第91話 夢と記憶　作：ヒラーズ

「これが・・・方法？」
クォーツは動かなくなった俺の隣にある扉を見つめ、ドアノブに触ろうとする。
「待て、何も聞かぬまま夢憶世界（メモリードリームワールド）に入る気か？」
ノイエがクォーツを止め、シャルの近くまで引っ張る。
「・・・」
「救いたい気持ちはあるのは良いことだ。だが、一つの失態で多くの命が失われるほどの危険な行為だ」
「・・・」
「まぁ落ち着け、時間は・・・なかったな」
「・・・」
「・・・この扉の先の世界に百騎兵の精神が囚われている。入れば戻るのは至難の業だ、私も行こう」
その言葉にクォーツ首を傾げる。
「？なんでですか？」
「私がこの状況で無関係の立場ではないのでな。入らせてもらう、それに先の世界に詳しい奴が必要だろう？説明も・・・中途半端だ」
ノイエはシャルとリュウカの方を向き、問う。
「探偵のシャル、転生者のリュウカ。貴様らも行くか？」
その誘いに二人は迷う事無く答える。
「何言ってるの？行くに決まってるよ」
「百騎兵さんの過去、少し興味深いですし、問題ないですよ？」
「そうか・・・なら扉を開けるぞ」
全員の答えにノイエは首を縦に振る。
ｷﾞｷﾞｨｨ…

扉が開かれ、その中にクォーツ達が入っていく。
「さぁ、行くぞ・・・前世の記憶であり夢でもある、夢憶世界へ」
全員入ったとたん、木製の扉は白い火となって消滅する。









「こ・・・ここは？」
「ふむ・・・どこかの施設か？」
「それにしては・・・やけに血生臭い・・・」
「それはそうと・・・壁一面の赤い液体・・・血だよね？」
クォーツ達が出た所は、なにやら研究施設らしき廊下だった。
辺りは血の海が広がり、生き物の気配が感じない。
調べようとすればあちこち銃で武装した兵士らしき死 体が沢山転がっている。
「うう・・・グロい」
「一体誰がこんな事を・・・」
リュウカは屍を調べ、シャルに言う。
「この人達の傷・・・まだ新しい・・・近くに何かいるかも・・・。でも、殺ったのは人じゃ無い・・・」
「人では・・・ないだと？」
シャルは考え・・・何があったかを推測する。
「恐らく・・・何かの抗争？」
その時だった。
ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ！

「「！」」
「「！」」
後ろから銃声がした。
クォーツ達が振り向くと、そこには重装備をした兵士の姿があった。
「ひ・・・人？」
重装した兵士がクォーツ達に銃（フルオートショットガン）を向ける。
「え？」
「・・・！いかん！！」
ノイエがクォーツ達をかばおうとした時・・・・。
ｼｭﾋﾟｨｨｨﾝ！

小さい音の銃声がした。
その音と同時に重装した兵士は倒れ、動かなくなる。
「え・・・？」
クォーツ達は何がどうなったかと再び銃声をした方へ振り向く。
そこには白髪で、青と黒色を混じらせた軍服を着ている見た目19歳くらいの男性が現れる。
「大丈夫か？民間人がこんな所に居ては危険だ」
「・・・君は？」
「俺か？そうだな・・・陸也（りくや）・・・大尉だ」
陸也は通信機を取り出し、何かしら連絡を取り始めた。

「こちら ロンギヌスリーダー、民間人を確保した。逃げ遅れた民間人の避難を手伝うべく、一時撤退する。オーバー」
『こちらＣＰ（コマンドポスト） 了解。他の味方とも合流し、民間人を護衛しつつ危険領域（ホットゾーン）から離脱せよ。アウト』ｶﾞﾁｬ

陸也はクォーツに手を伸ばし、「立てるか？」と言う。
「うん、ありがとう」
「じゃあ行くぞ、俺から離れるなよ？」
陸也の護衛があるのか立ちふさがる兵士を次々と倒し前進していく。
そんな時、クォーツは陸也の腕に触る。
「・・・怖いか？」
「うん・・・」
「だろうな・・・何せお前さんは子供だ。戦争が怖いのは当然だ」
お前さん・・・その言葉にクォーツは違和感を感じ、陸也から少し離れる。
「？どうした？クォーツ？」
ノイエがクォーツに近づき、ヒソヒソと話す。
「どうしたんだ？」ﾋｿﾋｿ
「・・・多分だけど・・・あの人・・・」ﾋｿﾋｿ
「おい・・・まさかではないだろうな？」ﾋｿﾋｿ
「（今の言葉・・・良心的な態度・・・恐らく・・・）」
思った瞬間、陸也が足を止め、周りに銃（Ｇ36）を向け、警戒する。
「気をつけろ、近くに敵がいるかも知れん・・・。俺はクリアリングしながら進むから、その後に続いてくれ」
何かに察知したのか、陸也はあちこちを見ながら「クリア！」と言って、こっちへ来いとハンドサインをする。
「何か分かったの？クォーツ？」
「・・・」
リュウカがクォーツに問うが、クォーツは答えない。
何かを疑ったのだろうか・・・。
進んでいる途中・・・再び銃声がした。
ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞッ！

クォーツは、その音に驚き腰を抜かす。
「うわっ！」
それに気づいた陸也は、クォーツに近寄り、手を引っ張る。
「すまんな、あと少しだからな。頑張ってくれ」
「・・・うん（やっぱり・・・この人・・・）」
「もう少しで仲間と合流する。お前さんらも頑張ってくれ」
陸也は再び銃を構え直し、クリアリングし、クォーツ達を誘導する。






「ここから先が外だが、人員輸送用の装甲車が来るはずだ。ここで待っててくれ」
陸也が通信機を取り出し連絡を入れる。

「こちらロンギヌスリーダー、各員応答せよ」
『こちらロンギヌス4、俺とリーダー以外撤退を完了しました。撤退用の装甲車を走らせてます。オーバー』
「了解した。急げ、こっちには民間人が4人いる。いつ負傷者が出てもおかしくない、研究施設の西門で待ってる。アウト」

「・・・シャルさん、今のやりとりは？」
「あれは軍人がよく使う用語で、ああやって味方に情報を送っている・・・と言えば分かりますか？」
「じゃあ、ＣＰって何ですか？」
「ＣＰ・・・CommandoPost（コマンドポスト）って意味です。割と難しいんですよ、これ」
そう話していると陸也が声をかける。
「来たぞ、ようやく安全地帯に行けるぞ。よく頑張ったな」
クォーツ達は装甲車に乗り、研究施設を出る。
安全地帯に行く途中、安心したのか、クォーツ達が装甲車内で寝てしまう。
「無理も無いか、まぁ町に着くまで時間があるし、寝てれば良いさ」



次回、真名探し

※タイトルが変わる可能性があります。