第９４話：闇に絡め捕られていく蝶　作：チュウ

ツカサ：ＬＰ８０００

フレア：ＬＰ８０００


　「俺の先攻だ！手札からフィールド魔法《闇黒世界－シャドウ・ディストピア－》を発動！」

　「これは……フィールドが闇に変わった？」

　毎回このカードを発動すると辺りが暗くなるんだが、周りが火事って事もあって大分明るいな。炎の勢いも弱まるどころか強くなっている気がするし、早くしないとな。

　「更に手札から《魔界発現世行きデスガイド》を召喚！」

《魔界発現世行きデスガイド》
効果モンスター
星３/闇属性/悪魔族/攻１０００/守６００

　「このカードが召喚した時、デッキからレベル３・悪魔族モンスター１体を特殊召喚する！来い！《悪魔嬢リリス》！」

《悪魔嬢リリス》
効果モンスター
星３/闇属性/悪魔族/攻２０００/守０

　「《悪魔嬢リリス》の効果を《魔界発現世行きデスガイド》をリリースして発動！デッキから通常罠カード３枚を選び、相手はその中からランダムに１枚選ぶ。そのカードを自分フィールドにセットし、残りはデッキに戻す。俺は《奈落の落とし穴》《悪魔の技》×２を選ぶ。さぁ、１枚選んでくれ」

　「なら真ん中を選びます」

　《悪魔の技》か。これで次のターンの妨害を確保しつつリソースも稼げそうだな。

　「選択されたカードをセットし、残りはデッキに戻す。更にカードを２枚セットしてターンエンド。そして、このエンドフェイズに、フィールド魔法《闇黒世界－シャドウ・ディストピア－》の効果を発動！このターン中にリリースされたモンスターの数だけ、そのリリースされたモンスターのコントローラーの場に《シャドウトークン》を守備表示で特殊召喚する！」

《シャドウトークン》
トークン・通常モンスター
星３/闇属性/悪魔族/攻１０００/守１０００

　「では、私のターンですね。ドロー！手札から《炎麗蝶ベニヒメ》を召喚するわ！」

《炎麗蝶ベニヒメ》
効果モンスター
星４/炎属性/昆虫族/攻１２００/守１５００
このカード名の①の効果は１ターンに１度しか使用できない。
①：このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。デッキから「炎麗蝶」魔法・罠カード１枚を手札に加える。
②：「炎麗蝶の舞踊」の効果によって、自分の手札・フィールドの昆虫族モンスターをリリースする場合、墓地のこのカードを儀式素材として除外できる。

　「このカードが召喚した事で、デッキから《炎麗蝶の繭》を手札に加えるわ！そして、今加えたこのカードを発動！」

《炎麗蝶の繭》
永続魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：このカードの発動時の効果処理として、デッキから「炎麗蝶の舞園」１枚を自分のフィールドゾーンに表側表示で置く事ができる。
②：自分の手札・フィールドの昆虫族モンスター１体を墓地へ送って発動できる。デッキから「炎麗蝶」モンスター１体を特殊召喚する。このターン自分は、昆虫族モンスターしか特殊召喚できない。
③：このカードがフィールドに存在する限り、昆虫族・炎属性モンスターを手札から儀式召喚する場合、デッキ・墓地からも儀式召喚する事ができる。

　「このカードの発動時の効果処理として、デッキからフィールド魔法《炎麗蝶の舞園》を自分フィールドゾーンに置く事ができるわ！」

《炎麗蝶の舞園》
フィールド魔法
このカード名の①③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：自分のメインフェイズに発動できる。デッキから「炎麗蝶の舞踊」１枚を手札に加える。
②：自分フィールドの昆虫族モンスターの攻撃力・守備力は３００アップする。
③：自分フィールドに昆虫族・炎属性モンスターが２体以上存在し、相手がカード効果を発動した時に発動できる。そのカードの効果を無効にする。

　「《炎麗蝶の繭》の②の効果を《炎麗蝶ベニヒメ》を墓地へ送って発動します。デッキから《炎麗蝶アカネヒメ》を特殊召喚します！」

《炎麗蝶アカネヒメ》
効果モンスター
星４/炎属性/昆虫族/攻１７００/守１１００
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①：手札・フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。デッキから「炎麗蝶アカネヒメ」以外の「炎麗蝶」モンスター１体を手札に加える。
②：自分フィールドに昆虫族・炎属性の儀式モンスターが存在する場合、お互いのメインフェイズに発動できる。相手フィールドのモンスター１体の効果を無効にする。
③：「炎麗蝶の舞踊」の効果によって、自分の手札・フィールドの昆虫族モンスターをリリースする場合、墓地のこのカードを儀式素材として除外できる。

　「更に手札から儀式魔法《炎麗蝶の舞踊》を発動します！」

《炎麗蝶の舞踊》
儀式魔法
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。
①：レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドの昆虫族モンスターをリリースし、手札から昆虫族の儀式モンスター１体を儀式召喚する。
②：このカードが墓地に存在し、自分フィールドに昆虫族・炎属性モンスターまたは「炎麗蝶」魔法・罠カードが存在する場合に発動できる。このカードを手札に加える。

　「本来であれば手札・フィールドから素材を用意しますが、《炎麗蝶》モンスターの墓地での共通効果により、墓地から除外する事で素材の代わりを担えます。これによって墓地の《炎麗蝶ベニヒメ》を除外してレベル４の儀式モンスターを出せます。更に、永続魔法《炎麗蝶の繭》によってデッキからその儀式モンスターを儀式召喚できる様になります！現れて！《炎麗蝶レッド・モナーク》！」

《炎麗蝶レッド・モナーク》
儀式・効果モンスター
星４/炎属性/昆虫族/攻１９００/守２００
「炎麗蝶の舞踊」により降臨。このカード名の①の効果は１ターンに１度しか使用できない。
①：このカードが特殊召喚した場合に発動できる。自分の墓地・除外状態から昆虫族モンスター１体を手札に加えるか特殊召喚する。この効果の発動後、自分は昆虫族モンスターしか特殊召喚できない。
②：このカードを儀式素材として儀式召喚された昆虫族の儀式モンスターは以下の効果を得る
●このカードは効果では破壊されない。

　冗談だろ……前に魔人族の門番が使ってた儀式カードはもっとコスパ悪かった筈なのに、この儀式カードは全部必要なカードを本来はあり得ない場所から供給しているせいで、まったく手札を消費せずに儀式召喚ができる構成になっている……チートも大概にしろよ。

　さて、何処に罠を使うべきか……罠デッキの辛いところは、初見でその罠が相手にどの程度刺さるかが分からないところだ。デッキに入れている罠が使い物にならなければ、それだけ死に札が増えるからな……

　見た感じ、赤の国の王女様のデッキは昆虫族・炎属性で儀式主体のデッキの様だな。展開力はかなりものだし、リソースの消費も最低限になっている……素材は墓地から供給できるみたいだから下級モンスターを場で破壊しても素材が消えない。やるなら除外による除去だな。あとは、後ろの魔法カード達がかなり悪さをしているから後ろを破壊したいな。

　「随分と考えているようですね。私の《炎麗蝶》への打開策は思いつきましたか？」

　嫌味な言い方だな。まぁ、敵対している相手に投げる言葉なんてそんなもんか。

　「その答えは直ぐに分かるさ」

　とにかく、妨害するにしても儀式モンスターの切り札しだいだ。まだ出て来る筈だしな。

　「では、答え合わせを楽しみにしましょうか。私は特殊召喚した《炎麗蝶レッド・モナーク》の効果を発動します。除外から《炎麗蝶ベニヒメ》を蘇生します。更に、墓地の儀式魔法《炎麗蝶の舞踊》の②の効果により、墓地から手札に加えます。そして再び《炎麗蝶の舞踊》を発動します！」

　ここだ！

　「セットされた罠カードを発動！《悪魔の技》！自分フィールドに悪魔族モンスターが存在する場合、フィールドのカード１枚を対象として発動！俺は永続魔法《炎麗蝶の繭》を対象に取る！そのカードを破壊する！」

　「成程、一番痛いところを突いてきましたね……」

　流石に急所だったのかフレア王女の表情が焦りを見せてきたな。やはり、儀式モンスターをデッキからも出せるのが彼女が使うカードの中でも突出してヤバいと感じるからな。あれがなければ、そもそも儀式モンスターは出て来ない筈だ。

　「効果を解決してください」

　「なら、永続魔法は破壊され、《悪魔の技》の追加効果で、俺はデッキから《闇黒の影王デュークシェード》を墓地へ送る」

　これで新たな儀式召喚は封じた。次はどう出る？

　「ならばバトルフェイズに入ります！私のフィールド魔法《炎麗蝶の舞園》により、昆虫族モンスターの攻撃力・守備力は３００アップしています。これで貴方の場のモンスターの攻撃力を上回ります！」

《炎麗蝶レッド・モナーク》
攻１９００→攻２２００　守２００→守５００

《炎麗蝶アカネヒメ》
攻１７００→攻２０００　守１１００→守１４００

《炎麗蝶ベニヒメ》
攻１２００→攻１５００　守１５００→守１８００

　まずは一番攻撃力の高い儀式モンスターから処理していくか。

　「《悪魔嬢リリス》の効果を《炎麗蝶レッド・モナーク》をリリースして発動させてもらう！」

　「なっ！？私のモンスターをコストに効果を発動！？」

　「《闇黒世界－シャドウ・ディストピア－》により、自分フィールドの闇属性モンスター１体をリリースする場合、１ターンに１度だけ、相手フィールドの闇属性モンスターをリリースできる効果がある。更に、《闇黒世界－シャドウ・ディストピア－》によってお互いのモンスターは全て闇となっている。だからリリースできるって訳だ」

　「くっ！……」

　《悪魔嬢リリス》の除去はコストによるものだ。そうそうこれを突破してくるカードもないだろう。このカードの便利さを改めて感じるな。

　「効果を解決する。デッキから《奈落の落とし穴》《悪魔の技》《天龍雪獄》を選ぶ」

　「右を選びます」

　《天龍雪獄》か。これなら墓地リソースも処理できそうだな。

　「ですが、《悪魔嬢リリス》の攻撃力は２０００です。フィールド魔法によって攻撃力が上がった《炎麗蝶アカネヒメ》の攻撃力と同じ！同士討ちです！」

　相打ち覚悟で突っ込んで来たか。

　「なら！罠カード《悪魔嬢の誘い手》を発動！」

《悪魔嬢の誘い手》
通常罠
このカードが「悪魔嬢」モンスターの効果でセットされた場合、このカードはセットしたターンでも発動できる。このカード名の①②の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
①：自分フィールドの闇属性モンスター１体をリリースして発動できる。相手フィールドのモンスター１体のコントロールを得る。この効果を発動するために「悪魔嬢」モンスターをリリースした場合、そのリリースしたモンスターをエンドフェイズに墓地から特殊召喚できる。
②：このカードが墓地に存在し、自分フィールドにレベル３の悪魔族モンスターが存在する場合に発動できる。このカードを自分フィールドにセットする。この効果でセットされたこのカードがフィールドから離れる場合に除外される。

　「コストとして《悪魔嬢リリス》をリリースする。これにより《炎麗蝶アカネヒメ》のコントロールを得る！」

《炎麗蝶アカネヒメ》
攻２０００→攻１７００　守１４００→守１１００

　フィールド魔法の恩恵がなくなって攻守が元に戻ったが、攻め手が減ってかなり苦しい筈だ。

　「姑息な……なら、《炎麗蝶ベニヒメ》で守備表示の《シャドウトークン》に攻撃します！」

　《シャドウトークン》はあっけなく破壊された。だが問題ない。フレア王女の場は崩壊寸前。もう一押しすれば、俺の勝利が決定しそうだ。

　「メインフェイズ２に入ります。カードを２枚セットしてターンエンドです」

　２枚か……面倒だな。モンスターの処理は得意なデッキだが、バック破壊できるカードは少ないからな。取り敢えずはエンドフェイズの処理をしようか。

　「なら、《闇黒世界－シャドウ・ディストピア－》の効果により、フレア王女と俺の場にそれぞれ１体ずつ、《シャドウトークン》を守備表示で特殊召喚する。そして、先ほどリリースした《悪魔嬢リリス》も場に戻ってくる」

　「私の場にも出て来るのですね……先程から罠を主体とした戦術を取っていますし、搦手がお好きなのですね？」

　好きかどうかなんて考えた事もなかったが……

　「渡されたカードを使っているだけで、別に好んでこういう戦術を取っている訳ではない」

　実際、クロリムからデッキを渡されて、そこから強化をしていったからな。強化の幅もクロリムの魔力依存だし、早急に強くなる必要もあった。罠カードは魔力のコスパがいいらしいと前に言っていたし、罠デッキになるのは必然だった気はする。

　「そうですか、いえ、変な事を聞いて申し訳ありません。それはそうと、その黒い精霊とはどのような関係で？」

　この人、どさくさに紛れて探りを入れようとしているのか？罠デッキの下りも何かしらの情報を得るためのものだったのかもな。抜け目ないなこの王女様……

　「ふふん！ツカサとはこれでも長い付き合いなのよ！この世界に来た時からクロリムが色々と教えて、」

　「黙っていろクロリム。余計な情報を渡すな」

　「ひ、酷いのよ！」

　それにそんなに長くないだろ。この世界に来て二週間経ってないくらいなんだから。

　「あら、私との雑談はお気に召しませんでしたか？」

　「悪いが、綺麗な人との雑談はお腹いっぱいなんだよ。それに、俺にはデュエルを引き延ばそうとしている様にも見えるが違うか？」

　彼女の伏せカード２枚を退かせれば、俺の勝ちは近い。それは向こうの方がよく分かっている筈だ。雑談と称して話しを振って来たのは、勝ちが見込めないから少しでも俺から情報を引き出そうとしている様にしか見えない。

　「……」

　だんまりか……表情は変わらないが、恐らく図星だろう。これ以上変な話しをされる前に決着をつけないとな。