第90話 赤い月　作：ヒラーズ

「あるじさまが動かない？」
シャルは1度クォーツ達を呼び、動かなくなった俺を何とかしようと努力してた。
「うーん・・・叩いても、揺らしても反応なしか・・・」
「でも・・・変わったところが出てる・・・」
「「？」」
リュウカとシャルの頭上に？が浮かび、首を傾げる。
「どこが・・・変わった？」
逆にリュウカがクォーツに質問する。
「・・・見て、あるじさまの頭の灯の色」
「え？頭の灯？」
リュウカとシャルは俺の頭の灯を見る。
「あ！色が・・・白色になってる！！」
「・・・」
シャルが色が変わった灯を調べる。
「・・・熱くない。いや、感じるのは何でしょう？熱いというより、むしろ暖かい・・・」
その時だった。
【遅かったか・・・】
クォーツ達の頭に直接、謎の女性の声が聞こえた。
「誰ですか！？」
「・・・ノイエさん」
【うむ、クォーツは私だと判断できるようだな】
「・・・」
【まぁ、落ち着け。私は敵ではない。特にそこの転生者は殺気を収めてもらおうか】
「・・・っ！」
リュウカは殺気を押さえ、じっとする。
「何の・・・用ですか？」
【何、百騎兵が心配で千里眼を使っていたところ、騒がしい事になっているようだな？】
「・・・」
【何があった？】
クォーツはノイエにこれまでの事を説明した。








【なるほどな・・・灯の色の変化と百騎兵の停止状態・・・原因はこの月のせいだな】
「あの・・・赤い月がですか？」
【まぁ、ここで言うのもなんだ・・・。直接会いに行こう。話はそれからだ】
「え・・・？」
突然客室が青い空間に変わり、コツコツと足音が空間の中に響く。
「え？えぇ？クォーツ、これって？」
【はははっ！面白いなこの転生者の反応は】
その声と同時にシャルの背後からノイエが現れる。
「久しぶりだな、クォーツ」
シャルは咄嗟に後ろを振り向き、ノイエを見る。
「くくくっ・・・貴様らがシャルとリュウカか」
「君が・・・ノイエ」
「ノイエ・フロンタル・・・《空間の支配者》（フィールドルーラー）と呼ばれた魔女・・・」
ノイエは指をパチンと鳴らすと、何もないところからイスとテーブルが現れ、ノイエは王座のようなイスに座っている。
「まぁ、座れ。茶菓子は今はない」
クォーツ達がイスに座ると、背景が元の旅館の客室に戻る。
「まずは月についてだな」
クォーツ達は息を呑み込み、説明を聞く。
「月は魔女や魔法生物に力を与える・・・いわば飲み水のようなものだ。月から得た魔力はとても強力らしく、どの魔女や魔法生物も月の魔力があってこそ生きて来れたと過言ではない。故に魔女と魔法生物は本来、寝る必要がない」
「・・・」
「だが、この赤い月は違う。この月は転生者にとってはタチの悪いものだ。この状況を作ったのは紛れなく、この月だ。白い月は魔力を与え、碧の月は安らぎを、赤い月は・・・転生した者の記憶が蘇り、記憶は夢となりつつ、1つの世界を作る」
「「「？」」」
クォーツ達はノイエが何を言っているのを理解するのは困難だった。
「えと・・・つまり？」
「・・・記憶が夢となり、夢が記憶となる。夢をみる者は月が沈まん限り、夢という名の記憶に囚われる」
「・・・？」
ノイエはクォーツにデコピンし、怒る。
「・・・っ！」
「まだわからんのか？つまり、この月が沈まんと百騎兵は戻らんと言うことだ」
「「「！！」」」
ノイエの言葉で、辺りが静まり還る。
「だがチャンスはある。簡単に言えば百騎兵の前世の姿が拝めるし、いち早く百騎兵を戻せるという訳だが・・・興味はあるまい？」
「つ・・・つまり、前世の人の記憶の世界へいける方法はあるの？」
「・・・無くはない、だが非常に危険だ・・・死 ぬ可能性がある」
クォーツは考えていた、このまま月が沈むまで待つか、自分のあるじさまの記憶世界に入って、いち早く精神を戻すかを・・・。
「・・・その月が沈む時間は？」
「・・・この赤い月はタチの悪い月でな、なかなか沈まん。最低でも3日は続く」
「み・・・3日ですか？」
その事でシャルは驚きを隠せず、困惑する。
「それじゃあ、蒼羽さんの約束の時間が・・・」
すると、動かなくなった俺の隣に、白い炎が燃え上がる。
それはまるで火柱のようになるが突如白い火柱の中から木製の扉が出現する。
「・・・あれが方法だ」





次回、前世の世界と記憶

※タイトルが変わる可能性があります。