第135話 仮説　作：ヒラーズ

「話す前に聞きたい、何故君は前世の姿でいるんだ？」
「知らん、ここに来たら前世の姿に戻ったんだ。どこかに鏡を所持している奴がうろついてんだろ」
ネクロは「ふーん」と言って近くのベンチに座る。今も思うが、すごいムカつく。
「立ち話も何だ、君も座ったらどうだい？」
「気にせず、話してくれ」
「後1つ、何で聞くのは君だけなんだい？普通は仲間の2～3人じゃないかね？」
まぁ、それもよかったんだが・・・この事件はあまりにも危険すぎる。
「現段階でお前さんの話を聞いていたとしてもあいつらは早々信じるような者じゃない。だから俺だけだ」
「そう・・・じゃあ話そう」
「・・・」
正直、ネクロから出てくる情報はとんでもないものばかりだ。
下手すると黒幕の情報を持っているかも知れん。
これは・・・失敗できない！
「まず、君の転生した世界の話をしよう。君が現存在している世界の地図はデジタルマップで見たのと現地で手に入れた地図とは地形が全く違う。北海道がある地形が海だけになっていたり、沖縄なんて島すらない。あったのは岩ぐらいだったし正直、何が何だか分からなかったよ」
北海道と沖縄が地図から消滅してるだと・・・！？
「他にも調べては驚きの歴史を見つけたよ」
「・・・どんな歴史だ？」
「ふむ、どうやらその世界は1度・・・滅んでるそうなんだ」
滅んでる？どう言う事だ？
「実のところだけど、ザックリ言っちゃっていいかな？」
「お・・・おう」
こいつが真面目に言うとなればかなり価値がある情報だ、よく聞こう。
「歴史を辿った際、見つけた情報だったんだけど。その世界が滅びる前、その世界の文化、科学力はとても盛んで、近未来的な世界だったらしいんだ」
「ほう・・・それはすごい話だ、で？」
あえて俺は歴史の方に乗ってみた。
「けどねぇ、その時代に悲惨な出来事が起こるんだよ」
「・・・」
「ある時に、宇宙から4つの隕石が降ってきたんだよ。しかもめちゃくちゃ大きいものだったよ。なんと全長5000mもあったんだ」
デカすぎだろ、しかも4つって・・・そりゃあ滅ぶも当然だ。
「1つ目の隕石は米国に落ちて、1時間も経たずに米国全土を全て汚染させた、2つ目の隕石はヨーロッパ大陸に落ちて、日本を除く、ヨーロッパ全土を焼き払った、しかも跡形も残ってない。3つ目は英国に落ちてねぇ・・・何と英国そのものがなくなったんだよ。4つ目は超特大の隕石だったらしくて、あちこちの地形をめちゃくちゃにしていったよ。そのせいで北海道や沖縄がなくなったんだと思う」
おいおい・・・えげつなすぎるだろ、その隕石。
「人口はなんと1割まで減らされたのち数千人しか残ってないんだって。恐ろしいねぇ・・・我々2人には関係ないんだけどね」
「・・・で？」
むかつく態度はいいから、続けてくれ。
「一気に文明が崩壊した絶望の世界、そんな中で1人の召喚士が異世界から現れ、謎の機械を召喚した。そして命尽きる前にその機械を使って、世界を直そうとしたんだ」
「それが・・・現クォーツ達のいる世界なのか？」
「その通り、っと言いたいけどねぇ・・・・はっきり言うと君の仲間がいる世界は召喚士が召喚した機械の力で・・・いや、その機械は神様だったね。いやはや失礼」
「・・・何が言いたい？」
「けどねぇ・・・重大なミスを犯した事になった」
「・・・？」
「世界が２つに分かれたんだよ。直そうとした時、もう一つの世界が作られてしまったんだ。まるで光と闇のようにね」
つまり、クォーツ達がいる世界は直した偽物の世界・・・光か。
「要するに闇は滅んでしまった本物の世界というのか？」
「その通り、光は偽物、けど住んでいる生物は本物だ。長い歳月を越え・・・今の時代に至る訳だ、人間が悪魔の力で魔法生物を狩り倒している理由もある。簡単な話だ、悪魔及び神への貢ぎ物だよ」
なるほど・・・それでいなくなったのか。
「そして魔法生物を狩っている組織のバックには神様がいる・・・仮説だけどね。私が知っている、君の仲間の世界の正体だ。後は君の力で解明したまえ」
ふむ・・・まとめるとしておこう。

1：クォーツ達の世界は1度滅んでいる。
2：機械仕掛けの神が世界を直す際、何らかの影響で世界が二つに分かれた。以後、偽物の世界をライトテラ、本物の世界をダークテラと呼ぶことにする。
3：マナニアハンターズのバックに神が潜んでいる。紛れもなく怪しい。
俺の仮説：恐らく、クォーツとジェムを造ったあるじさまはこの世界にはいない。いずれにしろダークテラにも行く必要がありそうだ。クロノス・ノアを取り戻した後、今後の目的としておこう。

「では次、この夜会の事件についてだ」
よし・・・この事件の唯一の鍵はこいつが握っている、よく聞かないとな。
「この事件、実のところ私も焦臭いんだ」
「やはり・・・お前さんもそう思うか」
どうやらネクロも怪しんでいると言う事は・・・何かあるのか。
「どうも気になるんだよねぇ、何故・・・優勝賞品はあんな鏡なんだい？レアカードや金なら、ここにたんまりあるのに」
確かに・・・前世の姿に戻る事ができるけれど、壊れやすい魔法の道具なんだ？優勝品をゴミのように扱っているみたいでむしろおかしい。
「恐らくだけど、この事件にはマナニアハンターズが関わっている、この世界に来る途中、武装した連中がわんさかいたよ」
「動きは？」
「それがさぁ、この都市のあちこちに爆弾のような物を仕掛けてた姿を目撃したよ、無論バレたけどね。まぁ返り討ちにしてあげたけど」
並大抵の兵士が戦争経験のあるネクロマンサーに戦いに挑むとかやられに行くようなもんじゃねーか。
「仮説だけどあの爆弾、爆発するけど、出るのは火じゃなくて水だと思う」
まさか・・・【大洪水発生爆弾】か！！
「信じたくないがこれは・・・」
「たぶん、君の奪還作戦を阻害しているよ。優勝させる気はなさそうだ」
マジか・・・どっち転んでも爆弾は起爆か。
俺は焦った、このまま行けば起爆のカウントダウンが始まり、むしろ気づけば即起爆だ。生憎、爆弾を解体するにも経験があるのは俺とネクロのみ。
絶望的ではないか・・・！！
「では・・・夜会会場をジャックした犯人は・・・」
「奴らの一部の部隊がやったんだろう・・・けど」
ネクロは言いづらそうに俺に言う、まるで口封じをされているように。
「けど何だ？」
「私が極秘裏に入手した情報だ、信じるも信じないも君の勝手だ」
いや、普通に言うなら極秘ではないだろう。
だがその情報が極秘なら相当ヤバい情報だな・・・いいのか？
「この事件を通じて、奴らは何か企んでるらしい。内容だが、奴らはクォーツとジェムという人物を探しているらしい」
「・・・？何故クォーツとジェムなんだ？」
「仮説だけど・・・その人物らは神の一部だとか・・・私はそう考えている」
確かに・・・そうじゃなきゃそこまで動かないし、クォーツやジェム捕らえる理由がない。
「私が知っているのはここまでだ」
「そうか、ありがとう。これで大方、事件解決のピースが揃ってきた」
「そうかい・・・それはよかった」
普通は笑うが、俺とネクロは武器を取り出し、広場入り口に向かって投げる。


ドガァッ！！

入り口の扉と壁が粉々に砕け、その反動で武器が跳ね返り地面に落ちる。
「誰だい？二人きりの会話を盗み聞きする命知らずは？」
「気づいてないと思ったか？こそこそ隠れてないで出てこい」




次回、猫侍
※タイトルが変わる可能性があります。