第３２話：菜食主義者？　作：チュウ

　俺達はエルフの復興の支援を継続していたが、ひとつ大きな問題があった。それは人手不足だ。フレアに賛同してくれる貴族は多くない……というかほぼいない。ならば、エルフ側から人手を捻出したいのだが、さきの事件でかなりの人数のエルフが囚われてしまい、圧倒的に手が足りない様子だった。
　そして今それらを含めた問題を相談するために、エルフ族の長達と会議をしているところだ。

　「よく来たな……まずは復興の援助感謝する、赤の国の第２王女フレアよ」

　かなり偉そうな口ぶりで開口一番に感謝を口にしたのは、エルフの族長であり、エルミアの祖父のアグラディアさんだ。
　正直に言えば、俺はこの人の印象は良くないと思っている。感謝ならもっと早くにしてもいい筈なのに、今更言われてもって感じがする。まぁ、エルミアの手前でそんな事は言えないが……

　「いえ、少しでもお力になれたのなら幸です……」

　フレアはこれに対して礼をしながら淡々と話している。

　「うむ……して、目下の問題である我が一族の者が大勢囚われている事について話す為にお主らを呼んだ。単刀直入に言う、お主らに救出の依頼する」

　「成程……」

　フレアは何かを考えながらそう返答した。

　「……無論、只でとは言わん。お主が求めている秘薬であるエーテルを贈呈しよう」

　「ありがとうございます。これで我が国王も助かります」

　なんだかさっきのフレアの無言で考えていた時間が、このエーテルを渡せと言っているかの様に思えるくらいに淡々と交渉が進んで行くな。

　「うむ……それと、我が孫娘であるエルミアを同行させる。よく使ってやってもらって構わない」

　どういう意味だよ……なんだかどうとでも捉えられる言い方だな……俺には雑に使ってもいいみたいに聞こえてくるんだよな……

　「こちらとしてもエルミア様が同行して頂けるなら心強いです」

　「……」

　エルミアは複雑そうな表情をして黙っている。
　そうだよな……エルミアのデュエルの腕は勉強会で良くなったと言っても正直まだ弱いと言える。エルフの代表みたいな感じで俺達に同行するのは不安に思っているんじゃないだろうか……

　その後は細かい話し合いをして１時間程で解散となった。
　結局、救出作戦は俺とフレアがキーになっている以外、戦力の増強はなし。やれるのだろうか……

　「終わったぁ〜ーー……」

　「ユウキは何もしてないでしょ！」

　「そ、それはそうだけど……ハッキリ言うんじゃねーよシャイニー！」

　「ふふ、ユウキは最近復興作業で肉体労働してますから会議を聞くだけでも疲れたでしょ？」

　確かに疲れてはいるが、交渉をエルフ達に囲まれながらひとりでやってるフレアの前で疲れたなんて言えないよ……

　「確かに疲れているけどまだまだイケるぜ！」

　「ちゃんと休まないと駄目ですよ？」

　「フレアだって働き詰めだろ？ちゃんと休めているのか？」

　「私は大丈夫です。それにこれから青の国へ出立する為に色々と準備しないといけませんし……休んでいられませんよ」

　準備に関してはフレアにしかできないし、何も言えないが……

　「なら、今日のところは英気を養うという事で、美味しいご飯を食べない？宴会……とはいかないけど……」

　「いいじゃないですか！ゆっくり食事を取る事もあまりなかったですし私は賛成です」

　「だな！エルフ族達の食事も気になるしな」

　この世界の料理は赤の国の城内で食べたが普通に美味しかった。元の世界とはまた違うみたいだが、全然抵抗なく食べられる。エルフの食事ってどんなのだろうか？やっぱり野菜とかが主流なのかな？

　そんな事を考えつつ、俺達はつかの間の休息を皆で楽しんだ。
　因みにエルミアが出してくれた食事は俺の予想に反して肉料理なんかも普通に出てきた。俺のエルフのイメージをエルミアに伝えると……

　「野菜だけじゃ死んじゃうと思うけど……」

　……と、割と真っ当な意見を困った顔で言われてしまい、俺もそうだよなとしか言えなかった。