45話 反逆者の牙　作：名無しのゴーレム

――時刻は少し遡り、美愛が目覚めた頃。


「本当なのか？ こっちに融合次元のやつが居たって言うのは？」
「間違いありません。あれはオベリスク・フォース。ハートランドでも多くの人々をカードにしていきました。」
「……急ぐぞ。これ以上誰もカードになんかさせてたまるか。」
俺たちは凉花の指す方に走っていった。


「……！！ No.が…」
「どうした？ カードが光って…」
凉花のカード、No.が輝き出した。
「……あっちに、融合次元の刺客がいます。」
「…さっきのやつとは方向が違うな。どうする？」
「……分かれて追いましょう。私は向こうに、強志はそのまま追って下さい。」
「分かった。…気をつけろよ。」
「強志こそ、危なくなったら逃げて下さいね。」
そうして、俺たちは分かれて融合次元の刺客に対応することとなった。


「……確か、こっちだったと思うんだが…」
森を抜けて、俺は遺跡エリアに入っていた。…ん、あれは？
「おい、そこのお前！」
少し先にいたその男は、俺の記憶ではバトルロイヤルの選手ではなかったはず。まさか…
「ん？ ああ、見つかっちゃったか。」
「その台詞、お前、融合次元からきたんだな？」
「そうだよ。そういう君はこの次元の人かい？」
…確定か。なら…
「…今すぐこの次元から立ち去れ。さもなければ…」
「さもなければ、何？ 力尽くで追い出すって言うの？」
「ああ、その通りだ。」
俺がデュエルディスクを構えると、相手もその意味を理解したようだ。
「はあ…、僕はこのままおしゃべりしててもいいんだけど？」
「悪いが俺も忙しいんでな。お前だけに構っている余裕も無いんだよ。」
「…そうかい。僕は神谷 敦人。君は？」
「…矢次 強志だ。」
「へぇ、『矢次』。…面白い、僕も本気だして行こうかな。」


「「デュエル！！」」


強志 LP4000 手札5枚
敦人 LP4000 手札5枚


「俺のターン！ 手札から機密兵器06 ブリンガーを召喚。ブリンガーの効果発動！ 召喚に成功したこのモンスターをゲームから除外することで、デッキから機密と名のついたカード1枚を手札に加える。」


機密兵器06　ブリンガー（オリジナルカード）
星4/光属性/機械族/1100/守600
①：このカードが「機密兵器」と名のついたカードの効果によって除外されたときに発動する。次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。②：このカードの召喚に成功したときに発動できる。このカードをゲームから除外する。その後、自分のデッキから「機密」と名のついたカード1枚を手札に加える。



「俺は機密兵器01イグニスを手札に加える。手札のイグニス、マシンナーズ・フォートレスを捨てて、マシンナーズ・フォートレスを特殊召喚！ 俺はカードを1枚セットしてターンエンド。」


強志 LP4000 手札2枚 マシンナーズ・フォートレス 伏せカード1枚
敦人 LP4000 手札5枚


「僕のターン、ドロー。カードを1枚セット。手札から通常魔法、手札抹殺発動。お互いの手札をすべて捨て、その枚数ドローする。」

いきなり手札交換か…手札が良くなかったのか、あるいは…

「捨てたおジャマジックの効果発動。デッキから、おジャマ・イエロー、おジャマ・ブラック、おジャマ・グリーンを手札に加える。リバースカードオープン。通常魔法、融合！ 手札のおジャマイエロー、ブラック、グリーンを融合する。1体では貧弱でも、集まれば王となる！ 融合召喚！ おジャマ・キング！」

融合モンスター…いきなり来たか。

「おジャマ・キングの効果発動！このモンスターが場に存在する限り、相手のモンスターゾーン3箇所を使用不可能にする！」
「何ッ！？」

3箇所のモンスターゾーンを封印されて、俺の残りのモンスターゾーンは1箇所になった。俺の伏せカード、ギアギアギアの使用も出来ない。

「僕はカードを1枚セットして、ターンエンド。」


強志 LP4000 手札2枚 マシンナーズ・フォートレス 伏せカード1枚
敦人 LP4000 手札3枚 おジャマ・キング（守備表示） 伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー！ スタンバイフェイズ時に、除外されているブリンガーの効果発動！ このカードを特殊召喚する。」
「これで、君のモンスターゾーンは埋め尽くされた。もうモンスターを召喚することは出来ないね。」
「……ターンエンド。」


強志 LP4000 手札3枚 マシンナーズ・フォートレス、機密兵器06 ブリンガー 伏せカード1枚
敦人 LP4000 手札3枚 おジャマ・キング（守備表示） 伏せカード1枚


「僕のターン、ドロー。おジャマキングを攻撃表示に変更。バトル！ おジャマキングでブリンガーを攻撃！」

攻撃力0のおジャマ・キングで攻撃…何かあるな。

「この瞬間、リバースカードオープン。通常罠、反転世界。すべての効果モンスターの攻撃力と守備力を入れ替える。」

おジャマ・キング 攻撃力0→3000
機密兵器06 ブリンガー 攻撃力1100→600
マシンナーズ・フォートレス 攻撃力2500→1600

「くっ…」

強志 LP4000→1600

「僕はカードを1枚セットして、ターンエンド。」


強志 LP1600 手札3枚 マシンナーズ・フォートレス、 伏せカード1枚
敦人 LP4000 手札3枚 おジャマ・キング 伏せカード1枚


「俺のターン、ドロー！」
…よし、このカードなら！
「俺は機密兵器05 クラッシュを召喚！ クラッシュの効果発動！ このモンスターの召喚に成功したとき、相手の融合モンスター1体の攻撃力を1500ポイントダウンさせ、このターンの間効果を無効にする！」


機密兵器05　クラッシュ（オリジナルカード）
星4/水属性/機械族/1300/守800
①：このカードが「機密兵器」と名のついたカードの効果によって除外されたときに発動する。次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。②：このカードの召喚に成功したときに、相手フィールド上に存在する融合モンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターは攻撃力が1500ポイントダウンし、ターン終了時まで効果は無効化される。


おジャマ・キング 攻撃力3000→1500

「さらにリバースカードオープン！ 通常罠、ギアギアギア！ 効果でデッキから2体のギアギアーノを特殊召喚する。来い…」
「リバースカードオープン。通常罠、おジャマトリオ。君の場に3体のおジャマトークンを特殊召喚する。これでモンスターを特殊召喚することは出来ず、ギアギアギアは不発になる。」

…どこまでも俺の邪魔をする気か。

「バトルだ！ マシンナーズ・フォートレスでおジャマ・キングを攻撃！」

敦人 LP4000→3900

「クラッシュでダイレクトアタック！」

敦人 LP3900→2600

「ぐうっ…」
「どうだ！ 俺はこれでターンエンドだ！」


強志 LP1600 手札3枚 マシンナーズ・フォートレス、機密兵器05 クラッシュ、おジャマトークン3体（守備表示）
敦人 LP2600 手札3枚


「僕のターン、ドロー。僕はおジャマレッドを召喚。おジャマ・レッドの効果発動。手札からおジャマ・ブルーを特殊召喚。手札から装備魔法、再融合を発動！ ライフを800ポイント支払い、墓地のおジャマ・キングを攻撃表示で特殊召喚！」

敦人 LP2600→1800

攻撃表示だと！？ あいつの場には攻撃力0のモンスターが3体。一体どうする気だ…

「僕は手札から通常魔法、おジャマッスル発動！ 僕の場のおジャマ・キング以外のおジャマを破壊して、破壊したモンスターの数×1000ポイント上昇させる。おジャマ・レッド、ブルー、3体のおジャマトークンを破壊して、おジャマ・キングの攻撃力を5000ポイントアップ！」

おジャマ・キング 攻撃力0→5000

「攻撃力…5000だと…」
「さらに、おジャマトークンが破壊されたことにより1体につき300ポイントのダメージを受けてもらうよ。」

強志　LP1600→700

「バトル！ おジャマ・キングでクラッシュを攻撃！」

あの攻撃を食らえば一溜まりもない。くそ…

「手札から工作列車シグナル・レッドの効果発動！ このモンスターを特殊召喚して、相手の攻撃をこのモンスターに移し変える！ さらに、このバトル中、シグナル・レッドは破壊されない。来い、シグナル・レッド！」

おジャマ・キングの突進をシグナル・レッドが受け止める。

「…防がれちゃったか。僕はこれでターンエンド。」


強志 LP1600 手札2枚 マシンナーズ・フォートレス、機密兵器05 クラッシュ、工作列車シグナル・レッド
敦人 LP1800 手札0枚 おジャマ・キング


「俺のターン、ドロー！……！！」

このカードは…
（…俺に、このカードを使いこなせるのか？ …いや、やるしかない。絶対に、勝つんだ！）

「俺はギアギアーノを召喚！ レベル3のギアギアーノとシグナル・レッドでオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！ エクシーズ召喚！ 現れろ、発条機雷ゼンマイン！」
「…エクシーズモンスターか。やっとお出ましだね。」
「まだだ！ 俺は手札からRUM-シークレット・フォース発動！ ランク3のゼンマインをランクアップさせる！ ランクアップ・エクシーズ・チェンジ！ 現れろ、機密兵器δ バミューダ！」


RUM－シークレット・フォース（オリジナルカード）
通常魔法
①：自分フィールドの機械族Ｘモンスター１体を対象として発動できる。ランクが１つ高い「機密兵器」モンスター１体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてＸ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。②：墓地にこのカードが存在する場合、自分フィールド上に表側表示で存在する「機密」と名のついたカード1枚を墓地に送ることで、このカードを手札に加える。


「ランクアップ…いいね、面白い！」

といっても、バミューダではおジャマ・キングを倒すことは出来ない。長引かせる訳にはいかない。このターン中にケリをつけたいが…
（一体どうすれば… そうか！）

「…悪いが、このターンで終わらせてもらうぞ。」
「…へぇ。いいよ。かかってきなよ。」
「墓地のシークレット・フォースの効果発動！ 俺の場のクラッシュを墓地に送り、このカードを手札に加える。再びRUM-シークレット・フォース発動！ バミューダをランクアップ！ ランクアップ・エクシーズ・チェンジ！ 現れろ、暴虐に抗う反逆者の牙よ！ ランク5！ 機密兵器Ω カタストロフ！ 」


機密兵器Ω　カタストロフ（オリジナルカード）
エクシーズモンスター　ランク5/炎属性/機械族/攻2400/守2500
「機密兵器」と名のついたレベル5モンスター×3 ①：X素材を持つこのカードはカードの効果では破壊されない。②：１ターンに１度、このカードのX素材を１つ取り除いて、以下の効果を1つ選択して発動できる。●自分フィールド、もしくは自分の墓地に存在するモンスターを2枚まで除外すろことで、除外した枚数相手フィールド上のカードを選択して除外する。●このカード以外のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体を選択し、装備カードとしてこのカードに装備する。このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターのレベル、もしくはランク×200ポイント上昇する。


俺の場に、灼熱を纏う巨大な兵器が現れた。

「2度のランクアップ…最高だ！ こんなの、初めて見たよ！」
それを見た神谷の表情は、かなり喜んでいるようだった。
「笑ってる場合かよ。カタストロフの効果発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除いて、墓地のクラッシュを除外！ そして、お前の場のおジャマ・キングを除外する！」
カタストロフがクラッシュを動力としてビームを放つ。それはおジャマ・キングを貫き、異次元へと葬り去った。
「バトルだ！ マシンナーズ・フォートレスでダイレクトアタック！」

敦人 LP2600→1000

「……ッ、いいね、面白い。」
「……」

何なんだこいつは…自分がピンチのはずなのに、笑みを崩さない。何か仕掛けてあるのか…？
（…そんなはずはない。あいつには伏せカードもない。それなのに、どうして…）
「どうしたんだい？ 攻撃しないのかい？」
罠か… いや、迷っていてもらちが明かない。一気に決める！

「行け、カタストロフ！ ダイレクトアタックだ！」
カタストロフが神谷の元へと突っ込んでいく。これが決まれば俺の勝ちだ。そのはずなのに…
「……」
カタストロフの攻撃にも、神谷は動じない。そして、カタストロフが、神谷に…


ブーーー……


「何ッ！？」
突然鳴り響いた音と共に、カタストロフが神谷を倒す前に消えていく。
「一体、何が…」
「知らないの？ 今行われているバトルロイヤルは正午に終了する。それと同時にここで行われているすべてのデュエルも強制終了されるんだよ。まあ、僕もついさっき仲間に聞いたんだけどね。」
「そ、そんな…」
「まあよかったじゃないか。君はこうして、この次元の平和を守る一助が出来たんだ。素直に喜べよ。」
「……そうだ、凉花は！？」
「ああ、君のお仲間さん？ 向こうの方にいるんじゃない？ 行ってあげたら？」

……こいつ、何を考えてるんだ？ どうして俺に対して何もせずに、むしろ助けるようなことを？

「…お前、何を企んでいるんだ？」
「企んでるなんて酷いな、僕はただの一兵士に過ぎないよ。もう任務も終わったし、僕は帰るよ。じゃあね。」
「なっ、待て！」
俺の言葉を聞くことなく、神谷は光となってこの場から姿を消した。


「凉花！！」
神谷が消えて、俺はすぐに凉花のところへ向かった。そして、彼女を見つけた、のだが…

「……私は、また……」
「…凉花？」
凉花は地面に座り込み、ボソボソと何かを呟いていた。
「凉花、どうしたんだ！」
「……助けられなかった。また、私は……」
「凉花！ おい凉花！ しっかりしろ！」
凉花の肩を揺らすことで、ようやく彼女は俺に気付いたようだ。
「…あ、強志…」
「凉花！ 一体何があった！」
「……それは……」
彼女は苦悶に歪んだ表情で、小さく呟いた。


「私は、あの子を…望（のぞみ）を、守ることが出来ませんでした……」