31話 繋がる想い　作：名無しのゴーレム

「私のターン…ドロー！」
「スタンバイフェイズ時に、機密兵器01 イグニス、機密兵器05 クラッシュの効果発動。俺たちの場に特殊召喚する。」
これでレベル4のモンスターが3体。俺にできるお膳立てはここまでだ。頼んだぞ、美愛。
「私はチューナーモンスター、ヘル・セキュリティを召喚。レベル4の機密兵器01 イグニスと機密兵器02 ディプロイにレベル1のヘル・セキュリティをチューニング。シンクロ召喚。来て、ミスト・ウォーム！」
レベル9のシンクロモンスター…どんな効果を持っているんだ？
「ミスト・ウォームの効果発動。このモンスターのシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上のカードを3枚まで手札に戻します。私は邪帝ガイウス、炎帝テスタロス、地帝グランマーグを選択します。」
ミスト・ウォームが発生させた霧に包まれ、3体のモンスターは手札に戻っていった。
「嘘…、こんなに簡単に…」
「バトル。ミスト・ウォームでダイレクトアタック。」

直人＆虎太朗 LP3200→700

「これで終わりです。クラッシュでダイレクトアタック。」

直人＆虎太朗 LP700→0



「勝者、美愛、強志ペア！ …おめでとう！」
ふう。これでエクシーズモンスターが手に入る…
「ありがとうございました。２人とも強いんですね！ 」
デュエルが終了して早々、直人君がこちらに話しかけてきた。
「コンビネーションもぴったりだし、最高のタッグって感じだったよ。」
「…たまたまだよ、たまたま。」
「…美愛さんは選手権には出るんですか？」
気付けば虎太朗君も目の前にいた。
選手権？ …ああ、ジュニアユース選手権のことか。
「私ですか？ …出てみたいですけど、出場には条件があるんですよね？」
「まあ、50戦以上で勝率6割以上っていう条件があるけど… まさか、達成してないんですか？」
「美愛はこの町に来てまだ日が浅いんだ。…それにしても、今から50戦は厳しいだろうな…」
「そうですよね…」
美愛が落胆する。仕方のないことなんだが…
「ん？ それならもう一つの条件の方はどうなんだ？」
「もう一つの条件？ 何ですか？」
美愛の問いかけに、大江さんがもったいぶったようにして答えた。

「もう一つの条件、それは……無敗で6連勝することだよ。」
「6連勝…」
6戦くらいなら今からでも十分に達成出来るだろう。でも…
「美愛、お前この前遊矢君に負けてたよな？」
「…あ」
一瞬希望を持った美愛の表情は、すぐに曇ってしまった。…やっちまった。とんでもない罪悪感を覚え、俺が戸惑っていると、大江さんが美愛に話しかけた。
「そもそも、君はジュニアユースに登録しているのか？」
「え？」
「…その様子じゃ何も知らないってところか。自分の家に帰ったら調べてみな。登録は簡単にできるはずだぞ。」
恐らく、美愛は登録していないだろう。となれば…
「もし登録していなければ、今までのデュエルは記録に残ってはいない。つまり今から6連勝すればいいわけだ。」
「え…じゃあ、私、ジュニアユース選手権に出られるんですか？」
美愛はすっかり明るい表情になり、笑顔で俺に聞いてきた。
「まあ、登録していなければそうなるだろうな。」
「やった！ これで京子たちと一緒に選手権に出られます！」
「いや、すっかりはしゃいでるけどよ、6連勝しなけりゃ選手権には出られないんだぜ？」
はしゃぐ美愛に大江さんが呆れたように言う。しかし美愛は、
「大丈夫です。 必ず6連勝します！」
「…そうかい。じゃあ早く戻った方がいいんじゃないか？ 俺もこいつらを鍛え直さなきゃいけないんでな。」
「はい。ありがとうございました。」
美愛が深くお辞儀して、この場を去ろうとする。俺はため息を吐きながら美愛に言った。
「なあ、美愛。俺たちは今日何しに来たんだ？」
「え？ デュエルをしに…」
「違う。エクシーズモンスターを譲って貰いに来たんだろ。そうですよね、大江さん。」
俺が確認をとると、大江さんはきまりが悪いように苦笑いした。
「バレちまったか。このまま帰ってくれるかなって思ったんだがな。」
…やっぱりこの人、狙ってそうしていたのか。

その後、大江さんからエクシーズモンスターのカードを受け取った。
「頑張ってね！」
「…ジュニアユース選手権で会おうね。」
「はい。頑張ります！」
美愛も別れの挨拶を済ませ、俺たちは帝王堂を後にした。



「あの、強志さん…」
「ん？ どうかしたか？」
美愛は少し改まったようにして、俺に言った。
「今日は、ありがとうございました。」
「な、何だよ急に。」
「いえ、さっきのデュエル、強志さんのサポートがあったから勝てたので、そのお礼をと…」
「何言ってんだよ。タッグデュエルなんだから、お互いをサポートするのは当たり前だろ。」
「…そうですよね。でも、ありがとうございました。」
「…どういたしまして。」


こうして、俺たちは塾への帰路に着いたのであった。