20話　明かされる事実　作：名無しのゴーレム

黒咲のとどめの一撃を受けて、俺は大きく吹き飛ばされた。…何だ、この衝撃は？
「強志！　大丈夫ですか！」
倒れ伏している俺の元へ涼花が駆け寄ってくる。それに対して、黒咲は冷静に俺のことを見下ろしていた。
「…この程度か。やはり貴様には最終兵器を使いこなすことは出来ない。」
「…っ、だから何なんだよ最終兵器って！」
俺の叫びも虚しく、黒咲はこの場を去って行った。
「すみません…、隼も気が急いていて…」
涼花が必死に弁明する。
「…別に構わないさ。それよりも、説明してくれるんだよな。何が起きているのか。」
「…はい。」
俺は痛む体を起こして、涼花の話を聞き始めた。


「まずはどこから話しましょうか…」
涼花が考え悩む。
「…じゃあ、なぜここに俺が居るのか、なぜハートランドがどこにもないのかについて説明してもらえるか？」
「そうですね。それでは…」
涼花はまっすぐと俺を見据えて言い放った。
「あなたは、別の次元から来たんです。」

涼花の説明に、俺は終始驚きっぱなしだった。俺や涼花が「エクシーズ次元」というところから来たこと、そして…


「ハートランドは、融合次元からの敵襲によって滅ぼされてしまいました。」


「……」
「…信じられないかもしれませんが、これは事実です。強志は襲撃を受ける前にここに飛ばされてきたんだと思います。」
「…なぜ俺がこの町に飛ばされたのか、涼花には分かるのか？」
「恐らくですが、あなたの持っているそのデッキが原因だと思います。」
「デッキが…？」
どういうことだ？
「分かっているとは思いますが、強志が今使っているデッキは、強志が元々使っていたものではありません。」
「……」
…不思議と、今度は涼花の言葉に驚くことはなかった。恐らく俺自身も以前から違和感があったのだろう。
「なら、俺のデッキはハートランドにあるのか？」
「いえ、私が回収しておきました。ここにあります。」
涼花がデッキを差し出す。俺はそれを受け取り、内容を確認する。
「…黒咲が言っていた、『最終兵器』っていうのは、さっき俺が使ったデッキのことなんだよな。なんでそんな風に呼ばれているんだ？」
「そのデッキが、融合次元に対抗するために作られたものだからです。それを何らかの理由で強志が手に入れてしまったのかと…」
……？　今の話には、ある事実が示されている。
「それじゃあ、以前からお前たちは融合次元について知っていたのか？」
「…はい。それはある人によって、私たちに伝えられたのです。」
「ある人…？　誰なんだよ。」
「その人の名前は…」
涼花は一度間を置き、そして俺に告げた。

「矢次　杏（やつぎ　きょう）。あなたのお姉さんですよ。」


日が段々と沈み始めたころ、俺は遊勝塾にたどり着いた。中に入ってみるとちょうど試合が終わった後のようだった。
「あ～、負けちゃった。…あ、お兄さんだ！」
京子が真っ先に俺に気付き、こちらに走ってきた。
「遅かったね。でもあと1試合あるから、見ていきなよ！」
「…誰がデュエルするんだ？」
「美愛と遊矢君だよ。ほら、もう2人ともスタンバってるよ。」
デュエルフィールドを見てみると、確かに2人がデュエルを始めるところだった。彼らの周りには大小様々な、無数のハートをかたどったようなものがあった。あれがアクションデュエルか…
「なあ、仙波さんはどこにいるんだ？」
「お父さんなら皆と一緒にいるよ。私も今から行くから、付いてきなよ。」


「強志君、間に合ったみたいだね。今から美愛ちゃんと遊矢君がデュエルするんだ。」
京子に付いて行った先には、仙波さんと遊勝塾の塾長の柊さん、それにそれぞれの塾の塾生がいた。
軽い挨拶を済ませて、俺たちは観戦を始めた。
「…そういえば、京子は負けたのか？」
「う～、言わないでよ～。タッグデュエルだったんだけどさ、郁哉と全然息が合わなくて、ボロボロに負けちゃったよ。」
…そうだったのか。まあ、京子と神宮寺君のデッキは相性悪そうだしな…
京子の愚痴を聞きながら、デュエルフィールドに目を向ける。さあ、きっと面白いデュエルになるぞ…

「遊矢さんとデュエルできて、とっても嬉しいです！」
「ハハハ、それはこっちも嬉しいな。でも、お楽しみはこれからだ！」

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが、地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る！」
「見よ、これぞ、デュエルの最強進化系！　アクション…」

「「デュエル！」」