第171話 創造主と明かされる真実　作：ヒラーズ

ハルがいなくなって数分、俺が種保管室に到着した時だった。
「う・・・ん？」
「！」
レンギアが目覚めたのだ。
「大丈夫か？」
俺はレンギアを降ろし、座らせる。
「ごめんなさい・・・あなたは・・・？」
「・・・クォーツとジェム、ハルを保護しているものだ」
その言葉にレンギアは「えっ！？」と言って俺の肩を掴んだ。
「クォーツとジェムは・・・ハルは無事なの！？」
「ああ、ちょっとハルは別行動中だが無事だ」
「・・・」
レンギアは安心したのか・・・壁によしかかり、落ち着いた表情になる。
「そう・・・よかった・・・」
「安心するのはまだ早い。ハルが途中でいなくなった。探すのを手伝ってくれないか？」
レンギアは立ち上がり、俺の体に向かって倒れかかる。
「と言う以前に駄目だったな」
俺はネクロに通信を入れ、状況を説明した。
『なるほどねぇ・・・分かった。保管室に待機してくれ。ついでにハル達もちょっとながら探すよ』
「かたじけない。通信を終了する」

「あなた・・・名は？」
「・・・この姿の時は白皇陸也だ」
「そう・・・百騎兵さんね？」
「！？」
え・・・？何で知ってるんだ！？
「何故、俺の転生時の名を知ってるんだ？」
「ふふふ・・・驚いた？私・・・こう見えて世界を見通す能力があるのよ」
予言能力か！？
「後は・・・何かしら？時間を少し操れるくらいね」
「・・・」
俺はレンギアの能力の説明に対し、沈黙する。
「・・・」
「それと・・・ごめんなさい。あなたにクォーツ達を任せてしまって・・・」
「いや、謝るのは俺の方だ・・・探すのに随分と遅れてしまった。本当に済まない」
しかし、不思議がったのか・・・レンギアの頭上に？が浮かぶ。
「何故？あなたが謝るの？」
「実はだ・・・」














「記憶喪失・・・」
「ああ、お前さんとの記憶がないらしいんだ」
「あるとすれば、創られた直後の記憶ね・・・」
「本当に済まない！」
俺が頭を下げようとすると、レンギアが頭を撫で、優しい声で言った。
「いいわ。クォーツ達が無事ならそれで問題ないわ・・・。むしろ私が悪い方よ」
「・・・」
「じゃあ・・・ついでにハルとセージの正体を教えてあげる」
「え――――」
「この施設を調べた時に偶然見つけた情報よ」
レンギアは懐から1枚の資料を差し出す。
見た目はボロボロだが、目を通したとたん俺の表情が大きく変わった。

ある二人の個体について
ある事件が発生した。
二人の世界樹の子供が興味本心で「世界樹の種」を食べてしまったのだ。
急遽様子を見たが異常がない。だが、驚くべき事があった。






―――――落下しても死亡しないのだ―――――






我々は急いで二人の体を調べ上げ、この二人の個体に名前を付けた。
少年の個体を「ハルバード・リンクス」。
少女の個体を「セージ・ルクセン」と名付け、「完全なる不老不死」と呼ばれるようになった。

「・・・っ！！」
「これが真実よ、残酷だけど」
つまりハルとセージは例外中の例外・・・いや規格外と言ったところか！
「恐らくだけど、あの子達にとって「世界樹の種」は弱点を消すための強化剤のような作用があるんだと思うわ」
「ではマザーの狙いは・・・」
「ハル達を取り込む事ね」
冗談ではないぞ！？自分の生み出した子供をエネルギーに変えようとする気か！！
「まずい・・・ハルが危ない！」
俺は立ち上がり、レンギアを背負い、部屋を出る。
その直後だった。
「おや、陸也君。美人な女性引き連れてるけど・・・彼女がレンギア＝ヴァレスかい？」
「そうだが、今は悠長に話している暇はない。それとセージは？」
「私が目を離している隙にいなくなった。今探してるんだ」
「何ぃ！？」
俺はこのことで完全に察しがついた。策略的に完全にやられたぞ・・・！
「そうね・・・私も・・・手伝うわ」
レンギアは俺から降り、白衣の裏からデュエルディスクを取り出し、腕に装着する。
「巻き込んでしまったのは私のせいよ。責任は・・・取らせて貰うわ！」
俺達はレンギアと共にある場所に向かって進んで行った。
「これからどこに向かうんだい？」
「メインコアがあるルームよ！たぶんそこにハルとセージがいるわ！」
「ついでにマザーもか・・・！！」
俺達は階段を登り、廊下を走る。
そして・・・。










「ここよ！」
「メインコア管理室・・・」
「行こう」
俺は鉄の扉を蹴破り、中に入る。
そこにはハルとセージの姿があった。
しかしその中央に女性のような何かが立っていた。
物音に気づいたのか、ハルとセージは振り向き、言う。
「陸也さん、ネクロさん、レンギアさん・・・！」
「ハル！セージ！そいつから離れろ！！」
俺が声を上げたとたん、俺の目の前に一筋の雷が降り注いだ。
「な・・・！？」
「君が・・・マザーかい？」
ネクロがへらへらと笑いながら中央の女性に近寄る。
しかし、近づく途中、謎の力に弾かれる。
「！？」
『無駄よ・・・、私には近寄れない・・・ハルとセージをここまで連れてきたのは感謝するわ』
「・・・っ！！」
口は動いてないが、何やら特殊なスピーカーで喋っているようだな。
『さぁ・・・おいで二人共・・・』
その言葉に対しレンギアがハルとセージを取り押さえ、説得する。
「駄目！！その声に騙されないで！その人はあなたたちの母じゃないわ！」
『余計な口は叩かないでちょうだい・・・』
マザーはレンギアに指をさし、衝撃波をぶつけ、壁に叩きつける。
「レンギア！」
俺はマザーに向かって走り近づくが・・・。
『邪魔よ・・・【ジオダイン（上級電撃魔法）】！』
俺の頭上に巨大な雷が直撃する。
「があああっ！！」
予想以上の痛み、耐えれる方が不思議なくらいだ・・・。
「「陸也さん！！」」
ハルとセージが同時に叫ぶが・・・。
『大丈夫・・・死んでないわ。さぁおいで・・・』
マザーの声で足を進まされる。
「ちぃ・・・」

どうすればいい！どうすれば近づける・・・！！








次回、対立
※タイトルが変わる可能性があります。