37話 逆転への希望　作：名無しのゴーレム

「どうしよう… このままじゃ美愛が負けちゃうよ…」
京子の言葉は、俺たち全員の心の声を代弁していた。
「…逆転にはアクションマジックが必要だ。」
神宮寺君が静かにそう言った。でも…
「でも、あそこにはアクショントラップが…」
「あのアクションフィールド、『真夜中の王宮』には数多のアクショントラップ、そして数枚のアクションマジックがある。そのアクションマジックはどれも、他のアクションフィールドのものとは比べ物にならないほどに強力だ。だから、もし見つけることが出来れば…」
王宮の罠の中から財宝を手に入れる、ということか。

「…美愛、アクションカードだ！ どこかにあるアクションマジックを拾えば逆転できる！」
播磨君が叫ぶ。それを聞いた美愛が周りを見渡している。すでにデュエルの間に目が慣れてきて、アクションカードの位置が何とか見えるようになっていた。
「アクションカードを使うの？ 言っておくけど、ここのアクションマジックの枚数はとんでもなく少ないよ。アクションマジックを見つける前にライフが0になるかもしれない。それでも探すの？」
「……」
美愛がフィールドを駆ける。決意は定まったようだ。
「まずは、くっ…」
拾ったのはアクショントラップ、『雷撃』。効果は…
「きゃぁぁぁ！！」

美愛 LP3050→1525

「ライフが半分になっちゃったか。大外れを引いたね。」
「まだ、まだです…」
2枚目、…これもアクショントラップ、『隠し矢』。

美愛 LP1525→1125

「う、うう…」
美愛は再びアクションカードを手に取った。どうだ…

「あ、あぁぁぁ！！」

美愛 LP1125→125

「…アクショントラップ、『炎の矢』。…もうやめろ。それ以上は体が…」
「まだ、まだ終わっていません… 私は、必ず勝たなきゃいけないんです。そのためなら…」
目の前のアクションカードへと歩いて行く。体はふらついていて、いつ倒れてもおかしくなかった。そんな状態で、美愛はアクションカードを手に取った。
「私が、拾ったカードは…」
美愛が発動させたカード、それは…

「……アクションマジック、『隠された財宝』！ 効果で手札が3枚になるようにドローする！」

「…まさか、本当に見つけて見せるなんて…」
「…私のターン、ドロー。私は通常魔法、影依融合発動。あなたの場にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在することにより、デッキからシャドール・ファルコンとライトロード・ハンター ライコウを融合。融合召喚。来て、エルシャドール・ネフィリム！」
「な… デッキから融合だって！？」
秀君が驚きの声を上げた。
「ネフィリムの効果発動。デッキのシャドール・ドラゴンを墓地に送ります。シャドール・ドラゴンの効果で安全地帯を破壊。さらに、暗躍のドイルド・ドリュースを召喚。効果で墓地のシャドール・ドラゴンを特殊召喚。私はレベル4のドイルド・ドリュースとシャドール・ドラゴンでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。来て、No.39 希望皇 ホープ！」
「融合からのエクシーズ… すごいよ！」
そう無邪気に言う秀君の姿は、奇しくも播磨君のそれと同じものだった。
「まだです。 RUM-ヌメロン・フォース発動！ 私はホープをランクアップさせます。カオスエクシーズ・チェンジ！ 来て、CNo.39 希望皇ホープレイV！」
あれは神宮寺君とのデュエルで見せたエクシーズモンスター。確かに強力なモンスターだが…
「…すごいね。でも、その2体では俺のモンスターは倒せないよ。」
「いえ、これで終わりです。ヌメロン・フォースの発動時、フィールド上のすべてのカードの効果を無効にします。」
「何だって！？」
これでベエルゼの耐性も無効になった。これなら…
「ホープレイVの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除いて、相手モンスターを破壊して、その攻撃力分のダメージを与えます。私はベエルゼを破壊！」
巨大な龍へ向かったホープレイVが、その刃でベエルゼを切り裂く。
「ぐううっ……」

秀 LP3700→400

「バトル。 ネフィリムでスクラップ・デスデーモンを攻撃。」

秀 LP400→300

「ホープレイVでダイレクトアタック！」
「ぐっ、うわぁぁぁ！！」

秀 LP300→0


「はあっ…はあっ…っ」
何とか勝利を掴んだが、度重なるトラップに美愛は疲労しきっていた。
「…はあ。負けたか。」
対する秀君もまさかの敗北に呆然としていた。ともかく、これで…

「終わったか。なら、次は俺の番だな！」
そう言って、沢渡君が観客席からフィールド上に出てきた。
「沢渡…こんな状態の美愛とデュエルするつもりか。」
神宮寺君が呆れた様にして沢渡君に尋ねる。しかし沢渡君はまったく態度を変えなかった。
「ああ、そうだ。そいつがデュエル出来ないなら、神宮寺 郁哉、お前が俺の相手になってもらうぜ。」
…こんな状態の美愛にもう一戦デュエルしろというのは無茶な話だ。となれば、神宮寺君がデュエルするしか…
「…待って、下さい… 私がデュエル、します…」
息も絶え絶えのままで美愛が言う。
「美愛、その体じゃ無理だ。」
「そうだよ、休んだ方がいいよ！」
神宮寺君たちの心配も、美愛に届くことはなかった。
「大丈夫です…、この一戦で、ジュニアユース選手権に出られるんだから…」
…もはや聞く耳持たない、か。
「…そうか。なら行ってこい。でもな、無理だと思ったらすぐに止めさせる。いいな？」
「ちょっと、お兄さん…」
京子が俺の言葉に驚く。そんな俺たちに構うことなく、美愛は再びデュエルの準備を行っていた。
「…ハ、お前、そんな状態でデュエルするつもりか。」
「問題、ありません… 早く始めましょう。」
「…そうかよ。どうなっても知らねえぞ。」

「アクションフィールド、『プレイン・プレーン』発動！」
先ほどのフィールドとは打って変わり、広大な草原が一面に広がる。ここなら美愛の負担も少ないか…？


「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが、地を蹴り、宙を舞い、フィールド上を駆け巡る！」
「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形！ アクション…」


「「デュエル！」」