06話　試験結果　作：名無しのゴーレム

京子のライフが0になった瞬間、勝者が決定した。
「勝者、矢次　強志！　おめでとう強志君。これで無事、君も私の塾の講師として働いてもらえるよ。」
「はい！ありがとうございます！　…え？　講師？」
仙波さんの思いがけない一言に俺は凍りついた。
「そりゃそうでしょ。私に勝ったんだし、何よりエクシーズ召喚も使えるんだしね。」
「ちょっと待ってくださいよ。ハートランドじゃエクシーズ召喚なんて当たり前のように使われてましたよ。それに俺が講師なんて…」
「君の住むところではそうだったかもしれないが、ここ、舞網市ではエクシーズ召喚は最近使われ始めたんだ。何ならこちらからお願いしたいくらいだよ。ここで生徒たちにエクシーズ召喚を教えてやってくれないか？」
……そこまで言われては仕方ない。とりあえず仕事を得られただけでもよかったと考えるか。
「…わかりました。未熟なところも多いかもしれませんが、これからしばらく、よろしくお願いします。」
「ありがとう。今日は塾は休みだから、明日から働いてもらうことになるけどかまわないね？」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあデュエルも終わったし家に戻ろうよ。ねえ強志さん、後でさっきのエクシーズモンスター見せてよ。」
「ああ、いいぞ。」
京子の後に続いて、俺と仙波さんもデュエルフィールドを後にした。それにしても塾の講師か……
ハートランドにいるときはこんなことになるなんて思いもしなかったな。
（……どうして俺はここに来たんだろう。）
まだわからないことだらけだ。それでも、頼りにできる人たちもいる。だから今は、帰る方法を探しながらこの人たちのために力を尽くそう。
（さしあたっては、エクシーズ召喚のコーチか。…まあ、なんとかなるだろう。）

仙波さんの家に戻るころには、もう夕方になっていた。
「おかえりなさい、風斗さん、京子。」
玄関に入ると一人の女性が俺たちを出迎えた。
「強志君、紹介するよ。京子の母で俺の奥さんの仙波　紗枝（せんば　さえ）だ。紗枝、この子が矢次　強志君だ。」
「そうでしたか。初めまして。紗枝と申します。」
「初めまして。矢次　強志です。これからしばらくの間、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」
「迷惑だなんて…先ほどのデュエル、少し見させてもらいました。デュエル、お強いのですね。」
「そ、それほどでも…」
「何でもいいけどさ、とりあえず早く上がろうよ。いつまで玄関でしゃべってるつもり？」
「ああ、そうね。すみません。どうぞ上がってください。」
紗枝さんの案内で俺たちはリビングに到着した。そこには…
「わぁ～！！　料理がいっぱい！」
山のように積まれた料理の数々がテーブルを埋め尽くしていた。
「すげぇ…これ、全部紗枝さんが？」
「半分くらいは近くのスーパーで買ってきたものですよ。強志さんが朝から何も食べてないだろうからたくさん用意してやってくれって、風斗さんが言ったんですよ。」
「仙波さん……」
「さあ、好きに食べてくれ。あ、忘れていたよ。先に手を洗いに行こう。ほら、京子もつまみ食いする前に手を洗うぞ。」
「はぁ～い。」

そうして、俺の新たな生活が始まった。これがいつまで続くものかは分からない。だがそれは、せめてこの人たちに恩を返せるまではここにいたい、そう思えるような温かいものだった。