side郁哉：ただ彼女の為に　作：名無しのゴーレム

「ジュニアユース選手権、3回戦はなんと舞網市すべてを会場とした、バトルロイヤルとなります！ 」

…3回戦はバトルロイヤルか。ちょうどいい。これなら確実にあいつを倒せる。

「…郁哉、やっぱり真っ先にあいつ、東雲 心希を狙うの？」
…智には読まれていたか。
「ああ。あいつは京子を、京子の努力を侮辱した。俺はそれを絶対に許せない。」
「…それは僕も同じなんだけどね。なんなら、僕も手伝おうか？」
「…いや、いい。数であいつに勝っても意味はない。…俺の手で、必ずあいつに京子に謝罪させてやる。」
「…本当、京子のことになると若干キャラ変わるよね。」
「何か言ったか？」
「いいや、何でも。…あのデッキを使うの？」
「…そのつもりだ。これから先の戦いは手を抜いて勝ち抜けるようなものじゃないだろう。矢次先生や秀の言葉もあるしな。…本気で行く。」
「でも郁哉、そうやって前に…」
「2人とも、説明を聞いているんですか？」
美愛に話を遮られてしまった。まあいい、確かにきちんとルールを聞いておかないと思わぬ落とし穴があるかも知れないしな。それからは、司会者からのルール説明に耳を傾けた。


「それではいよいよ、ジュニアユース選手権の3回戦、開始です！」
開始宣言と共に選手たちは走り出す。デュエルをするためには2枚のペンデュラムカードが必要。それを探さなければならないからだ。
「じゃあね郁哉。また後で会おうね！」
「2人とも、頑張りましょうね！」
智、美愛とも別れた。さて、まずはペンデュラムカードを探さなければ…


「…これで2枚目か。」
思ったよりも手間取ってしまった。現在地は…遺跡エリアか。東雲 心希がどこにいるのか分からないのは辛い。美愛たちに尋ねてみるか…


「「デュエル！！」」

…！ どうやら近くでデュエルが始まったらしい。…少し見ていくか。


美愛 LP4000 手札5枚
隼 LP4000 手札5枚


美愛と…LDSのやつのデュエルか。かなり強いらしいが…どうなるんだ？


「私のターン。私はスケール1のPSレッド・デビルとスケール5のPSパープルシールドでペンデュラムスケールをセッティング。これでレベル2から4のモンスターが同時に召喚可能。ペンデュラム召喚。来て、アンブラル・グール、デブリ・ドラゴン！ レベル4のアンブラル・グールとデブリ・ドラゴンでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。来て、キングレムリン！」

さっそくペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚か。

「キングレムリンの効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除いて、デッキからカゲトカゲを手札に加えます。手札からカメンレオンを召喚。カゲトカゲの効果発動、このモンスターを特殊召喚します。私はレベル4のカゲトカゲにレベル4のカメンレオンをチューニング。シンクロ召喚。来て、閃こう竜 スターダスト！」

さらにシンクロ召喚まで…最初から全力というわけか。

「私はこれでターンエンド。」


美愛 LP4000 手札0枚 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSパープルシールド モンスターゾーン キングレムリン、閃こう竜 スターダスト
隼 LP4000 手札5枚


「俺のターン、ドロー。RR-バニシング・レイニアスを召喚。バニシング・レイニアスの効果発動。手札からRR-インペイル・レイニアスを特殊召喚。俺の場にRRと名のついたモンスターが存在することにより、手札からRR-ファジー・レイニアスを特殊召喚。俺はレベル4のバニシング・レイニアス、インペイル・レイニアス、ファジー・レイニアスでオーバーレイ！ 3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚！ 飛来せよ！ ランク4！ RR-ライズ・ファルコン！」

向こうもエクシーズ召喚を…でも攻撃力は100。一体どんな効果が…

「ライズ・ファルコンの効果発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターすべての攻撃力をライズ・ファルコンの攻撃力に加える！」

ライズ・ファルコン 攻撃力100→4900

「ファジー・レイニアスが墓地に送られたことにより、デッキからファジー・レイニアスを手札に加える。バトルだ！ ライズ・ファルコンでスターダストを攻撃！」
「……っ！ アクションマジック、回避！ ライズ・ファルコンの攻撃を無効にします。」
「ライズ・ファルコンは特殊召喚されたモンスターすべてに攻撃できる。スターダストを攻撃！」
「スターダストの効果発動。スターダストの破壊を無効にします。ううっ…」

美愛 LP4000→1600

「カードを2枚セット。俺はこれでターンエンド。ライズ・ファルコンの攻撃力は元に戻る。」

ライズ・ファルコン 攻撃力4900→100

美愛 LP1600 手札0枚 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSパープルシールド モンスターゾーン キングレムリン、閃こう竜 スターダスト
隼 LP4000 手札2枚 RR-ライズ・ファルコン 伏せカード2枚


「私のターン、ドロー。手札から通常魔法、影依融合発動。相手の場にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在することにより、デッキからシャドール・ファルコンと超電磁タートルを融合素材にします。融合召喚。来て、エルシャドール・ネフィリム！」
「……ッ！」

…？今、相手の表情が歪んだ、ように見えたが…

「墓地に送られたシャドール・ファルコンの効果発動。このモンスターを裏側守備表示で特殊召喚します。ネフィリムの効果発動。デッキからシャドール・ドラゴンを墓地に。墓地に送られたシャドール・ドラゴンの効果発動。伏せカードを破壊します。」
「……」
「バトル。キングレムリンでライズ・ファルコンを攻撃。」
「リバースカードオープン。通常罠、RR-レディネス。このターン、俺の場のRRは戦闘では破壊されない。」
「それでも、ダメージは受けてもらいます。」
「墓地のRR-レディネスを除外して、レディネスの効果発動！ このターン、俺が受ける戦闘ダメージを0にする！」

…完全に防ぎきられた。次はどうする？

「ネフィリムでライズ・ファルコンを攻撃。 ネフィリムの効果発動。特殊召喚されたモンスターとバトルする場合、そのモンスターを破壊する。」

よし。戦闘で破壊出来ないなら効果で破壊すればいい。ネフィリムの放った糸がライズ・ファルコンを絡めとり、そのまま破壊してしまった。

「俺の場のRRが効果で破壊されたことにより、墓地のRR-リターンの効果発動！ このカードを除外して、デッキからRR-バニシング・レイニアスを手札に加える。」
「…私はこれでターンエンド。」


美愛 LP1600 手札0枚 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSパープルシールド モンスターゾーン キングレムリン、閃こう竜 スターダスト、エルシャドール・ネフィリム、シャドール・ファルコン（裏側守備表示）
隼 LP4000 手札3枚


「俺のターン、ドロー。RR-バニシング・レイニアスを召喚。俺の場にRRが存在することにより、手札からRR-ファジー・レイニアスを特殊召喚。手札から永続魔法、RR-ネストを発動。ネストの効果発動。デッキからRR-ミミクリー・レイニアスを手札に加える。バニシング・レイニアスの効果発動。手札からRR-ミミクリー・レイニアスを特殊召喚。ミミクリー・レイニアスの効果発動。俺の場のRRのレベルを1つ上げる。」

ミミクリー・レイニアス レベル4→5
バニシング・レイニアス レベル4→5
ファジー・レイニアス レベル4→5

「俺はレベル5のミミクリー・レイニアス、バニシング・レイニアス、ファジー・レイニアスでオーバーレイ！ 3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築！ エクシーズ召喚！ 飛来せよ、RR-ブレイズ・ファルコン！」

さらにエクシーズモンスターを…でも先ほどのモンスターと同様に攻撃力は低い。となると…

「ブレイズ・ファルコンの効果発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除いて、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターすべてを破壊して、破壊したモンスター×500ポイントのダメージを与える！」

マズイ、美愛の場には4体の特殊召喚されたモンスターがいる。全部破壊されたら…

「スターダストの効果発動。ネフィリムの破壊を無効にします。…きゃぁぁぁ！！」

美愛 LP1600→100

「…シャドール・ファルコンが墓地に送られたことにより、このモンスターを裏側守備表示で特殊召喚します。」
「ファジー・レイニアスが墓地に送られたことにより、デッキからファジー・レイニアスを手札に加える。バトルだ！ オーバーレイユニットを持ったブレイズ・ファルコンはダイレクトアタックできる！ 行け、ブレイズ・ファルコン！」
「墓地の超電磁タートルの効果発動！ このカードを除外して、相手のバトルフェイズを終了させます。」

…よし、凌ぎきった。しかし美愛のライフは風前の灯火。逆転は可能なのか…？

「カードを1枚セット。ターンエンド。」

美愛 LP100 手札0枚 ペンデュラムゾーン PSレッド・デビル、PSパープルシールド エルシャドール・ネフィリム、シャドール・ファルコン（裏側守備表示）
隼 LP4000 手札1枚 RR-ブレイズ・ファルコン RR-ネスト 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー。手札から通常魔法、悪夢再び発動。墓地のアンブラル・グール、シャドール・ドラゴンを手札に加えます。再びペンデュラム召喚。来て、アンブラル・グール、シャドール・ドラゴン！ レベル4のアンブラル・グールとシャドール・ドラゴンでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。来て、No.39 希望皇ホープ！」
「…なんだと？」

相手が驚きを見せる。美愛のモンスターに何かあるのか？

「バトル。ネフィリムでブレイズ・ファルコンを攻撃。」
「……」
「希望皇ホープでダイレクトアタック。」

隼 LP4000→1500

「くっ…」

これで相手フィールドには伏せカード1枚のみ。十分に逆転できるはずだ。

「私はこれでターン…」
「いや、このターンで終わりだ！ リバースカードオープン！ 速攻魔法、RUM-ラプターズ・フォース！ 破壊されたブレイズ・ファルコンを特殊召喚して、ランクアップさせる。ランクアップ・エクシーズ・チェンジ！ 現れろ！ ランク6！ RR-レヴォリューション・ファルコン！」

…ランクアップ・エクシーズ・チェンジ。美愛の見せたカオスエクシーズ・チェンジと同じものなのか？

「レヴォリューション・ファルコンの効果発動！このモンスターがRRと名の付いたモンスターを素材にエクシーズ召喚に成功したとき、相手の特殊召喚されたモンスター1体を破壊して、その攻撃力の半分のダメージを与える！ エルシャドール・ネフィリムを破壊！」

レヴォリューション・ファルコンに格納されたミサイルがネフィリムに向けて投下される。

「きゃぁぁぁ！！」

美愛 LP100→0

なっ…爆撃に美愛が巻き込まれている！
「美愛！！」
たまらず2人の前に出てしまった。

「郁哉…どうしてここに…」
「…たまたまだ。大丈夫か？」
「はい。なんとか…あ、黒咲さん、ペンデュラムカードを…」
相手―黒咲の方を見ると、もうこの場を立ち去ろうとしていた。
「…必要ない。」
「え…？」
「おい、バトルロイヤルのルールを知らないのか？ ペンデュラムカードを集めなきゃ…」
「…関係ない。別に、このような戦いに興味はない。」
「は？ 一体何言って…」
そのまま黒咲は立ち去ってしまった。


「ははは…いきなり負けちゃいました。」
「…気にするな。ペンデュラムカードも減ってないんだ。次に勝てばいい。…ところで美愛、東雲 心希を見なかったか？」
「いえ、見ていませんが…郁也、彼女とデュエルする気なんですか？」
「…ああ。あいつには必ず、京子の前で謝罪してもらう。」


「へぇ～、誰が誰に謝罪するって？」
！！ この声、まさか…
「お前…」
「なあに？ 呼ばれた気がしたから来たんだけど、聞き間違いだった？」
「…ハ。何が呼ばれた気がしたから来た、だ。どうせ近くでさっきのデュエルを見ていたんだろう？」
「当ったり～！ 君と同じ様に、そこら辺に隠れて2人のデュエルを覗き見してました～！」
「…おい。俺とデュエルしろ。」
「デュエル？ もしかして同じ塾の2人の…あの子の言葉を借りるなら『敵討ち』ってところ？」
「…そうだ。俺が勝ったら、バトルロイヤルが終わった後に京子に謝ってもらうぞ。」
「う～ん、謝る理由が分からないんだけど、まあいいよ。でもさ、それじゃあ不公平だよね……そうだ！ なら、君が負けたらこの場でバトルロイヤルを棄権してよ！」
「え！？ ちょっと待って下さい。そんな条件、飲めるはずが…」
「…分かった。」
「郁哉！ 本気ですか！？」

美愛が慌てている。だが受けない理由がない。負ける気はないし、なにより…

「…先に教えておいてやるよ。俺が今から使うデッキ、俺はこれを使って、これまで１度も負けたことがないんだ。」
「…へぇ、面白いじゃん。じゃあ始めようか！」


「「デュエル！！」」