side凉花：取り戻す為に　作：名無しのゴーレム

…強志と再開してから、もう何日経ったのだろうか。
私は今まで、エクシーズ次元の仲間の一人、黒咲 隼を探していた。そして、ようやく彼を見つけたのであった。



「これで終わりだ！ ライズ・ファルコンでXYZ―ドラゴン・キャノンを攻撃！」
「ぐわぁぁぁ！！」

制服組A LP400→0

隼の一撃を受けて、LDS所属の男性が大きく吹き飛ばされた。そこに、隼はゆっくりと近付いていく。
「ひぃ、な、何だよ…」
「貴様には赤馬 零児を誘き出す餌になってもらう。」
隼がデュエルディスクを操作すると、そこから光が放たれた。
「う、うわぁぁ！！」
光が消えた後には、男性の姿は消え、代わりに１枚のカードがあった。
「隼…」
「…凉花か。何の用だ？」
「LDSへの襲撃、世間でニュースになっていますよ。」
「…ふん。なら作戦通りだ。このまま赤馬 零児が出てくるまで襲撃を続ける。」
…確かに、それは私たちの目的の為には必要なことかもしれない。でも…
「隼、あなたのやっていることはアカデミアの人間と同じです。無関係の一般人をカードにする…そんなこと、許されないことです。」
私の言葉に、隼は小さく嘆息した。
「…許されないこと、か。それなら、お前の『力』を使ったらどうだ？ それを使えば、容易に目的を達成できるだろう。」
「…すみません。この力はまだ完全にコントロールできてはいないんです。それに、『これ』を一般人に使うのは…」
「その力を使う気がないのなら、俺の行動に指図するな。…お前も、やつらに『大切なもの』を奪われたんだろう。それを取り戻すためなら、何だって出来るという強固な意思もないのか。」
隼が冷たい目付きで私を睨む。私は…
「…私は、『あの子』を取り返したいです。でも、そのためなら何だってしてもいいとは思いません。多くの人を犠牲にして助け出しても、あの子はきっと喜んでくれないと思うんです。あなたの妹…瑠璃もそうじゃないですか？」
「ッ…お前が瑠璃を語るな。…もういい。俺は行くぞ。」
隼がこの場から去ろうとする。
「な… 待って下さい！」
「…まだ用があるのか？」
隼は足を止めてこちらを振り返った。
「…やっぱり私は、あなたの行いを許すことはできません。だから、隼がどうしても襲撃を続けると言うなら…」
私は静かにデュエルディスクを隼に向かって構えた。隼もその意味を理解したようだ。
「いいだろう。俺の邪魔をするというのならお前も俺の敵だ。今ここで叩き潰してやる。」
互いにデュエルディスクを構える。もうこうするしかないの…？

「見つけたぞ！ 例の襲撃犯だ！」
デュエルを始めようとしたまさにそのとき、近くから声が聞こえた。恐らくLDSの追っ手だろう。
「チッ…見つかったか…」
「…どうするんですか？」
少しの間を置いた後、隼は答える。
「ここで迎え撃つ。」
「駄目ですよ！ 多分彼らは複数で来ています。全員の相手をするなんて無茶です！」
「無茶だろうが何だろうが、やるしかない。いやならさっさと逃げるんだな。」
「…そんなの、嫌です。もう仲間を失いたくありません。…私も戦います。」
思ったままの私の意思を告げる。それを聞いて、隼は皮肉を込めた笑みを浮かべた。
「ここで戦えば、お前も襲撃犯の一味になるぞ。」
「構いません。仲間を見捨てるよりはずっとマシですから。」
ついに追っ手がこちらにやってきた。
「ようやく見つけたぞ！ お前を拘束する！」
「おい、女もいるぞ。襲撃犯は単独だったんじゃなかったのか？」
「やつと一緒にいるんだ。あいつも襲撃犯に違いない。拘束するぞ。」
数は…4人。これなら何とかなるか…？
彼らがデュエルディスクを構えるのに合わせて、私たちもデュエルディスクを起動させる。
「行くぞ！」
「はい！」




デュエルが終了して、私は隼の方を見た。どうやら向こうも終わったようだ。
「何とかなりましたね。」
「…ふん。俺一人でも倒せていた。」
「そうかもしれませんね。でも、助け合うのが仲間でしょう？」
「……」
隼が歩き去っていく。それを見送った後、私は彼らの方を見た。4人とも倒れたまま意識を失っている。しばらくすれば意識を取り戻すだろう。
（さて、私も立ち去るとしますか。それにしても…）
隼が倒した2人も、カードにされることなく倒れたままになっている。
（隼も少しは考え直してくれたんでしょうか。）
そんなことを考えながら、私はこの場を後にしたのであった。






「…………キヒヒ。」
隠れて私たちのデュエルを見ていた、その影に気付くことなく。