第176話 悪神の居城　作：ヒラーズ

最後の夢編　開幕








レンギアから情報を聞いて2日、俺はある場所に向かってクロノス・ノアを飛ばしていた。
場所はドイツの「ベルリン」、この世界ではまだソ連が存在し、未だ紛争が続いてるようだ。正直・・・歴史を疑いたくなる。
「きゅ（この辺の施設か？）」
「そうよ、元々はソ連との戦争で使用する施設だけど、それは表向きで、裏では機械の神が計画していた行いよ。最も、この世界の歴史で独と露の戦争は人間誰一人も戦死してないわ」
なるほど・・・不正規な戦争（ブラックオプス）を行ってるのか。
「ふきゅ（何でブラックオプスなんて行っているんだ？人員削除狙いなら本気でやればいいのに）」
「それも「神の意志」だからよ、甚だしいにもほどがあるわよね・・・あの機械は・・・！」
まぁ怒りは抑えとけ、ここぞという時に発散すればいいんだしな。
「なぁ、百騎兵。ぶらっくおぷすって何だ？」
「ふきゅ（軍事用語で「黒い軍事行動」と言う意味だ。不正をした戦争や暗殺などといった作戦もこの言葉が用いられる。俺はブラッドワークスと呼んでいるがな。分かったか？）」
トウマはうなずき、答える。
「うん！分からん！！」
戦争を知らない奴がよく言う言葉を言うようになったなトウマ。
まぁ、天使だから理解はせんだろうな。教えた俺が阿呆だった。
「それで、ベルリンのどこなんですか？」
「あそこの奇妙なマークの建物が見えない？ナチスっぽい勲章のマークが」
俺はその建物をモニターに映す。
見た目は4階建てのマンションだが・・・屋上にヘリポートのような所もある。
うん、確実に怪しいな。
「・・・（あそこにあるのか？）」
「ええ、あの神はここから動けないはずよ」
俺は船をホバリングさせ、ヘリポートの上に浮かせた。本来この大きさならこの建物が潰れてしまうが、この船が特殊だからまだ大丈夫。
「きゅ（よし、お前さんら。組を決めるぞ）」
俺は皆を集め、船に残る組と侵入する組を決めに入る。
全員で行くのもありだが、ならべくは被害を少なくしたい。
30分間話し合い、組が決まった。
残留組：シャル、リュウカ、ジェム、ファルディア、セージ、ラン。
潜入組：百騎兵、クォーツ、トウマ、レンギア、ルナ、ハル。

以上がメンバーである。
「いよいよって感じだな」
「そうね」
「けど・・・ぼくの能力では敵影らしきものはなかったけど・・・」
「じゃあ・・・あっけなく突破できるんですか・・・？」
「まぁ、相手は機械にゃ。何かがあればこの刀でバラバラに斬るにゃ」
言ってることが恐ろしいんだが・・・ルナ。
「きゅ（行くぞ）」
俺達は船から降り、施設内に突入した。















それから15分経たずで俺達は1階の管理室までたどり着いた。
中は誰もおらず、ただただ書類が散らかっているだけだった。
「ここに地下への入り口があるわ、確か・・・ここね」
そう言ってレンギアは机の裏の装置を弄る。
カチッと音が聞こえ、本棚が動く。
その先に地下への入り口が・・・いや、地獄への入り口があった。
「いい？ここまで来たらもう戻るのは無理よ、あの時の私は普通に出られたけど・・・今度は上手くいかないわ」
「きゅ（もとより覚悟はできている）」
「うん！」
「・・・ぼくも・・・です！」
「俺もだぜ！さっさと世界救って、終わりにしようぜ！！」
「私もにゃ！」
上手くいけばだがな。
「じゃあ・・・行くわよ！」
「うにぇ！（了解！）」
俺達は地下へと進み、階段を降りる。
少しずつ辺りは暗くなっているものの、俺の頭の灯がライトの代わりを果たしているのか、気にせずに階を降りる。
そして俺達は地下2階への扉の前に立った。










「ここが地獄の入り口か？」
「うう・・・何かここ熱いよ・・・」
「たぶん・・・熱系列の機械実験場だと思う・・・です」
「当たり前じゃない、ここの先はコンピューター管理室と書いて「王座の間」よ。特にこの世界の全ての電力はここから来てるわ」
なるほど、人間の生活で重宝する電気はここで管理されてるのか。
「きゅ（開くか？）」
「それだけど・・・セキュリティが全て解除されてるみたいなの・・・おかしいわ」
確かにそれはおかしいな。普通ならロックされているはずなのに、何で開いてるんだ？
「・・・（俺が先行する、後についてこい）」
俺は扉を開け、中に入る。
中は・・・沢山の機械が並べられていた。
部屋自体は明るく、機械が多く作動している事が熱でよく解る。
熱さは機械の処理によるロードなどで熱がこもっているようだ。
「この部屋のどこかに親玉がいるのかよ・・・辛ぇな」
「いや・・・ここにたぶん、奥に続く通路がある・・・ぼく達が居るところからすごく近い」
俺は辺りの機械を触り、仕掛けがないか探す。
すると・・・。
「もきゅ？（うん？）」
俺が最後に触れた機械だけ、幻で出来ている偽物だった。
「ヴァイ！（ここだ！）」
俺は皆を呼び、見つけた場所に集まる。
「ここだ！ぼくの能力に載っていた通りだ！」
俺達はさらに奥に進むと、謎に豪華な扉の前に着く。
見た目は黄金の扉だが、辺りは警備装置で固められた扉、まさにここに居るぞみたいな感じを出させている・・・。
「きゅ（セキュリティは？）」
「全部・・・解除済みのようね」
「その分、開けるのに時間がかかりそうにゃ。私が壊して開けてやるにゃ」
ルナは名刀を鞘から抜き、扉を切り裂く。
扉は無残にも破壊され、中が丸見えの状態となった。
中はたった一つの巨大な円柱体のような機械。
中に入ったとたん、レンギアは爆弾を取り出し、投げる。
「先ずはこれよ！」
爆弾が爆発し、辺りは黒焦げになるも、機体そのものは無傷であった。

「ふきゅ・・・（これが「異界の夢」か・・・）」
「早く破壊しようぜ」
その時だった。
【破壊する？我をか？】

「「「「！？」」」」
「へ？」
「・・・っ！」
突如円柱の機械が作動し、辺りが明るくなる。
そして肉声のような声で俺達に話しかけた。
「我の名は・・・「異界の夢」、いわばこの世界の神だ」
それを聞いたトウマは驚き、腰を抜かす。
「巨大な機械が・・・喋った！？」
「ククク・・・無理はない。我もまた感情持つ機械、気にする事はない。それと、よく体の一部と裏切り者を連れてきてくれた。感謝しているぞ」
感謝だと・・・？
「我を倒しに来た度胸は褒めよう、だが・・・貴様達の旅はここまでだ」
「それは違うわね、異界の夢！今度は逃げずに・・・戦うわ！！」
その言葉に異界の夢が見下すかのようにレンギアに言った。
「愚かが・・・誰も我を倒すことなど出来ぬ」
そう言った瞬間、辺りの機械は取り除かれ、いつの間にか俺達は空の上にいた。
「！」
「うおっ！？」
「うわわっ！」
足場はあるものの、そんなに広くない。
広さは大体2畳半の部屋当然で、下を覗くとクロノス・ノアが見えた。
「いつの間にここに居たんだ俺達？」
「恐らく・・・神の奇跡だと思う」
神の・・・奇跡・・・か、くだらん。
「ふむ・・・そうだな、その姿では喋り辛いだろう」
異界の夢が輝き出した瞬間だった。
「！」
「百騎兵！体が・・・！」
「青く燃え始めた！？」
俺の体が突然青く燃え始め、自然に俺を前世の姿に戻した。
「どうだ？転生した体を捨て、前世の姿に戻った感想は？これで貴様は転生者ではなく、白き邪神の白皇陸也だ」
俺は体をくまなく確認し、完全に前世の姿に戻った事を確認し、言い返した。
「悪くない・・・だがこの姿でも、この世界の俺の名は「百騎兵」だ」
「ほう？嬉しくないだと？」
「お前さんの悪事は全てレンギアから聞いた。お前が今までの元凶とはな。今思えば、俺が転生した原因はお前さんにあったのかもな。そうでもなければ俺はここまで来られない」
「・・・証拠はあるのか？」
あるも何も、お前さんがやったんだろ。
「お前さん、覚えてないのか？時空間の中で俺とやり合ったこと」
異界の夢は沈黙し、何かを思い出したかのような言葉を俺に投げた。
「ああ・・・あの船にいた追放者か、確かにあの飛龍を貴様に押しつけたのは我だ。まさか覚えておるとはな」
嗚呼・・・やはりか・・・。
そう、俺は全てを思い出したのだった。
それがこの記憶である。
1：追放世界に帰還する途中、異界の夢の作った「ドリーム・ドラグーン」に襲われ、船が損傷。
2：試作段階の爆薬「強制転生爆弾」が誤爆し、転生。飛龍の攻撃で引火し爆発した。
3：家族はいたが、追放者になる以前の世界で全員他界。父親は友軍に見捨てられ戦死、母親は魔女を捨て人間として生涯を終えた。兄妹はいない。

「これで・・・俺はお前さんを倒す理由ができた。一体どれだけの異世界の人間を殺め、どれだけ儚き夢を持つ連中の願いを叶えてきた？どれだけ輝く命を滅して人類に生き方を軽視させてきた？」
「ひゃ・・・百騎兵さん？」
「お前さんには多くの罪状が来ている。それも死刑は免れんくらいにな！」
俺はディスクを構え、言う。
「いくぞ！全てを・・・終わらせるぞ！！」
そう言ったとたんにクォーツ達もディスクを構え、デッキをセットする。
「バトルロワイヤルルールで行う！」
ルールを決めた時だった。
突然異界の夢が変形し始め、巨大な天使の姿となる。
見た目は超巨大な金属でできた3枚の翼を持つ天使のような姿をしている方が正しいのだろうか？顔の部分には模様のようなものが描かれている。
「我が統制に刃向かう転生者よ・・・破滅せよ！」

「「デュエル！」」







次回、悪神との決戦①
※タイトルが変わる可能性と修正する可能性があります。