02話　居候　作：名無しのゴーレム

そうして、俺は最初に目覚めた場所――すなわち仙波さんの家へと戻ってきた。
道中、俺は仙波さんに彼の家についての疑問を投げかけていた。
「そういえば、仙波さんの家って何か店でもしているんですか？」
「店じゃあないが、塾を経営しているんだ。」
そうだったのか。まああれくらいの広さがあれば、塾としても申し分ないだろう。

そして仙波さんの家兼彼が経営している塾に到着した。
「あれ、お兄さん、家に帰るんじゃなかったの？」
着いて早々、先ほどの少女――仙波さんの娘がニヤニヤしながら俺に聞いてきた。
「こら京子、お客様に対して失礼だろう。」
「だってこの人さっき、『なんとかして帰ってやる』なんて言ってたんだよ？」
「……」
何も言うことが見つからない。というか俺、そんな恥ずかしいこと言っていたのか。
というかそれより、あいつの妙にうまい声まねがムカつく。
「京子、これから彼にはここに泊まってもらおうと思う。別にかまわないな？」
「いいよ～。でも、お母さんの許可はとったの？あと寝る場所とかどうするの？」
「母さんにはさっき許可をもらっておいた。寝る場所はゲスト用の寝室でいいだろう。」
え？なんか俺の知らないうちにどんどん話が進んでいる。しかもなんだって、ゲスト用の寝室なんてものがあるのか、ここ。どんだけでかいんだよ。
「あ、あの…」
さすがにまずいだろそれは、そう思った俺は何か言おうとした。だが…
「ん？ああ、君の部屋は後で案内するから、ちょっと待っていてくれ。」
「違うでしょ、お父さん。えっと、強志さんだっけ。トイレ？案内しようか？」
二人とも違う。俺は首を横に振って京子の案内を断った。そうすると、仙波さんはそそくさと部屋を出て行った。
「今から掃除するみたい。強志さんはここで待っといてだってさ。まあ、そこのソファでも座りなよ。」
言われるがまま近くのソファに座ると、京子が隣に座ってきた。
「ちょ、ちょっと…」
俺がとまどっていると、京子はまたニヤニヤして、
「なに、お兄さん。ひょっとして照れてるの？」
「そ、そんなわけないだろ。」
我ながら情けないぐらいに動揺しながら、少しでもそれを紛らわせるために、とりあえず話を逸らそうとしてみた。
「京子はデュエルするのか？」
「いきなり呼び捨てなんて大胆だねえ、お兄さん。デュエルはするよ。なんたって父さんの娘だからね。」
「…？ おい、それはどういう…」
俺が京子にたずねようとしたそのとき、仙波さんが部屋に戻ってきた。
「部屋の準備ができたよ。荷物を置いてきたらどうだい？」
「あ、ありがとうございます。」
京子にさっきの言葉の意味を聞きたかったが、仙波さんが入ってきてタイミングを失ってしまった。
……実は、仙波さんが戻ってきたら、言ってみようと思っていたことがあった。
俺は意を決して、その思いを仙波さんにぶつけてみた。
「仙波さん、お願いです！俺をここで働かせてください！」
「そんな…君はまだそんな年齢ではないだろう？　それに、働くといっても君は何ができるんだい？」
仙波さんは驚いたようにして、俺に問いかけてきた。それに対して俺は、
「ハートランドでは機械修理屋を営んでいました。他にもどんな雑用でもします。だから…」
「わ、わかったよ。」
俺の熱意が伝わったのか、仙波さんは俺の願いを聞き入れてくれた。だが、京子がそこに口を挟んできた。
「んー、機械修理とかよりも、うちの塾で働くんだったら、一番ほしい技能が一つあるんだよね～。」
「それはなんだ？あまり人にものを教えるのは得意じゃないが。」
「ああ、それは大丈夫。それよりお兄さん、デュエルはできる？」
？ 突然の問いに俺は戸惑った。しかし、
「できる。それがどうかしたか？」
「じゃあ私とデュエルしようよ。お兄さんが勝ったら採用ってのはどう？」
「待て。どうしてそうなるんだよ。」
俺が困惑していると、京子は少し呆れたように俺に言った。
「だってここ、デュエル塾だよ？」