第179話 悪神との決戦③　作：ヒラーズ

「何で・・・回復したの・・・？」
ハルは震えた声で、異界の夢に問う。
その問いに対し、異界の夢は。
「手札から極刑の弓を守備表示で特殊召喚し、効果で回復し、破壊された…世界樹の子供よ…おまえの攻撃は全て…無駄だった」
その言葉にハルは膝を地面につけ、戦意が喪失する。
「そんな・・・もう・・・駄目なの・・・？」
「・・・」
「ハルさん・・・」
ライトテラの住人を糧として自身を回復、戦い続ければ破滅が待つだけ。
ルナとレンギアがやられ、俺とトウマ、クォーツとハルだけとなった。
これは俺の思いきった計算ミスだ・・・。
「ぼくは・・・これでターンエンド」
「我のターン」
異界の夢
手札3→4

「我は手札から立法の本を召喚、効果により処刑の剣を蘇生」
立法の本　ATK2000　☆5
処刑の剣　ATK0→16000　☆4

「もはや攻撃するまでもない…魔法カード『破滅の光芒』…我のフィールド上にカード名が異なる天使族モンスターがPゾーンの天使族Pモンスターを含め4体以上存在した場合、おまえ達に8000のダメージを与える」
発動された魔法カードが赤黒い光を放ち俺達に迫る。
肉体的ダメージは確実に来るだろう。
「見せてやろう…人類が讃えた「欲」を。全員…破滅せよ！」
「くっ・・・罠発動！『デストラクト・ポーション』！ベルゼブブを破壊し、2600回復する！！」
百騎兵（陸也）LP7000→9600
俺は咄嗟に自身の能力を発動し、カード効果を受けた。
百騎兵（陸也）LP9600→1600
トウマ　LP8000→100
クォーツ　LP8000→100
ハル　LP4500→100

光が俺達を包み込み肉体的にもダメージを受ける。

















・・・がトウマとクォーツ、ハルには肉体的ダメージの影響がなかった。
服も破れておらず、出血してもいない。むしろLPが100残り、呆然と立っている。
「あ・・・あれ？」
「ライフが・・・尽きてない？」
「・・・？」
それを見た異界の夢は焦る。
「馬鹿な…！？あの転生者以外は0になるはず…まさか…貴様正気か！？」
その時だった。
ﾍﾞｼｬ…！ﾋﾟﾄｯ…ﾋﾟﾄｯ…

トウマ達の顔に赤い液体が飛び散り、返り血のように服、顔にかかる。
「！？」
「え…」
「ひ・・・百騎兵さん・・・？」
トウマ達が咄嗟に振り向くとそこには血まみれになった俺が虫の息となりながらふらふらと立ち、横には発動した罠カードが光っていた。
「罠・・・発動っ・・・『我欲維持』・・・！自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、このターン俺達は何をやってもライフが100残り、このカードが発動されたターンのエンドフェイズ時にデッキから魔法・罠を2枚ずつ墓地に送る・・・」
俺は血を吐き出し、体勢を崩す。
「俺達のライフが残ったとはいえ・・・何で百騎兵がダメージを受けてんだよ！？」
その焦りからか、異界の夢はその能力を言った。
「そうか…【繋がる痛手の肩代わり（ダメージ・リンク）】を使いおったか…見事な判断だ…」
「ダメージ・リンク・・・？」
「恐らく・・・ぼく達の肉体的ダメージを全て百騎兵さんが肩代わりした…と言うんですか・・・？」
「そんな・・・ぼく達を守るために、ライフも体もボロボロに・・・？」
トウマ達を守るとはいえ、この衝撃は痛すぎる。一瞬だけだが、三途の川が見えたな・・・。
「ん？よく見ると・・・百騎兵・・・斬られてる！？」
「・・・！？じゃあ、あの時ルナさんの体に異変が一つもなかったのは・・・！？」
「百騎兵さんのダメージ・リンクが発動していたから・・・！？」
そう、もう一言で言うのであれば、オシリスのサンダーフォースも喰らったのはレンギアの肉体じゃなく、俺の体に与えたんだ。
「くっ・・・！何て破壊力だ・・・！！あんなものを2回喰らったらデュエル不能になってしまう・・・」
頭、体から流れ出る俺の血液・・・ボロボロになった白と青の軍服。
ギリギリ意識は保ててるものの、立てる力がほとんどない。
何とかデュエルもできるが・・・この状態で奴を倒せるかどうか・・・。
「死に損ないが…次の我のターンで破滅するがいい…！ターンエンド」
「エンドフェイズ時に・・・俺のデッキから魔法・罠を2枚ずつ墓地に送る・・・俺の・・・ターン・・・！」
百騎兵（陸也）
手札4→5

手札が良くても今の段階で16000のアタッカーは潰せない・・・ここは態勢を立て直す事を優先するしかない・・・。
「カードを2枚伏せてターン終了・・・」
ふるふると震える左腕・・・握っている手札のカードには俺の血がついていた・・・。
「俺のターン」
トウマ
手札6→7

（百騎兵・・・お前は戦意を失いつつあった俺達の身代わりになってくれた・・・その意思・・・ぜってぇ無駄にしねぇよ・・・！俺達が・・・あの神を倒す！！）

「俺は手札から『サンダーフォース』を発動！」

サンダーフォース／Original Card
通常魔法
自分フィールド上に「オシリスの天空竜」が存在する場合のみ発動できる。相手フィールド上のモンスターを全て破壊し、相手に発動しターンの「オシリスの天空竜」の攻撃力分のダメージを与える。この効果は他の効果を無視して適用する。この効果を発動したターン「オシリスの天空竜」は攻撃できない。


「何…！？」
「攻撃はできないが・・・ダメージを与えれば問題ねぇ！」
オシリスの電撃ブレスが相手フィール上を黒焦げにし、ダメージを与える。
異界の夢　LP8000→2000

「貴様…！」
「後は任せたぜ、クォーツ。ターンエンドだ」
「分かりました・・・！ぼくのターン！」
クォーツ
手札5→6

「ぼくは手札から水晶機巧－クオンを召喚！さらに罠カード『マナクリストロン・エントリー』を発動！自分のデッキから魔法機巧モンスター1体を特殊召喚します・・・！ぼくが召喚するのは魔法機巧－ネームレス・ワン！」
魔法機巧－ネームレス・ワン　ATK600　☆2

「いきます・・・！レベル6のセラエノンとレベル2のネームレス・ワンをチューニング！S召喚！出でよ！クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン！」
クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン　ATK3000　☆8

「ネームレス・ワンがS素材となって墓地に送られた時、墓地からチューナー1体をレベルを1つ上げて特殊召喚します！蘇れ！シトリィ！！」
水晶機巧－シトリィ　ATK500　☆2→3

「まだいきます・・・！レベル5のアメトリクスとレベル3となったシトリィにレベル1のクオンをチューニング！S召喚！！レベル9、水晶機巧－グリオンガンド！！」
水晶機巧－グリオンガンド　ATK3000　☆9

「来るか…」
「グリオンガンドの効果を発動します・・・！効果により墓地のモンスター1体を除外します・・・！処刑の剣を除外！そしてバトル！クリスタルウィングで攻撃！！」
「手札から極刑の弓を守備表示で特殊召喚し、破壊を受け、回復する…」
異界の夢　LP2000→8000

「でもグリオンガンドが残ってます・・・！攻撃！」
異界の夢　LP8000→5000

「効かぬ…。全ては無駄なのだ…」
「後は任せました・・・ハルさん、ターンエンド」
「ぼくの・・・ターン！」
ハル
手札8→9

「今更「神」を出したところで何も変わらぬ…！」
「うん、けどぼくはライフを削るよ！オベリスクでダイレクトアタック！ゴッドハンド・クラッシャー！！」
異界の夢　LP5000→1000

「おのれ…！」
「やることはやったよ、百騎兵さん・・・ターンエンド」
「我のターン」
異界の夢
手札3→4

「我は再び処刑の剣を召喚、効果でライフを戻し、攻撃…。魔法生物よ…破滅せよ…」
処刑の剣が俺に振り上げられる・・・これで俺のライフが0になる・・・。
「・・・ここまでか・・・」
そう言った瞬間だった。
『…こちら、追放世界「レクス公国」の主「レクス」、陸也君…聞こえてるかい？』
ずっと通信が切れていた「異界通信機」がいきなり復旧したのである。
運命の神が俺に最後のチャンスをくれたんだろうか？少年のような声は俺がよく知っている人物・・・俺はその通信を聞き続けた。
『何があったかは分からないけど、君はきっと神と戦っている。けど君はそんなところでやられてしまうほどの弱い軍人じゃないだろう？そんなものでいいのかい？そんなことでやられてしまったら、君はまた人を泣かせてしまうんだよ？』
「・・・」
『僕は君が帰ってくる事を祈っている…そして君が世界を救ってくることも…公国の皆が君の帰りを待っている…だから…その神を倒し、レクス公国に帰還してくれ…Over』
「・・・」
通信が切れ、再び通信機が故障する。
「…追放世界の神格の1体か…愚かな…」
処刑の剣が振り下ろされ、俺に刃が近づく・・・。










「お前さん、今なんて言った・・・？」








「む…？」
突然処刑の剣がピタリと止まり、ターンが終了する。
「今・・・何て言ったかと聞いてるんだ！！」
その衝撃で俺のEXデッキが眩く光り出し、ライトテラ全体を照らし出した。
「なっ・・・何が起きたんだ！？」
「けど・・・何だろう・・・とても暖かい・・・」
「懐かしい感覚がする・・・」
そしてEXデッキから1枚のカードが空に飛び出し、虹色に光る。

「今こそ・・・決着をつける！！」
「我が倒されれば貴様はこの世界に居れなくなるのだぞ…！？世界は悪しき方向に往くのだぞ…！」
その言葉に俺はニコリと笑いつつ言い返した。
「世界は・・・廻るさ、俺という魔神が居なくとも・・・お前さんという「神」が居なくとも・・・・世界は・・・廻り続ける！！」



―――――アクセル条件・・・達成！！―――――




次回、悪神との決着
※タイトルが変わる可能性があります。