18話　「最終兵器」　作：名無しのゴーレム

「お帰りなさい。何かあったんですか？」
家に着くや否や、美愛が聞いてきた。
「いや、ちょっと買い物しに行ってたんだよ。」
咄嗟に嘘をついてしまった。でも、涼花もあまり他人に聞かれたいことではないと言っていたし、仕方のないことではあるのだが…
「へぇ、そうなんでしたか。」
あっさりと信じてしまった。なんだか少し罪悪感を覚えるな…
「仙波さんはどこに？」
「風斗さんなら塾で仕事をしていますよ。」
「そうか。ありがとう。」
美愛に礼を言い、俺は仙波さんのところへ向かった。

「ああ、強志君じゃないか。用事はもう済んだのかい？」
「はい。それで、お願いがあるのですが…」
「？」
「明後日、だから対抗試合の日、用事ができてしまって試合に行けなくなってしまったんです。」
突然の俺の申し出に、仙波さんはかすかに顔をしかめた。
「…何かあったのかい？」
「…それが、知り合いに会うことができたんです。そして、俺に何が起きてるのかが分かるかもしれないんです。」
「…そうか、分かったよ。こっちは俺がなんとかしておくよ。」
「…！　ありがとうございます！」
「構わないよ、それと対抗試合は1日中行う予定だから、早く用事が終わったら遊勝塾に立ち寄ってくれないか？」
「はい。そうします。」
こうして、俺はなんとか明後日に涼花と会うことができるようになった。

――その日の夜。
俺はベッドに入っても、なかなか寝付けずにいた。その理由はやはり、昼前の一件だろう。
（それにしても、まさか涼花と会うことになるなんてな…）
長い間会っていなかったから忘れていたが、たしかあいつと最初に会ったのは俺がまだ10歳くらいのときだったと思う。そのころの涼花はとんでもなく臆病なやつだった。俺が「姉さん」に連れられてあいつの家に行った時も、決して自分からこちらに近づいてくることはなかった。
「ほら、強志の方がお兄さんだろ。お前の方から行ってやれよ。」
姉さんのその言葉がなければ、きっと俺たちは一言も話すことはなかっただろう。そんな涼花にこんなところで会うなんて思わなかったというのも、あのとき涼花のことを思い出せなかった要因の一つかもしれない。
（…でも、本当に一体何があったんだ？）
結局その日、俺はほとんど眠ることができなかった。


――2日後、対抗試合当日。
「じゃあ俺たちは先に行ってるよ。」
「早く終わらせてこっちに来てね。」
仙波さんたちは遊勝塾へ向かった。…さて、俺も行くか。


そして俺は、約束の場所――2日前に涼花に会ったところに着いた。そこにはすでに涼花と、…誰だ？　スカーフとゴーグルで顔を隠した、いかにも怪しいやつという風の男がいた。
「そいつは？」
俺の問いかけに涼花が答えた。
「この人は黒咲　隼といいます。私と一緒にここまで来た仲間の1人です。」
仲間…？
「今度こそ教えてくれるんだな？　一体何が起きているのか。」
「はい。それは…」
「お前が『最終兵器』を持っているというのは本当なのか？」
唐突に黒咲が俺に尋ねてきた。
「は？　最終兵器って何のことだよ。」
「隼、それは後に…」
「おい、俺とデュエルしろ。お前が最終兵器を持つに相応しいデュエリストかどうか、俺が試してやる。」
「だから何言ってんだよ…」
もうすでに黒咲はデュエルディスクを構えていた。どうしてもやる気らしい。
「…分かったよ。デュエルしてやる。」
「ちょっと、強志まで…」
涼花が止めようとしたが、俺たちが話を聞かないと知り、諦めたようだ。

「「デュエル！」」