side恭治：駆け抜ける旋風　作：名無しのゴーレム

「……もうすぐ、着きますね」
「そうだな。……ヤバいな、こりゃあ本当に手に負えない数みたいだぜ……！」
「杏の言った通り、あそこにいる全員を倒す必要はありません。脱出経路だけを確保して、手早く逃がしてしまえば……」
「そんなに上手くいくのか？ そもそも、あいつらが追ってきたら何の意味も……おい、あれはなんだよ！？」



難民キャンプの辺り、今アカデミアの襲撃を受けている真っ只中から……今までの比ではない、強大な爆音と光が響き渡った。



「あれは、もしかして……！」
「まさか、神のカードなんて言わないよなぁ！？ アカデミアだけでも厄介だってのに、さらにそんな危険物までいるなんて……」
「……恭治。万が一神谷 敦人と接触したら……一目散に、逃げてください。私たちが戦って勝てる相手ではありませんから」
「もし、あいつがここの奴を襲っていたら？」
「……出来るだけ戦わないで救出してください」
「それでも、戦わなきゃいけないときは？」
「…………」
「……悪い、今のは気にすんな」



……まあ、こいつが言いたいことは分かってる。『可能なら助けてほしい、でも無理なら……見捨てろ』、と。そんなことを、ガキの口から言わせようとした俺が悪いか。



「……涼花も気をつけろよ。お前に何かあったら、俺が強志に合わせる顔がねえんだからな」
「それを言うなら恭治だって。風音さんのためにも、絶対に無事でいてくださいね」
「当たり前だろ。……よし、到着だ」
「……恭治、手分けしましょう。私が周囲のアカデミアに対処します。その間に恭治が近くにいる人たちを逃がしてください」
「はぁ！？ なんだよそれ、ふざけんな！」
「お願いです！ ……No.の力を使える私と、D・ホイールに乗っている恭治。役割分担は大事でしょう？」
「……クソッ、絶対無茶すんなよ！」
「はい。……それでは、作戦を開始します！」








……おかしい、人がまったく見当たらない。



「……クソ、どこにいるんだ……？」



考えている暇はない。ここは涼花と一旦合流するのも手か……引き返そうとしたまさにそのとき、近くで爆発音がした。




「！？ 今の音は……あっちか！！」



頼む、間に合ってくれよ……！







「……クッ、俺もここまでか……っ！」
「ハッハッハ！ 消えろ、エクシーズ次元の残党！ 行けぇ、古代の機械混沌巨人！」




「させるか……よぉ！ 手札のM・G ミラーの効果発動！ このカードを墓地に送り、攻撃モンスターの攻撃力半分のダメージを、相手に与える！ 古代の機械混沌巨人の攻撃力は4500、よって2250のダメージを食らえぇ！」
「だ、誰だお前は……ぐわぁぁぁ！！」


アカデミア生徒 LP2000→0




「……まずは1人、だな」
「きっ……貴様ぁぁぁ！」
「かかってこいよ。お前ら全員、俺がぶっ倒してやる！」
「お、おい！ お前、恭治か！？」
「ん？ ……おお、コンじゃねえか！ ちょうどよかった、お前に聞きたいことが……」
「そんな状況じゃねえだろうが！ 質問ならこいつら全員倒してからにしてくれ！」
「……そうだったな。よし、行くぜ！」


恭治 LP4000
コン LP700 モンスターゾーン アーティファクト－デュランダル 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
アカデミア生徒A LP3100 モンスターゾーン 古代の機械混沌巨人
アカデミア生徒B LP2700 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬


「俺のターン、ドロー！ 手札からM・G ステアルを召喚！ さらに速攻魔法、マッハ・サイクル発動！ そして墓地のマッハ・サイクルを除外して、手札のM・G ソニックを特殊召喚！ ステアルの効果発動。ソニックのレベルを4にする！」


M・G ソニック レベル1→4


「レベル4のステアルにレベル4のソニックをチューニング！ シンクロ召喚！ 疾く馳せ参じよ、M・G アキレス！ ステアルの効果発動！ デッキからM・G シュンを手札に加える。シュンを特殊召喚！ そして速攻魔法、マッハ・スリップ発動！ お互いのモンスター1体を俺のターンの終わりまで除外する。俺はシュンを除外する、さあ、お前の混沌巨人も消えてもらうぜ！」
「！？ 混沌巨人の耐性は相手の効果にのみ作用する……俺自身が混沌巨人を選んだ場合は……！！」
「さあて、これでお前の場はガラ空きだ。バトル！ アキレスでダイレクトアタックだ！」


アカデミア生徒A LP3100→300


「くっ、ううっ……」
「俺はこれでターンエンド。このとき2体のモンスターはお互いの場に特殊召喚するぜ」
「……フッ。混沌巨人さえいれば、次のターンにお前を……」
「いいや、お前はこれで終わりだよ。アキレスの効果発動！ 混沌巨人のレベル×200のダメージを与える！ 2000ポイントのダメージを、食らえぇ！」


アカデミア生徒A LP300→0


「こ、こんな奴に、俺たちが……！」
「……すげぇ！ やるな恭治！」
「当たり前だ！ 次はお前の番だぜ、コン！」


恭治 LP4000 モンスターゾーン M・G アキレス、M・G シュン（表側守備表示）
コン LP700 モンスターゾーン アーティファクト－デュランダル 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
アカデミア生徒B LP2700 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬


「俺のターン、ドロー！ ……カードを2枚伏せて、ターンエンドだ」


恭治 LP4000 モンスターゾーン M・G アキレス、M・G シュン（表側守備表示）
コン LP700 モンスターゾーン アーティファクト－デュランダル 魔法・罠ゾーン 伏せカード3枚
アカデミア生徒B LP2700 モンスターゾーン 古代の機械究極猟犬


「……ハハハ！ おいおい、それじゃあこのターンで究極猟犬の3回攻撃でお前のライフは尽きるぞ？」
「コン！」
「俺は大丈夫だ！ ……さあ、かかってこいよ」
「……虚勢を張るな！ 俺のターン、ドロー！ バトルだ！ 究極猟犬で、お前のモンスターを……」
「この瞬間、リバースカードオープン！ 速攻魔法、アーティファクト・ムーブメント！ フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する。俺が破壊するのは……俺自身の伏せカード！」
「……ハハハハ！ 自滅する気か！」
「それはどうかな？ 俺が破壊したのは……アーティファクト－モラルタ！ モラルタの効果発動！ このカードを特殊召喚して、相手フィールドのカード1枚を破壊する！ 破壊するのは当然、古代の機械究極猟犬！」
「っ……！？ バトルを終了、手札から通常魔法、死者蘇生発動！ 墓地の究極猟犬を……」
「デュランダルの効果発動！ このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除いて、お前が発動した死者蘇生の効果を『相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選んで破壊する』に変更する！」



フィールドに存在する魔法・罠カードは1枚だけ、つまり……



「くっ……ならば、お前の伏せカードを破壊する！」
「ありがとよ！ 破壊されたアーティファクト－デスサイズの効果発動！ このカードを特殊召喚し、このターンの間相手のエクストラデッキからのモンスターの特殊召喚を封じる！ これでお前は融合召喚出来ない！」
「……それじゃあ、俺はもう何も……！」
「さあ、早くターンエンドしろ！ ……俺たちの仲間を奪ったお前たちを、俺は許さねぇぞ！！」
「！！ …………チクショウッ！！」



自らの敗北を悟ったのか、相手は逃走を始めた。だが……



「あいにく、走って逃げたところで……D・ホイールから逃げられるわけ、ねぇだろうが！」
「ひぃっ！？」
「止めだ！ アキレスでダイレクトアタック！」
「う、うわぁぁぁぁ！！」





「……ナイスサポートだぜ、コン！」
「恭治こそ、本当に強いんだな！ お前がいれば、アカデミアの奴らを全滅させられるかも……」
「そうだ、忘れてた！ なあコン、ここの人たちはどこにいるんだ？ 俺たちはお前たちをここから逃がしに来たんだけど……」
「俺たちを、逃がしに？ ……悪いが、ここを失えば俺たちには何も残らないんだ。生き残るためにも、ここだけは絶対に死守しないといけないんだよ……！」



……確かに、コンの言う通りかもしれない。今この場を凌いでも、その先に繋がらなければ意味はない、か……



「……それにさ、俺たちには助っ人がいるんだよ。五人組の若い奴らだけど、全員すげぇ強くてさ。恭治みたいにシンクロ召喚を使う女もいるんだぜ？」
「へぇ〜……ぇ？」



シンクロ召喚を使う、女？ ……なんだ、すごく嫌な予感がする。



「……なぁ、そいつの名前って分かるか？」
「え？ えっと、確かな……カノン、だったかな？ ……ひょっとして、恭治の知り合いだったりするのか？」
「……知り合いどころか、実の妹だっての……！ 風音がどこにいるのか分かるか？」
「そ、そんなの分かんねぇよ。今頃向こう側でアカデミアを迎え撃ってるとは思うけど……」
「分かった。コンは俺が来た方に行って涼花に今の状況を伝えてやってくれないか？ ……あいつ、1人でアカデミアと闘ってるはずだからさ」
「……よし、引き受けたぜ」
「ありがとよ。……待ってろよ、風音……」





コンが走り出したのを見てから俺もD・ホイールを走らせる。……無事でいろよな、風音……！