41話 逃れられぬ罠地獄　作：名無しのゴーレム

初日が終わり、大会2日目を迎えた。会場では京子と闘君塾の塾生のデュエルが終盤を迎えていた。


「私はレベル4の剣闘獣ラクエルと剣闘獣エクイテでオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！ エクシーズ召喚！ 行っけー！ ガガガガンマン！ ガガガガンマンの効果発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除いて、相手に800ポイントのダメージを与える！ これで終わりだよ！」
「ぐわぁぁ！！」

LP700→0

「勝者、仙波 京子！」


「京子、お疲れ様！」
「いいデュエルでしたね！」
「あはは、それほどでも…あるかな？」
…はあ。調子に乗りすぎないといいんだが。
「もうすぐ幹治の試合が始まるぞ。」
「え、本当？ 応援しなきゃ！」
京子たちの目はフィールド上の幹治へと移った。


幹治がフィールドに入って少ししてから、彼の対戦相手、東雲 心希が入場した。
「…え？ 何あれ…」
京子が驚くのも無理はなかった。彼女の衣装は、過剰なフリルが付いたまるでドレスのようなもの。あんな格好では走り回ったりすることは不可能だろう。
「目立ちたがり屋か何かか？」
「まあ、あんなのなら幹治が勝つでしょ。」
皆もすっかり油断しきっているようだ。だが…


「ハロー♪ 君が対戦相手？ よろしくね！」
「…あ、うん。よろしく。」
幹治もすっかり戸惑ってしまっている。これが狙いか？

「さて、と。じゃあ始めようか！」
「うん！」

「それでは、アクションフィールド『ファンシー・ガーデン』発動！」
司会者の宣言と同時に、フィールド上が可愛らしいぬいぐるみで溢れていった。
「うわあ、可愛い！ 私もここでデュエルしたかったな～。」
観客席からは女性からの歓声が上がる。これは幹治もやりにくそうだな…


「…何か居づらいなー。」
「気にしなくていいんじゃない？ さあ、思いっきり楽しもうよ♪」
「…そうだね。分かったよ！」



「「デュエル！！」」


心希 LP4000 手札5枚
幹治 LP4000 手札5枚


「それじゃあ私の先行で！ 私はカードを4枚セット！ 手札からカードカーDを召喚。カードカーDをリリースして2枚ドロー！ 私はこれでターンエンド！」


心希 LP4000 手札2枚 伏せカード4枚
幹治 LP4000 手札5枚


…おい、まさかあの子…
「罠カードを中心とした戦術か。幹治との相性は最悪だな。」
郁哉がそう分析する。確かにBloo-Dを切り札にする幹治にモンスターを活用しないデッキとの戦いは厳しいものになるだろう。

「僕のターン、ドロー！ 手札から魔界発現世行きデスガイドを召喚。デスガイドの効果発動！ デッキからもう1体のデスガイドを特殊召喚。僕はレベル3の魔界発現世行きデスガイド2体でオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！ エクシーズ召喚！ ランク3、機装天使エンジネル！」

…来たか。エンジネルは守りに優れたエクシーズモンスター。相手の罠カードも防げるだろう。

「バトル！ エンジネルでダイレクトアタック！」
エンジネルの突進が相手へ向かって行く。
「リバースカードオープン！ 永続罠、苦紋様の土像！ このカードを私の場に守備力2500のモンスターとして特殊召喚するよ！」
エンジネルの行く手に立ち塞がるように巨大な土像が現れた。守備力2500…容易には突破出来ないな…
「っ…エンジネルの攻撃を中止！ カードを1枚セットして、ターンエンド。」
「ターンエンド時にリバースカードオープン！ 永続罠、王宮のしきたり！ このカードが私の場に存在する限り、永続罠は破壊されない！」

苦紋様の土像はモンスターであると同時に永続罠でもある。あの守備力の上に破壊耐性…どうやって攻略する？


心希 LP4000 手札2枚 苦紋様の土像（守備表示） 王宮のしきたり 伏せカード2枚
幹治 LP4000 手札4枚 機装天使エンジネル 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー！ ……私はこれでターンエンド。」

「なっ… 何もしないだって！？」
つまり、もう守備は万全というわけか。


心希 LP4000 手札3枚 苦紋様の土像（守備表示） 王宮のしきたり 伏せカード2枚
幹治 LP4000 手札4枚 機装天使エンジネル 伏せカード1枚


「…僕のターン、ドロー！ 僕の場に2体のトーチトークンを特殊召喚し、トーチゴーレムを相手フィールド上に特殊召喚！」
「へぇ…攻撃力3000のモンスターをプレゼントしてくれるんだ。」
「うん。でもただじゃないよ！ エンジネルと2体のトーチトークンをリリースして、D-HERO Bloo-Dを特殊召喚！ Bloo-Dが存在する限り、相手モンスターの効果は無効にする！ さらに、Bloo-Dの効果発動！ トーチ・ゴーレムを吸収して、その攻撃力の半分攻撃力を上昇させる！」
Bloo-Dから放たれた無数の触手がトーチゴーレムを飲み込もうとする。
「…キヒヒ。甘いよ！ リバースカードオープン！ 永続罠、デモンズ・チェーン！ Bloo-Dの効果を無効にして、攻撃も行えないようにする！」
鎖に縛られ、Bloo-Dは身動きがとれなくなった。
「そんな！？」
「さらにリバースカードオープン！ 永続罠、深淵のスタングレイ！ 攻撃力1900のモンスターとして、私の場に特殊召喚！苦紋様の土像の効果発動！ 私の場に罠モンスターが特殊召喚されたとき、フィールドのカードを1枚破壊できる。私はBloo-Dを破壊！」
「くっ…」

また罠モンスターか…破壊出来ないモンスターが増えていく。対する幹治の場にはモンスターはいない。起死回生の手は…

「…僕はカードを1枚セット。これでターンエンド。」


心希 LP4000 手札3枚 トーチ・ゴーレム、深淵のスタングレイ、苦紋様の土像（守備表示） 王宮のしきたり
幹治 LP4000 手札2枚 伏せカード2枚


「私のターン、ドロー！ …バトル！ 深淵のスタングレイでダイレクトアタック！」
「リバースカードオープン！ 永続罠、強制終了！ 効果で僕の場の伏せカードを墓地に送って、バトルフェイズを終了する！」
「え！？ 永続罠！？」

相手は驚いているようだ。王宮のしきたりの効果は場の永続罠すべての破壊を封じる。そう、幹治の永続罠も。
「なるほど、相手のカードを利用したというわけですか。」
美愛も気付いたようだ。しかし、これでは相手の足止めしか出来ない。早く逆転への糸口を見つけなければ…

「…キヒヒ。手札から通常魔法、マジック・プランター発動！ 王宮のしきたりを墓地に送ってカードを2枚ドロー！ カードを2枚セットしてターンエンド！」

さっそく王宮のしきたりを破壊したか。これで強制終了も破壊されるようになった。けれどそれは相手にも言えることだ。


心希 LP4000 手札3枚トーチ・ゴーレム、深淵のスタングレイ、苦紋様の土像 伏せカード2枚
幹治 LP4000 手札2枚 強制終了


「…僕のターン、ドロー！ 手札から通常魔法、死者転生発動！ 手札のダンディライオンを墓地に送って、墓地のBloo-Dを手札に戻す。ダンディライオンが墓地に送られたことにより綿毛トークンを2体特殊召喚！ さらに手札からE・HERO シャドー・ミストを召喚。2体の綿毛トークンとシャドー・ミストをリリースして、D-HERO Bloo-Dを特殊召喚！」
再び幹治の場にBloo-Dが舞い降りる。今度は妨害されないか…？

「シャドー・ミストが墓地に送られたことにより、デッキからE・HERO エアーマンを手札に。Bloo-Dの効果発動！ トーチ・ゴーレムを吸収！」
Bloo-Dの触手が、今度こそトーチ・ゴーレムを捕らえた。

Bloo-D 攻撃力1900→3400

「バトル！ Bloo-Dで苦紋様の土像を攻撃！」
Bloo-Dの一撃が苦紋様の土像へと、向かって…
「…キヒヒ！ リバースカードオープン、通常罠、神風のバリア ―エア・フォース―発動！ 相手の攻撃表示モンスターすべてを手札に戻す！」
「何だって！？」
Bloo-Dの攻撃は激しい風に阻まれ、そのままBloo-Dは手札へと戻って行った。
「……僕はこれでターンエンド。」
「じゃあその前に、リバースカードオープン！ 永続罠、メタル・リフレクト・スライム！ 守備力3000のモンスターとして私の場に特殊召喚する！ 苦紋様の土像の効果発動！ 強制終了を破壊！」


心希 LP4000 手札3枚 深淵のスタングレイ、苦紋様の土像、メタル・リフレクト・スライム
幹治 LP4000 手札2枚


「私のターン、ドロー！ …さて、そろそろこのデュエルも終わりかな。私は場の深淵のスタングレイ、苦紋様の土像、メタル・リフレクト・スライムの3枚を墓地に送って、神炎皇ウリアを特殊召喚！」
すべてのカードがなくなったフィールドに、深紅に包まれた竜が降臨した。攻撃力は…『0』だって！？

「ウリアの攻撃力は墓地の永続罠1枚につき1000ポイントアップする。私の墓地には5枚。よってウリアの攻撃力は5000！」
「攻撃力…5000…」
幹治が呆然とする。あのモンスターの攻撃を受ければひとたまりもない。

「幹治！ アクションカードだ！」
郁哉が叫ぶ。でも幹治の周りにはアクションカードはない。見つけられるか…？

「バトル！ 神炎皇ウリアでダイレクトアタック！！」
ウリアから放たれた火球が幹治へと向かう。
「……あ、あった」
幹治がアクションカードを見つけた、ちょうどその瞬間に、ウリアの攻撃が直撃した。

「幹治！！」

「う、うぅ…」

幹治 LP4000→0

「勝者、東雲 心希！」

幹治が倒れ込む。大丈夫なのか…？

「イェーイ、私の勝ち～！！ じゃあね～。」
そんな幹治を心配することなく相手はフィールドを後にした。


「…すみません。完敗でした。」
あの後、幹治は自力で立ち上がり俺たちのところまで帰ってきた。
「そんなことないよ！ 幹治もすごかったって！」
京子が必死にフォローに入る。…だが事実、幹治の対戦相手、東雲 心希はとてつもなく強かった。しかし、それよりも…

（あいつから感じた、この感覚は何だ？）
まるで、以前会ったことがあるような…記憶を探ったが、覚えがない。といってもいくつか記憶が曖昧なところもあるから、確かなことは言えないが…

（東雲 心希…一体何者なんだ？）