side風音：最強の兄妹　作：名無しのゴーレム

「……おぉぉぉぉ！！ 俺は、レベル8のアキレスにレベル2のゼファーをチューニング！ 速度の極致に至りし者よ、その神速を以ってあらゆる敵を抜き去り射抜け！ シンクロ召喚！ 疾く馳せ参じよ、T・M・G アタランテ！！」










…………？ ここ、は……？





「…………え！？ 私、さっきまでお兄ちゃんの……」
「寝ぼけてんじゃねえよ、風音。……とっとと起きやがれ」
「ぇ……そうだ！！ アカデミアは……！！」
「……目の前だよ。気付いたらここに戻ってたみたいだ。まあ、この方が都合良かったかもな……」
「お兄ちゃん、もしかして左腕が……！」
「……デュエルするには問題ないが、D・ホイールの運転は無理だな。だが……ここでこいつらを倒す、やることは変わらねえ」



……お兄ちゃんのフィールドには、見たことがないモンスターが1体。あいつらのフィールドには相変わらず馬鹿でかい巨人が10体。



「…………勝てるの？」
「勝つしかねえんだよ。……心配すんな。根拠はねえが、今の俺は……誰にも負ける気がしねえんでな」
「……話し合いは済んだか？ こちらの手間が省けた礼として待っていたが、そろそろ時間切れだ。霧生様の命令に従い、お前たちを……抹殺する」
「ハッ、やれるもんならやってみろよ。悪いが……こっからは、俺たちのターンだ！！」


恭治 LP4000 モンスターゾーンT・M・G アタランテ 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
風音 LP1600 モンスターゾーン 魔轟神レヴュアタン（表側守備表示） 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
アカデミア LP2000 魔法・罠ゾーン 暴走融合—クレイジー・フュージョンエリア、融合塹壕—フュージョン・トレンチ 伏せカード1枚
アカデミア生徒×10 LP2000 古代の機械混沌巨人


「アタランテのシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドの表側表示のカードすべての効果を無効にする！ 」
「……フュージョン・トレンチが封じられたか」
「さらにシンクロ素材となったゼファーの効果発動！ デッキからマッハ・エッジを手札に加える。手札から速攻魔法、マッハ・エッジ発動！ このターン、レベル8以上のシンクロモンスターはすべてのモンスターに攻撃出来る！」
「アタランテの攻撃力は3000……混沌巨人には劣るが、何かを仕掛けているということなのだろう。ならば……リバースカードオープン！ カウンター罠、フュージョン・デストラクション！ エクストラデッキの融合モンスター1体を選択し、その融合素材モンスターを自分の手札・フィールドから墓地に送り、相手が発動したカード効果を無効にして破壊する！ 古代の機械双頭猟犬を選択し、手札から古代の機械猟犬2枚を墓地に送る！」
「っ……困ったなぁ〜〜、アタランテは1ターンに1度、フィールドのシンクロモンスター1体の攻撃力をすべてのプレイヤーのフィールド・墓地に存在するシンクロモンスターの数×300ポイントアップさせるっていう効果があったんだが……仕方ねえ、じゃあテメェ1人はぶっ倒す！ アタランテの効果発動！ このカードの攻撃力を1500ポイントアップさせる！」

T・M・G アタランテ 攻撃力3000→4500

「バトルだ！ アタランテでダイレクトアタック！」

アカデミア LP2000→0

「っ、ぐうぅ……！！ だが、まだ我々は負けていない……あとは、任せたぞ……」



そう言い残し、リーダー格（だと思われる）の男は姿を消した。



「……ここからが、本番だな」



……そう、ここからが本番。あの機械仕掛けの巨人たちを、どうにかしないと……



「どうするの、お兄ちゃん……」
「決まってる。……言ったろ？ こっからは……『俺たち』のターンだ」
「ぁ……いや、でも！！」
「大丈夫だ、俺がサポートする。だから……行くぜ！」
「……うん！」
「よし。アタランテの効果発動！ 相手に戦闘ダメージを与えたとき、墓地の速攻魔法1枚をセット出来る。俺がセットするのはマッハ・エッジだ！ 俺はこれでターンエンド！」


恭治 LP4000 モンスターゾーンT・M・G アタランテ 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
風音 LP1600 モンスターゾーン 魔轟神レヴュアタン（表側守備表示） 魔法・罠ゾーン 伏せカード2枚
アカデミア生徒×10 LP2000 古代の機械混沌巨人


……今の私の手札では、この状況を完全には打破出来ない。でも、お兄ちゃんなら……



「私のターン、ドロー！ …………」
「風音！ ……そのまま突っ込め！」
「……うん！ レヴュアタンを攻撃表示に変更して、バトル！ レヴュアタンで混沌巨人を攻撃！」
「血迷ったか！ わざわざ自滅するとはな！」
「……そうかしらね？ リバースカードオープン！ 永続罠、追走の翼！ これでレヴュアタンがレベル5以上のモンスターと戦闘を行う場合、相手モンスターを破壊してその攻撃力をレヴュアタンに加える！」
「なっ……！？」
「さあ、最強の悪魔よ！ あのガラクタをぶっ壊せ！！」

魔轟神レヴュアタン 攻撃力3000→7500

「……さて、次は俺の番だ。リバースカードオープン！ 速攻魔法、マッハ・エッジ！ これでレヴュアタンはこのターン、全体攻撃が可能となる！ さあ風音、やっちまえ！」
「当たり前よ！ 行け、レヴュアタン！」
「「「うわぁぁぁぁ！！」」」

アカデミア×9 LP2000→0

「……さて、あとはあなた一人ね」
「くっ……」
「泣いて謝ったら、許さないこともないぜ？」
「ふっ、ふざけるな！！ まだだ、まだ俺は負けていない！！」
「……ふーん、覚悟は立派じゃねえか」
「まあ、だからといって負けてやるなんてことはないけどね。私はこれでターンエンド」


恭治 LP4000 モンスターゾーンT・M・G アタランテ 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚
風音 LP1600 モンスターゾーン 魔轟神レヴュアタン 魔法・罠ゾーン 追走の翼（魔轟神レヴュアタン対象） 伏せカード1枚
アカデミア生徒 LP2000


「お、俺のターン……ドロー！！ 手札から通常魔法、死者蘇生を発動！ 墓地の古代の機械混沌巨人を特殊召喚！ さらに装備魔法、古代の機械殲滅砲を混沌巨人に装備！ これで混沌巨人は効果で破壊されず、融合モンスター以外のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずに相手モンスターを破壊して装備モンスターの攻撃力分のダメージを与える！」
「……じゃあ、手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動。混沌巨人の効果を無効にするわ」
「フンッ、そんなことをして何の意味がある！ まずは男の方から片付けてやる！ 行け、混沌巨人！」



……こっちのサポートはこのくらいでいいかしら。あとは任せたわよ、お兄ちゃん？



「……ハッ、やっぱり負けるのはお前だよ！ リバースカードオープン！ 通常罠、バーバリアン・ハウリング！ 混沌巨人の攻撃力分のダメージを、お前に与える！」
「なにぃ！？ ……まさかお前、これを狙っていたのか……！？」
「フフッ、どうかしら」
「これで終わりだ！ アタランテ、ぶちかませぇぇぇ！！」
「くっ、そぉぉぉ！！」

アカデミア生徒 LP2000→0






「……やっりぃ！！ ヘヘッ、ナイスアシストだぜ風音！」
「お兄ちゃんこそ、私の伏せカードを読んでたんでしょ？」
「当たり前だろ！ ……まあ、シティでデュエルギャングどもを一掃したときの経験がなかったらヤバかったかもな」
「……そういえば、あの時もお互いの表情だけで伏せカードを予想してたっけ。お兄ちゃんのデッキが変わってたから、正直私は自信なかったけど……」
「うまくいったなら問題ねえよ！ ……それより、これからどうするつもりなんだ？」



これからか。まさか、応援が来る前に倒しちゃうとは思わなかったからなぁ……



「……予定を変更して、私たちの方から神谷と合流しましょう。この辺りのアカデミアは倒しきったはずだから、もうここに留まる理由もないし」
「よし、分かった。風音、俺のD・ホイールを運転してくれ。……残念だが、この腕じゃあ無理だからな」
「……待って。お兄ちゃん、本当に大丈夫なの？ 出血は大したことないみたいだけど、そんなに酷いんだったら先に治療しないと……」
「治療ったって、道具がないだろうが。気にすんな、この通り動かす分には……痛ってぇ！！」
「……ハァ、そんな調子の怪我人連れて行けるわけないでしょ。まずは応急手当をしないと……D・ホイールの中に救急箱とか入ってない？」
「んなもん入れてるわけねえだろ」
「そっか、じゃあ一旦避難エリアまで戻るしかないわね。ちょっとの間だから我慢してね」
「……いいのか？ 向こうの……神谷たちの手助けに行かなくても。俺に構わず、先にそっちに行けば……」



……本当に、こいつは馬鹿兄貴ね。



「いい？ 神谷は私よりずっと強いし、加えて郁哉君や京子ちゃんもいる。少なくとも足手まといになるかもしれないお兄ちゃんを連れて突撃しなきゃいけないほど追い詰められてるとは思えないわ。それよりかは、お兄ちゃんが闘えるようになってから行った方がいいと思うの。……それに、妹としてお兄ちゃんが心配なのよ」
「風音……チッ、そんなこと言われちゃあどうしようもねえじゃねえか……」
「じゃあ、文句はない？」
「……ああ。まったく、兄思いの妹を持って幸せだなー」
「……なんで若干棒読みなのよ」



まあ、素直になれないだけと受け取っておくか。



「じゃあ、さっさと乗った乗った！」
「へいへい……おい、これ師匠に借りてる奴だからな。絶対に傷とかつけるんじゃねえぞ！？」
「……そう言われたら、逆に無茶したくなるかなぁ〜」
「ふざけんじゃねえ！！」
「……フフ。冗談よ、たぶん」
「いや、だから絶対……うおぉぉぉ！？ ちょっ、飛ばしすぎだぁぁぁ！！」