第１６話：姉と妹　作：チュウ

　フレアさんからカードを貰っているところにバンッ！と勢いよく部屋のドアが開かれた。

　「入るわよ！」

　何事かと思い俺は驚いて扉の方へ目を向けた。そこにはフレアさんと同じ色合いをした如何にもお姫様の様なドレスを着た女性が立っていた。髪の色が赤い事や顔なんかも何処となくフレアさんに似ていると俺は思った。

　「クレアお姉様……ノックをしてから大人しく入って来てください」

　フレアさんが呆れながら言うのはなんか意外だな。それにしてもお姉様？

　「そんな事はどうでもいいのよ！フレア！貴女またイアンを誑かしたみたいね！それに平民まで連れ込んで……卑しい妹ね全く！」

　かなりキツイ口調で捲し立てているのが、フレアさんのお姉さんなのか？かなり仲が悪く見えるが……

　「私はイアン様を誑かしていませんし、命の恩人を客人として招いただけです。ご恩返しも私の出せる資産から出してますしなにも迷惑はかけていません！」

　「そんなの関係ないのよ！平民がこのヴァーミリオン家の城内にいる事が間違っているのよ！周りの諸侯に示しがつかなくなるのよ？」

　「では、恩を仇で返せと？」

　「平民にかけるものなどないわ！そこの平民！さっさとここから出て行きなさい！」

　やっぱり俺がここにいると争いの火種になるのか……貴族と平民にはそれだけ溝があるって事だよな……

　「貴族の人間？この世界で物申すならなにをすればいいか分からないのかしら？」

　シャイニー！？どうした急に……その言い方は失礼なんじゃ……

　「随分と生意気な精霊ね……まぁいいでしょう。そこの平民！わたくしとデュエルしなさい！」

　またこの流れかよ！この世界はいちいちデュエルしないと気が済まないのか？まぁ、俺にとっては物申せるいい機会ではあるんだがな。シャイニーもその辺を分かって相手を煽っているだろうし。なら受けるしかないか……

　「分かった、その申し出受け……」

　「待ってください！」

　な、なんだ！？フレアさんが遮ってきたぞ？

　「そのデュエルは私が受けます！」

　え！？フレアさんが！？

　「生意気ねホント……姉であるわたくしに楯突くなんて……わたくしはそれでも構いませんよ？」

　「では広い場所に移りましょう。ユウキ……ここは私に任せてください」

　「あ、あぁ……でもいいんですか？俺のためにそこまでするなんて。それにお姉さんなんですよね？」

　「ユウキだからこそ、私はここまでやっているのです。それに……私お姉様の事、大っ嫌いですので！そこは安心してください」

　お、おう……凄くいい笑顔で言うもんだから驚いてしまった。



　フレアさんと姉のクレアさんがデュエルするため、俺達は城内のデュエル場に来た。
　そこそこの広いスペースがあって、デュエルするには問題ない場所だなと思いつつ、こんな広く何もないスペースを作れるくらいこの城って広いんだなと改めて俺は驚いた。

　「ここでデュエルするのも久しぶりね……」

　フレアさんが呟いた。

　「ここってあんまり使われていないのですか？」

　「そうですね。一応作った……だけの場所です。まぁ、貴族の見栄みたいなものです。ないと恥に思われてしまいますので……」

　そう言ったフレアさんの顔はなんだか恥ずかしい事を言ったような困った表情に俺は見えた。

　「ふん！分かってないですわね？貴族なんて見栄張ってなんぼですわ！張れば張るだけ得をする社会なのですよ」

　何だよそれ……庶民の俺には理解できない価値観だな……

　「そういった側面もありますが……不毛に感じてしまうだけです」

　俺もフレアさんの意見に同意だな。フレアさんは貴族だけど随分と庶民派なんだな。

　「つくづく貴族らしくありませんわね？いっその事平民にでもなってしまっては？」

　「…………それもいいかもしれませんね。ですが、このデュエルは勝たせてもらいます！」

　フレアさん……なんだか思い詰めているみたいだけど大丈夫なのか？

　「「デュエル！！」」

　フレアさんとクレアさんの合図が重なり、デュエルが始まった。いったいどんなデュエルになるんだ……