第117話　夜会の危機　作：ヒラーズ

トウマとのデュエルから数分、俺はなぜ勝負を仕掛けてきたのかの理由を聞くと単純な答えが出た。
俺自身に興味があったのかそれで勝負を仕掛けたらしい・・・実に迷惑な事だ。
今後の事を聞くと、行く当てがないらしい・・・何のために地上に降りてきたんだ？この天使は・・・。
だが、俺も自身の欲に逆らえなかったのか、こんな事を言ってしまった・・・。
「ふきゅ・・・（行く所がないなら、俺と行くか？）」
「マジか！このままどこか行ったらどうしようと思ってたけど、よかった」
どうやら彼にとっては都合が良かったみたいだ。
こうして俺は早くも新しい仲間であり転生者のトウマを加え、行動範囲がさらに広くなった。
「きゅ・・・（じゃあ、まず拠点を探すか）」
「そうですね・・・そうじゃなきゃ始まらないですし・・・」
「マスター、まずはこの都市のマップを見つけるのが良いかと・・・」
ああ、それならシャルが持ってる。
「魔法生物、人造人間、天使、転生者に探偵、すごい一行になりましたね」
「ふきゅ（それな！）」
「ボクはもう疲れたよ、早く休める所探そうよ」
「早すぎ」
旅は道連れ世は情け・・・まさにこのことだったとはな。
昔の人が考えた事は正直恐ろしいな。
「きゅ・・・（しょうがない、探す前にどこかで休むぞ）」
「「「賛成！」」」
お前さんらが言うのかよ、リュウカ、トウマ、シャル・・・。
「楽しそうですね」
「・・・ですね、クォーツ様」















俺達が拠点を探している最中、ノイエとハナコは夜会会場『ヴァルプルギス』に来ていた。
「何があったんですか・・・これは」
「嘘・・・塔の中が造り変えられてる！？」
中は立派なデュエル会場のように変わり果て、辺りはまるで賭博場。
「ハナコ達がいない間、何があったの！？」
「一体誰がこんな事を」
そう言っていると、1人の新人魔女がハナコ達に近づく。
「ヨウコソ、『デュエル会場1階　受付広場』へ」
新人魔女の目はまるで何者かに操られたかのような、暗い目つきをし、その中で笑っていた。
「はぁ？ここは夜会会場。デュエルする場所じゃないよ？」
「違いますよ？ここはデュエル会場です。間違えているのはお客様なのでは？」
その事にノイエは人格を変え話す。
「ふざけるのも大概にせい！！貴様の頭は石か！」
「いいえ。石はあなたたちでは？」
ノイエはぬぅっと言って引き下がるが、ハナコはそれに首を突っ込み、言う。
「じゃあさ、なんでデュエル大会を開くの？まだ先じゃない？」
その言葉に新人魔女がにっこり笑いながら言う。
「今年は魔女だけではなく、この国外からの挑戦者も集めるので、だいぶ時間がかかっているのです。最低でも後5日間かかります。勿論、別の世界にも招待状を沢山ばらまいていますので、すぐに集まるでしょう」
招待状、普通なら大会以外パーティーや舞踏会などがある際、配られるものだが、この言葉、態度に二人はどん引きする。
「・・・優勝賞品は？」
「よく聞いてくれました！賞品はなんと、一時的に前世の姿に戻れる魔法の鏡『前世戻しの鏡』です」
賞品の名を聞いたノイエは息を呑んだ。
「それは・・・この国の宝ではないか！他者に売るとは何事だ！！」
「あれは転生者以外の者には意を成さない物・・・なるほど・・・アナベルが警戒する訳ね」
「ふふっ・・・ご心配なく、ちゃんとあなた方も参加できるようにしますので、ちゃーんと待っててください」
その不気味な笑いに、二人は互いを見つめ、言う。
「おかしい・・・ハナコの占い通りになってしまうとはな」
「これ・・・むきゅちゃんの力が必要になるかも・・・」
互いの顔色が真っ青になり、悪い事が起きる前に二人は会場から立ち去るのであった。






しばらくしてマデュラシティの裏路地前。
「ハナコ、今の我々では太刀打ちできん。認めたくないが百騎兵達と再び組む必要がある」
「・・・やっぱり？」
「・・・私が百騎兵達をヴァルプルギスに呼ぶ、お前とアナベルは、活動拠点を確保してくれ、恐らく百騎兵（奴）は大阪に張られた結界に苦戦しているはずだ」
「わかった、任せるよ！」
ハナコは箒に乗り、空高く飛んでいった。


「・・・ハナコの奴め、どさくさに紛れて嫌がらせをしおったな・・・私の箒がないではないか・・・まあいい」
（それにしても早すぎる、マナイバの情報とは全く違う事が起きている・・・一体何が起こった？まさか・・・異界のカラクリが動いたと言うのか・・・）












ノイエ達が行動する同時刻、俺達はカフェで休憩を満喫していた。
「ふきゅ（なぁ、シャル）」
「何ですか？」
「・・・（やたらと魔女などの目撃が相次いでいるが、魔女狩りは起きないのか？）」
「あー・・・それはですね・・・」
やけに言いづらそうだな。何があったんだ？
「実のところ、魔女狩りは昔あったんですけど・・・最近になって魔女が増え続けてきて、キリがないから魔女狩りはなくなったんですよ」
要するに異端審問官がいないわけね。




次回、ノイエの願い

※タイトルが変わる可能性があります。