32話 選手権への道　作：名無しのゴーレム

塾に戻ってすぐに、俺は美愛のデュエルディスクをチェックした。
「…登録、してないな。データも残ってないから、今から登録すれば6連勝で資格を得られるな。」
「本当ですか！」
「ああ、でもいくつか制限があってな、アクションデュエルであること、1戦ごとに違うやつとデュエルすることが条件らしい。」
つまり、最低でも6人とデュエルしなきゃいけないわけだ。
「うちには京子、神宮寺君、伊沢君、播磨君の4人がいるから、全員デュエルしてくれるならあと2人ってところだな。」
「分かりました！ 今から京子たちとデュエルしてきます！」
「落ち着け。京子たちがデュエルしてくれるとは限らないし、ここじゃアクションデュエルできないだろ。どこか場所を探さないとな…」

「話は聞かせてもらった!!」
突然、扉が勢いよく開かれた。そちらの方を見ると、京子がドヤ顔で立っていた。…なんでドヤ顔？
「京子！ いつからそこに？」
「ふふーん、2人にエクシーズモンスターを貰ってきてくれたお礼をしにきたら、何か話し込んでたみたいだからここで話を聞いていたんだよ。」
「…ただの盗み聞きじゃねえか。」
何でそんなに堂々としてるんだよ。
「まあいいじゃん。それよりも、アクションデュエルができる場所を探しているんでしょ？ 私にいい考えがあるよ。」
「？ 考えって何だよ。」
「忘れたわけじゃないよね？ 私が柚子と友達ってこと。」
「おい、まさか…」
「そのまさかだよ！ 遊勝塾でデュエルすればいいんだよ！」

「もしもし、柚子？ ちょっとお願いがあるんだけどさ…」
京子が柚子ちゃんに電話を掛けている。ちなみに俺との会話のすぐのことだ。行動が早すぎるだろ。
「え、そうなんだ。ならその日はどう？ …本当！？ ありがとう！ じゃあね！」
京子が電話を切った。どうやらうまく行ったようだが…
「どうでしたか？」
「それがね、なんと、……遊勝塾の設備、貸してもらえることになったよ！」
「本当ですか！ やった！」
京子と美愛が喜び合っている。まあ、嬉しいことではあるが…
「どうして設備を貸してもらえることになったんだ？ 選手権の直前で練習しなきゃいけないときだろうに…」
「それはね、遊矢君がジュニアユース選手権の出場権を得るために色んなデュエル塾に行って、そこのデュエリストとデュエルするんだって。皆も応援しに行くらしいから、そのときなら使っていいって許可をもらったんだ。」
そうだったのか… というか遊矢君、まだ出場権を持っていなかったのか。
「まあ、それで場所は確保出来たとして、あとはデュエルする相手だな。京子は美愛とデュエルしてくれるのか？」
「もちろんだよ！ きっと他の皆もデュエルしてくれると思うよ！」
もしそうなら、あと2人の対戦相手を探せばいいだけになる。
「でもね、１つだけ美愛に言っておきたいことがあるんだ。」
京子が真面目な顔をして美愛の方を見る。
「？ 何ですか？」
「…私たち全員、わざと負けてあげる気はないからね。」
「…一応、理由を聞いてもいいか？」
「いやさ、当たり前のことなんだけどね、私たちもデュエリストなんだよね。だからさ、デュエリストとしてわざと負けるなんてこと、やっちゃいけないと思うんだ。」
「……」
…デュエリストの誇りというわけか。
「はい、分かりました。全力で来てください！」
「うん、もちろん！」

どうやら話はまとまったようだ。俺は美愛の登録作業を行いながら、わずかに安堵していた。