第118話　過去とノイエの願い事　作：ヒラーズ

俺達が拠点探しをしていると、トウマがいきなり立ち止まる。
「？何かバカでかい力が俺達の方に近寄ってこないか？」
どうやらトウマが何か強い力を感じ取ったようだ。
「もきゅ？（どんな力だ？）」
「なんだろうか・・・空間をねじ曲げるような力だ」
ノイエか？ハナコではないしなぁ・・・。
「けど、近くじゃないからほっといても良いかもしれないな」
そこまで分かるのか、ある意味才能にありふれてるな。
「ジェムから聞いたけど、船を取り戻すために動いてるんだってな。どんな船なんだ？」
うーん・・・名を聞いたところでたいしてかっこよくないぞ？
「・・・」
「クロノス・ノア号。すぐに壊れそうな名の船だな」
それだけは言われたくなかったな。
「その名はどこから来たんだ？」
「・・・ぼくもそれを聞きたかったです・・・」
「右に同じく・・・」
「私もです」
ええぇ・・・お前さんらも？
「きゅ・・・（そうだな・・・）」

回想－

あれは転生前の俺が7歳の頃だ。
幼い俺は早く自立しようと頑張っていた頃、ある港町まで徒歩で向かっていた。
親の手伝いをしてお小遣いを稼いでいたおかげか、買い物やタクシーぐらいに出せる金銭は余裕に持ってた。
「早く自立するためにあちこち行って、知識を得るぞ！」
当時の俺はまだロクに学校へ通ってない、不良だったからな。
あまり知識を持ってないからよく道に迷ってたよ。
「えーと・・・どっちから来たんだっけ？」
ふらりふらりと町を歩いていると、目の前に大きな客船があってな。
丁度、親から乗船券を貰ってたから日帰りの暇つぶしとして、おもしろ半分で乗船したんだ。
「へぇ・・・ここが最新の豪華客船『クロノス・ノア・デルテリア』か・・・」
中に入った時の光景は見事なもんだったな。

オペラハウスのような空間とエレベーターが二つ搭載された大広間。

昼間は空いてるものの夜になれば賑わうであろうカジノエリア。

よりよい景色が見られるテラスに、ＶìＰルームのような広さを持つ客室。
どれもよかったよ。
まぁ、家に帰った後はこっぴどく叱られたがね。

回想終了－


「へぇ・・・あるじさまの船の名前って客船の名から来てたんだ・・・」
「デルテリアって何？」
「きゅ・・・（魔法用語で『癒やしの祝福』と言うんだ）」
「けど最新型の客船なんだろ？パクリじゃないか？」
言ってくると思った。
「きゅ・・・（俺が15歳の頃にナチ公の残党とイタリアを住処にしていた教団組織（テンプル騎士団）のくだらない抗争で沈められたんだ。皮肉だがな）」
その事にクォーツ達が沈黙する。
「・・・沈んじゃったんだ」
「しかもナチス残党にテンプル騎士団の抗争で・・・」
「なんかごめん、悪い事言っちまったな」
（百騎兵の過去って全部物騒だな・・・どんな人生歩んできたんだ？）
「ちなみにあるじさまのいた世界って、そんなに戦争があったの？」
「・・・（あったにはあった。丁度クォーツと同じ歳の子供なんて皆ライフルやランチャー、マシンガンなどを平気で持ち歩くくらい治安が悪かったからな。露助（ロシア）や米英は核兵器を25個持ってたぞ）」
その事を聞いたリュウカとトウマは顔を真っ青にする。
「「か・・・核兵器が25個！？」」
まぁ、全面核戦争になりかけてたし、戦争を知らん子供には少し早すぎたかもな。
「・・・核兵器が世界各地に25個ずつ配備されてたと言う可能性はあったんですか？マスター」
「・・・（そう言う情報もよく入ってたな）」
俺の話をよく聞きすぎてしまったクォーツ達は思った。
（戦争がない時代に生まれてよかった・・・）
「きゅ・・・（まぁ、こんな感じだ）」
「何か・・・あるじさまって色々な事経験してるんですね・・・」
何事も経験がものを言う、そう言う事を知ってたまでだ。
そうやって俺達が雑談をしていると・・・・。







「百騎兵さん、そこにいるんですか？」



「！」
「！」
「もきゅ？」
「「「？」」」
俺達は声がした方に振り向くと、そこにはノイエがいた。
「お久しぶりですね、皆さん」
「誰だ？この人？」
トウマの言葉にノイエが反応し、自己紹介する。
「新しい転生者ですね？私はノイエ・フロンタル、空間の魔女です」
「ま・・・魔女ぉ！？」
（やべぇ・・・本物かよ！）
「いきなりなんですが、私の望みを叶えてくれないでしょうか？」
珍しい、蒼羽に続きノイエが願い事なんて。
「・・・（聞こう）」
「では、軽いお話を・・・」



















「きゅ・・・（なるほど、魔女の都『ヴァルプルギス』に異変を解決して欲しいと？）」
「も・・・勿論、手ぶらとは言ってません！ちゃんとお礼もありますよ」
「・・・（あるのはいいが、受けるも受けないも俺の自由だ。分かるな？）」
ノイエは少し後ずさりするも、交渉を成功させるためなのか、泣きかける。
「ふきゅ・・・（どうする？）」
「ぼくは・・・叶えてあげた方がいいと思います・・・」
「ボクは百騎兵の判断に任せる」
「右に同じく」
「俺も叶えてあげた方がいいと思う」
「・・・マスターの判断にお任せします」
じゃあ、決まりだな。
「きゅ・・・（ノイエ、お前さんの願いを叶えてやる）」
それを聞いてノイエの表情は明るくなった。
「本当ですか！！ありがとうございます！」
こうして俺達はノイエに魔女の都に案内されるのであった。



次回、突入するは夜会編

※タイトルが変わる可能性があります。