第168話 さらなる結果　作：ヒラーズ

「さて、何が記載されているやら・・・」
「言い忘れてたけど、どうやら1ページだけ抜かれてるようなんだ」
抜かれてる？とすれば誰かが抜き取ったのか？
「どのページだ？」
「ほら、「世界緑化計画」の最終目標のページだけだよ」
ホントだ、抜かれてる。
相当知られて欲しくないものらしいな。
「・・・それ以外は？」
「特にないよ、ほぼ復元済みだ。感謝したまえ」
あーはいはい、ありがとよ。
「じゃあ、読むか・・・」

俺とネクロは虫食いのページをめくり、黙読する。

さらなる結果
言い忘れていたが、「世界樹の子供」は習得した能力の中で唯一固定された能力がある。まず1つ、枯れた植物に触れるとその植物が活力を取り戻し、復活する能力だ。枯れてしまったアサガオに1人の個体が触れたとたんにアサガオが活力を取り戻し、再び花が咲いた。枯れ木に触れさせるとたちまち桜の木になったりもした。さらに植物すらない地面に触れると、半径50ｍ先のものが全て緑化していったのだ。
主任はこの奇跡を見て「これなら我々の悲願を果たせれる！」と喜んだ。
2つ、産まれた時から汚染されている空間でも平気でいるということ。
以前にも言ったとおりだ、毒に対する完全耐性を持っている。
3つ、落下など強い衝撃じゃないと絶命しないこと。
今まで多くの実験に対してこのことが怪しく思ってた。苦手であった虫を寄せ付けたりして精神を壊そうとしても壊れないし、火で焼いたり、刃物で斬ってもしても絶命しなし、酸をかけても溶けない。
強い衝撃・・・落下以外は何か重いの物をぶつけるとかだろう。

「うわー・・・酷いなぁ・・・子供に容赦ないよこれ」
「・・・まぁ実験だからな、酷いも何もこうしなくちゃ科学は成り立たない」
ﾍﾟﾗﾘ

「ん？「コミュニケーションや習性について」？動物じゃあるまいし、何を観察してたんだ？」

コミュニケーションについて
世界樹の子供は、同族以外とのコミュニケーションは極めて高いが、同族とはあまり仲良くしたがらず、まるで仲が悪い。希に兄妹のように接している個体もいるが、大方不明となっている。喧嘩こそしないものの、同族以外のデュエル時は普通に楽しんで遊んでいるが、いざ同族とデュエルとなると人が変わったかのように言葉と態度が変わる。

習性、また癖など
世界樹の子供は能力や術などを発動する際、空を見る癖がある。
何かの動作なのだろうか？
就寝時、個体によって好む場所が違うらしい。
人にくっついていたり、普通にベッドで寝ていたり。
水の中で寝ていたりなど様々なケースが見られた。

「なるほどねぇ・・・監視付きの実験なんだ、プライバシーもないね」
「最後のページは何かの書き残しのようだな・・・」

書き残し
何という事だ・・・この地球に4つの隕石が降ってきたと言う報道を聞いた。
幸いこの研究所は核シェルター並に丈夫だが。アメリカにあった研究所が完全壊滅し汚染が広がったという情報も出た。イギリスはなくなり、日本もそれなりに悲惨な状況となっている・・・はっきり言って最悪だ。もう少しで計画が完了まで近づいているに限って神の裁きか。
だが我々は諦めない、世界樹の中にある「マザー」が生きている限りは・・・。

「・・・ここで終わっているな」
「マザー・・・ねぇ・・・」
恐らく、ハル達を生み出した母のような存在・・・。
「マザー・コンピューター（ブレイン）か・・・」
「それしかないねぇ・・・さらに面白さが増すばかりだ」
しかし、これで大方「世界樹の子供」の正体が理解できた。
後は直接確かめるしかないか・・・。それに仲が悪かったのか・・・どおりでいきなりデュエルをし始めるわけだ。

「で？どうするんだい？この真実、ハル君達に話すのかい？」
「いや、あえて黙っておく。真実を知っているのは俺とネクロで十分さ」
知らぬが仏という言葉もあれば触らぬ神に祟りなしという事もある。
「けど、いずれあの子らは悲惨な運命を辿ることになるんだよ？」
「それならそれでいいさ、自分の歩んだ道に後悔さえなければそれでいい。あいつらはまだ若いし、幼い。知るべき日は近くとも理解はできんさ」
「だといいけどねぇ・・・」
確かにネクロの言う通り、近いうちにハル達は悲惨な真実を直視してしまうだろう。だがそれは今知るべきものではない。

「・・・もうこんな時間か、ハル達は寝ているだろうか？」
「いや、心配ないよ。きっと寝ているだろうさ」
そうだと願いたい・・・。














翌日・・・。
「陸也さん、朝だよ！」
「う・・・ん？」
俺は目をこすり、目覚める。
ハルが起こしに来てくれたんだろうか？それとも・・・。
「どうした・・・？腹減ってるのか？」
「ううん、朝食ならもう済ませてあります」
自分で作ったのか、ファイルの通りだな。
知らないうちに知恵を身につけている。
「それと・・・話が・・・」
「？」










「で？話とは？」
「・・・」


次回、到着、世界樹
※タイトルが変わる可能性があります。