39話 開幕　作：名無しのゴーレム

――ついに迎えた、ジュニアユース選手権当日。


「うわぁ～！！ 本当に大きいね！」
「はい。ここでデュエルするんですね…」
美愛たちも少し興奮しているようだ。
「智、今日は寝坊しなかったな。」
「当たり前だろ。今日は目覚まし時計を5個かけたんだからね。」
「5つも！？ よくそんなに準備出来たね…」
「皆、もうスタジアムに入るよ。」
「「「はい！！」」」


スタジアムの中では、数多くのデュエリストたちが闘志を剥き出しにして闘いへの最後の準備を行っていた。
「あ！ 美愛だ！」
「…本当だ。」
向こうから2人が走ってきた。あれは…
「直人、それに虎太朗！」
2人は美愛のところへ駆けてきた。その後ろから、大江さんが歩いてきた。
「よお、風斗！ お前のところの塾生は全員出場するのか？」
「ああ。正昭こそ、いい弟子を持ったじゃないか。」
「え？ ２人は大江さんの弟子なんですか？」
「言ってなかったか？ デュエル塾を開いているわけじゃないから無所属扱いだけどな。前のときはやられたが、今度はそうはいかないぜ？」
へぇ…、あの２人は確かに強敵だった。そこからさらに強くなったとなれば…
「これは、厳しい戦いになりそうだな。」
「はい。でも、私も負けませんから！」
それからは、京子たちも混ざって出場者たちどうしで歓談に興じていた。


「いよいよだね…」
「そうですね…」
開会式の時間が迫り、俺、仙波さん、大江さん、そして後から来た紗枝さんの4人で観客席に座っていた。
「そういえば、選手宣誓は誰がするんだろうな。」
「やっぱりLDSの生徒じゃないか？」
「あ、風斗さん、京子たちが出てきましたよ。」
紗枝さんの言葉の通り、京子たちが会場内に入って来た。先頭の京子が周りに手を振って進んでいく。…本当に、元気なやつだよな。
「…お、直人たちだ。おーい！ 気張って行けよ！」
無所属の選手たちが出てくると、大江さんが大声で叫んだ。
「…ん？」
選手たちを見ていると、人物の存在に気付いた。
「黒咲…？ どうしてあいつがLDSに？」
「？ 強志君、どうかしたかい？」
「…いえ、何でもありません。」
疑問は残ったままだったが、その後すぐに開会式、そして選手宣誓が始まったため、詳しく確かめることはできなかった。

選手宣誓を任されたのは遊矢君だったようだ。しかし、当の本人は何も聞かされていなかったらしく、突然のことにかなり緊張してしまったようだ。それでも、彼は自分の思い、デュエルで皆を笑顔にしたいという気持ちを伝え、会場から大きな拍手を得たのだった。

「それではさっそく、1回戦の対戦相手の発表と参りましょう！ 選手の皆さんは、それぞれの登録カードをデュエルディスクにセットして下さい！」
どうやら、登録カードをセットすることで、1回戦の対戦相手がわかるようだ。
「皆はどこの選手と当たるんでしょうね…」
「ここからじゃ分からないからね… 後で本人たちに聞くしかないか。」


開会式が終わり、第一試合の準備が始まった。俺たちは京子たちと合流し、それぞれの対戦相手を尋ねていた。
「俺は虎太朗と当たることになりました。」
「何だって！ いきなり正昭の弟子とか…」
「ハッハッハ！ 残念だったな風斗！ さっそく１人脱落というわけだ！」
「…師匠。まだ脱落と決まっては…」
大江さん、すごい自信だな… 当の虎太朗君本人はそうではないようだが…
「他の皆はどうなんだ？」
「私は闘君塾の子とだって。トークンを駆使するデュエルを教えてるらしいよ。」
「私は、武装塾というデュエル塾の生徒が相手になりました。装備魔法を中心としたデュエルを得意としているそうです。」
…それはまた、なんと個性的なところとだな。
「僕は無所属の人が相手に… 東雲 心希（しののめ このみ）っていう女の子みたいですけど…」
無所属か… あまり記録が残らない分、どんな戦術で来るか分からないのが怖いな。
「そうか…、智は？」
「……」
智は話そうとしない。まさか…
「…この通りだよ。」
智が自分のデュエルディスクを見せてきた。そこに写っていたのは…

『播磨 秀』

「…1回戦からかよ。」
さすがに出来すぎではないか？ そう思うほどに目の前に流れる画像は衝撃的なものだった。
「…えっと、日程はどうなってるんだ？」
「俺の試合が今日で、京子と幹治の試合が明日。美愛と智は明後日になってます。」
「そうか… 郁哉の試合は何試合目なんだ？」
「3試合目です。もうすぐ初戦が始まるから、俺たちは選手控え室に行ってきます。」
「ああ、頑張れよ！」
「はい！」
そうして、郁哉と虎太朗君は控え室への方へと向かって行った。


2試合目も終わり、ついに3試合目が始まる。既に両者はフィールド上に入っており、もうすぐ試合が始まるというところだ。
「頑張れ神宮寺君！」
「負けるな虎太朗！」
「……」
2人とも、始まってもいないのに応援で張り合わないで欲しいな…

「それでは、アクションフィールド『風吹く谷―ウィンド・バレー』発動！」

「いよいよか…」
2人を取り囲むように切り立った山々がそびえ立つ。モンスターに乗らなければこの谷を脱出することは難しいだろう。



「…始めよう。」
「ああ。悪いが勝たせて貰うぞ。」
「…それはこっちの台詞だよ。」


「「デュエル！！」」