第154話 大阪へ　作：ヒラーズ

クロノス・ノア奪還編　開幕









「・・・じさま」
・・・？クォーツ・・・？
「・・・い！・・・兵！」
トウマ？
「・・・！！」
俺は・・・ちゃんと生きてるのか？
「あるじさま！」
「！（はいいっ！起きたぞ！）」
俺はガバッと起き上がり、辺りを見渡す。
どうやら俺はホテルのベッドの上で寝ていたらしい。
「・・・（ここは？）」
「四国のスター・シティです、大丈夫ですか？」
うーん・・・怪物と戦ったり、悪魔と喧嘩したりと頭がおかしくなりそうだ。
「きゅ（すまん、俺が気絶してどれくらい時間が経った？）」
「・・・5日経ちました」
え・・・？5日も寝てたの！？
「・・・（俺と一緒にいた生存者は？）」
「詞音さん達なら・・・ノイエさんの魔法で元の世界に帰りました」
そうか・・・それは安心した。
「みんな、心配してましたよ。早く・・・大阪に行こう？」
俺としたことが油断したな・・・セキュリティ破られてなければ良いが・・・。
そう思い、ホテルをチェックアウトし、フロントを出る。
その時だった。


そこには見覚えのある人が俺を待っていた。
「遅いお目覚めじゃねぇか！」
「待つのはすごく面倒くさい事だったんだから、早く目的果たして楽したい」
「・・・」
「随分と寝てたけどいい夢見れたにゃ？」
「マスターが無事なら、まだ希望はありますね」
「相変わらず、タフですね。百騎兵さん」
どう言う事か、皆が俺の事を待ってくれた。
「・・・（トウマ、リュウカ、ファルディア、ルナにシャル・・・待たせてしまったな。行こう！俺の船の奪還に！）」
仲間の合流で感動したいものだが、生憎そう言う感情を持っていない。
聞きたい事が山ほどあるからな。
「あるじさまのDホイール、寝ている間に大幅改造しました・・・と言っても装甲値だけ・・・です」
さらに硬くしたと？
「・・・？（どんだけ硬くした？）」
「《デナドロ石》という鉱石を鉄板化させたものくっつけました。オリハルコンより弱い質の装甲板ですが、これなら戦車砲や爆発物も効きません・・・です・・・後・・・エンジンをヒュペリオンズ・エンジンに変更、後はあるじさまが1つ加えれば、完全になる・・・です」

装甲及びエンジン大改造じゃねぇか！！
どこでそんな資金を手に入れてきたんだよ。
「・・・それと、鏡なんですけど・・・」
「！（そうだった！《前世戻しの鏡》は？）」
その言葉にクォーツ達は言いづらそうな表情になる。
「実は・・・」
「鏡は・・・」
「ルナがドジって割った」
「・・・」
「いやいやにゃ！？あれはトウマさんが私の尻尾を引っ張ったからびっくりして落としただけにゃ！その代わりに1000万の賞金は貰ったにゃ！実質トウマさんが悪いにゃ！！」
ははは・・・割れたのか・・・。
「きゅ・・・（そうか、割れたなら仕方ない。別に誰も悪くない）」
「え・・・？」
「きゅ（お前さんらが無事なら、そんな安物の魔法道具なんぞいらないよ）」
ここまで俺の作戦が上手くいくのは仲間との信頼がものを言う。
それに魔法が存在する世界だ。前世に戻れる方法は幾らでもある、希望は捨てないさ。
「百騎兵・・・」
「マスター・・・」
「あるじさま・・・」
「・・・（それに新しいDホイールが必要になるな。特にトウマ用にだ）」
「お・・・俺専用！？」
「きゅ・・・（まず行く前に、スター・シティのゴミ捨て場に行こう。そこからだ）」

















しばらくしてゴミ捨て場。俺達はあちこちのパーツをかき集め、改造し1台のDホイールが完成した。
「こ・・・これが俺の乗るDホイールか！！」
名は《シルバーオシリス（トウマ仕様）》、姿は銀色版オシリスの天空竜の頭の形をした特殊Dホイールで、一般のDホイールの速度を軽く上回る。
ゲーム的に表せばこうか？
外装甲：デナドロ鉱石の鉄板
内装甲：ムーパープルフレーム
ホイール：ミスリル銀製
エンジン及びジェネレーター：クリティウス・ハイパー、ミノフスキーフライト
乗れる人数：3人乗り可
装備：召雷弾－B型改

まぁ・・・大体こんな感じか？
トウマが眼をキラキラさせて見ているが・・・。
「ふええぇぇ・・・(☆。☆)」
「きゅ・・・（気に入ってくれて良かった。これで行けるな）」
まぁ、作ってる途中でトウマに乗ったことあるか聞いてみれば、「ライセンスはあるけど、ペーパーホイーラーだぜ！」っとか言ってたから正直ビビった。
「そういえば百騎兵さん、先程私たちのDホイールも改造しませんでした？」
「・・・（ああ、同じミノフスキーフライトを搭載させといた。これで全員のDホイールは飛行できる）」
その言葉に俺とファルディア以外の全員が驚いた。
トウマは顔が青くなり、シャルは帽子がずれ落ちた。
「ひ・・・ひこう？」
「つまり・・・空を飛べるようになった・・・っと言う訳にゃ？」
「ニケッ！（応！特にトウマのは戦闘機と余裕でやり合えるくらいの性能にしておいた・・・ってあれ？）」
俺が説明後にシャル達は集まり、ヒソヒソと話し合いをしている・・・何かまずい事を言ったか？

「あるじさまの技術・・・」ﾋｿﾋｿ
「ただ者じゃないですね」ﾋｿﾋｿ
「どうすんだよ！空飛ぶDホイールなんてアニメ以外聞いたことねぇぞ！？」ﾋｿﾋｿ
「さすがマスターの祖国、追放世界のレクス公国の超技術、想像を遙かに超えています」ﾋｿﾋｿ

俺は考えた・・・まさか性能を疑ってるのか？
俺は自分のDホイールを少し見つめた後、マナニアが乗れる・・・サイズ、人間サイズが乗れるハイブリッド型のDホイールの席に軽々と乗り、起動させる。
「・・・（性能を疑ってるなら俺が実験台になってやる）」
俺は自分のDホイールの1つのシステムを起動させた。
『セミオートパイロットシステム起動、フライトシステムオンライン』

「きゅ（じゃあ、ちょっと空飛んでくる）」
そう言って俺はDホイールを走らせる。
そしてファルディアとジェムを除くクォーツ達の表情が大きく変わった。








―――――Dホイールが空を飛んだ！！―――――





まるで空中にも道があるかのようにスイスイ動き回り、たちまちビルよりも高く高度を上げ、ループやローリングまでやったとたん、下の方ではシャッターを押す音を聞いたり、唖然としている人々の姿を見る。
「もきゅ？（あれっ？当たり前の事をしただけだったんだが・・・何がおかしいんだ？）」
俺は考えつつもシャル達の所に戻り、元のゴミ捨て場前にDホイールを着地させる。
「きゅ・・・（どうだ？偽りじゃないぞ？）」
そんな俺を見てシャル達は後ずさりする。
「つ・・・疲れてるんでしょうか？私達のDホイールが百騎兵さんの超技術で飛べるのは・・・」
ミノフスキーフライトは普通にDホイールに搭載されているのでは？
まさか場外復帰用などの対策されてないのかよ・・・。
「ふきゅ（苦悩するのは構わないが、行くぞ。これ以上道草はできない）」
「そうですね、行きましょう」
クォーツは俺の後ろの席に乗る。そして補助装置に掴まる。
それに続きトウマは完成したDホイールに、リュウカとジェムを乗せ、ヘルメットを被る。シャルも後ろにルナを乗せる。
「もきゅ？（ファルディアは？）」
「私は羽があるから自分で飛んでいく・・・」
そう言ってファルディアは先に飛翔し、空を飛ぶ。
俺達もそれに続き、発進させる。










そしてしばらく飛んでいると・・・・。
「すげぇ・・・ホントに飛んでいるんだな」
「私達は・・・こんなすごい事を体験している・・・こんな事していいんでしょうか？」
「・・・（いいだろ、渋滞に巻き込まれるよりマシだ）」
「あるじさま、見えて来ました」
クォーツが指をさした所を全員で見る。
大阪府全体が結界で包まれているのが、上空でようやく分かった。
「にゃるほど・・・確かにこの刀の錆びにできそうな結界だにゃ、任せるにゃよ」
ルナはシャルのDホイールから飛び降り、鞘から刀を抜く。
「いくにゃ！【三日月昇天斬】！！」
ルナの刀が鈍く光り、振り下ろされた瞬間。



ﾊﾞﾘｨｨｨﾝ！！



ガラスが割れたかのような音が響き、結界が破れる。
ルナは飛び散った結界の破片に飛び乗り、シャルのDホイールに飛び移る。
「何だにゃ、手応えのない結界だにゃ」
「・・・（確かに手応えのない結界だ。名刀『魔喰い桜』の力で呆気なく砕けたぞ）」
俺は「何か罠があるのではないか？」と、考えながら機体を動かし、進む。
これでクロノス・ノアを鹵獲してある場所さえ聞き出せば、進入して奪還できる訳だ。











同時刻、大阪魔法生物狩り本部では・・・。
「空飛ぶDホイールを見ただと？」
「はい、民衆は科学の発展と叫んでおりますが・・・」
上官らしき男は葉巻を灰皿に置き、席を立ち、窓を見る。
「奴らが来おったか・・・予想はしておったが、飛んでくるとはな」
「どうします？マスコミには・・・」
「知らんと言っておけ、あれは我々が作ったものではないと」
「了解、船の件は？羽島中将」
「ふん、警備は既に固めてある。奴らも簡単には近寄れまい」

裏では壮大な迎撃準備が進められていた。









次回、集まる魔の手
※タイトルが変わる可能性と修正の可能性があります。