴーシュ…

「そうナノーネ。それにワタシたちにシニョーレ･ユイは服従を強要してないノーネ」
クロノス先生…

「左様。ユイは皆の切磋琢磨に協力してくれる男…。男権現坂、ユイについて行くぞ！」
権現坂…

「クロウさん。きっとみんなユイさんのこと信じてるんです。だからクロウさんも…！」
小鳥…

「日は浅いけどよ。俺は信じるぜ。ユイは正々堂々としたデュエリストだからな！」
城之内…

「わたしも！それに、みんなとまだ おわかれしたくないもん！」
アユ…


みんな…。俺のこと、そんな風に思ってくれてたのか。胸の奥が熱くなる。
「クッソー！なら俺がやってやるぜ！」
そう言ってクロウはデュエルディスクを構えた
俺もデュエルディスクを展開し、デッキをセットする。
「ちょっと待つノーネ！」（マンマ・ミーア！あのデッキで挑むのは無謀ナノーネ！）
「ユイ！そのデッキでやろうなんて無茶よ！」（ユイのデッキは言わばツギハギだらけのデッキ…。実戦に耐えれるわけ…）
「クロノス先生、舞。大丈夫。俺はちゃんと戦える。みんなの気持ちに応えるためにも」
俺はクロウと向き合う。
「覚悟しろよ？」
「あぁ」
「デュエル！！」