129話 終息　作：紅瑠璃

銃声が部屋中に響いた…しかし倒れたのは私…タカミネでなければ蜜柑でなかった。では誰か？最後に一人いるではないか…いやいや、シゲミツが放った弾が自分に当たるかって？誰もシゲミツの銃からとは言ってない…他の人物の銃弾だ。シゲミツの胸部から血が流れている。

「やれやれ…本当にNo.を全て捕まえるなんてね…。久しぶりだね。シゲミツ…タカミネ社長。」
「ト、トヨフミ…。」

なんと居たのは死んだはずのトヨフミだった。だが、どうも霊体や怪異、幻覚ではなさそうだ。

「貴様…何処から！死んだはずではないのか！」
「質問が多いな…私は今さっき来たばかりでね…闇を通ってきた。さて、二つ目の質問だ。確かに普通なら死ぬな…この世界の人間ならね。何せ崖から落とされたんだからね。後、私はトヨフミではない…オスクリタだ。」

トヨフミではない…オスクリタと名乗る男は闇を通ってきた…この世界の人間なら…これらの話からして本当にこの世界の人間ではないとのだろう。

「君たちはナンバーズを全て集めれば望みに近づくと思ってるようだな。確かにナンバーズ達に実体を与えることができるが…。本来の使い道はね…」
「なんだ…空間が裂かれた…。」
「この景色…ノースウェムコに会ったときに見たのと似ている。」

トヨフミ…いや、オスクリタはその世界の人なのだろう…。オスクリタはその中に入ろうとする。それを止めようとするシゲミツ。しかしそれを払うとオスクリタはまた歩き始める。

「そうだ…最後に１つ贈り物をしていこう」

オスクリタは指を鳴らすと裂かれた空間の中に入り空間を閉ざした。私は呆気に取られていると床が揺れ始めた。機械は火花をあげ、壊れてしまう。

「はにゅ！？ミ、ミカはにゃにして…ど、どうにゃったの！」
「話は後だ！シゲミツ…行くぞ！」

タカミネは致命傷のシゲミツを連れ、外を目指す。もう崩壊寸前の建物から外を目指し歩く

「こんな俺でも…助けてくれるのか…。タカミネは甘いな。」
「そうだな…。だが、今回の罪…お前はもちろん、俺も受けるべきだと感じている…お前一人にはしないさ。」
「ふっ…いや、お前は被害者だ。全ては俺達のせいだ…ぐぉっと…」

さらに揺れが激しくなる。歩くのが困難になってくる…蜜柑は何が起きたのかわからないが雰囲気的にタカミネとシゲミツを守らなければならないと感じた。だが、次また大きな揺れが起きたらこの建物は崩れてしまうだろう。

「タカミネ。俺はいい…置いていけ。そこの猫みたいな子はお前ぐらいなら助けられるだろう。」
「はみゃっ！ふ、二人を守るよ！アストライアーとして！」
「お前を…助けてやりたいんだ！」
「どっちにしろっ！…俺は助からない…俺を助けるためだけにお前が死ぬ意味はないっ！」
「シゲミツ…。」

また大きな揺れだ。蜜柑の考え通り床や壁が崩れてきた。当然蜜柑達の足元の床も崩れた…。このままでは３人とも瓦礫の中だ。蜜柑自身は他に落ちてくる瓦礫を足場に渡れる…がそれでは二人は助けられない。

「くっ…タカミネっ！行くぞぉっ！デェェイヤァァッ！」
「シゲミツっ！？ぐわっ！」

シゲミツは落ちてく中、最後の力を振り絞りタカミネを上へと投げ飛ばしまだ安全そうな床に着地させた。蜜柑は自分の力で上へと登り着地した。シゲミツは闇のそこに落ちていった。蜜柑はタカミネを押さえながら外を目指す。

～タカミネコーポレーションの外～

大きな揺れは町全体に広まっていた。中でもタカミネコーポレーションの近く…黒羽早百合、黒羽梓、宮野真保、宮野京子は蜜柑とタカミネの帰りを待ちながら自分達の身を守っていた。ようやくして蜜柑とタカミネ社長が戻ってきた。二人とも疲れはてていた。建物は完全に崩れ落ち町に出現してきたナンバーズ、怪異等は全て消えた…。事態は終息を迎えた。

～数週間後～

まだ節々が痛む…。今回の件は当然ながら大きな報道となった…タカミネ社長はと言うと罪を共に背負い、裁判まで発展したが今回の件には関係ないとし罰される事はなく、いつも通りの生活へと戻された。ただし遊戯王に関する信用は前よりは減っただろう。もちろんタカミネ社長のせいではない。元タカミネコーポレーションをくまなく捜査するがナンバーズ管理室にあった機械と計二人の死んだ体が見つかった。それぐらいだろう。さて、お見舞いに行くとするか。

～病室～

「ん、んやぁ～？ここは…」
「うむ。神無月殿…起きたか。ここは病室だ。もう終わったらしいな。」
「夢月さん…。終わったのですね…。」

ノックの音がしたので返事をすると病室に入ってきたのは鈴菜さんと桐ちゃんだった。話を聞くと鈴菜さんが何かに操られている間私は鈴菜さんにボッコボコにされ気絶している間に何度もナイフで刺されたらしい…。

「悪いね…私のせいではないけど。」
「過ぎたことなのでっ！それより右目…」
「あぁ…No.82との戦闘で抉れてね…片目しか見えないわ。まぁ朱音に比べたら」
「藍野殿…弧山殿に何が？」
「右足と左腕がないのよ…まぁ訳ありで切り落としたの私なんだけどね…。」

そういえば今回の件は誰が責任を取るのか。誰がお金をだすのか。死者負傷者はどれぐらいなのか聞いて見るが誰も知らないらしい。そういう話は隊長と宇佐見さんに任せている…。ひとまず言えることは「お疲れ様」だった。

～とある公園～

渚町は今復興作業中で立ち入ることはほぼ不可能。だから他の町で神無月ちゃんや夢月を病室に預けている…ここはそんな避難民が移ってきた町の公園だ。いつも通り私はベンチに座り日向ぼっこをする。たまに公園を素通りする人を眺めるのもまた楽しみの１つだ…大きなあくびをし、ただただ時間が流れるのを感じる中、一人の男が公園に入ってきてはベンチに座り私を撫でる。

「ふっ…猫は気楽そうで良いな。もう私はどうしたら…。」

良く見ればタカミネ社長だった。今の私は誰がなんと言おうと猫の姿…そう、私は猫山蜜柑だ。今は猫の姿だからバレてない…私はいくつか謝らなければならなかった。そこで私は猫の姿から人の姿へと変身した。

「タ、タカミネさんっ…ごめんにゃさい！ミカがタカミネさんに攻撃してしまい…。それとっ！シゲミツさんを守れなくて…お、怒られるの承知です！」
「…君は猫になれるのか。何故、猫になれるのか聞きたいがこう言うものは話が長いからな…。さて、今回の件はどれも大丈夫だ…確かにとても辛かった。苦しく、悲しかった。私はただ単に遊戯王を楽しんで貰おうと社員と頑張ってきたつもりだったが…つもりでしかなかった。今回の件で遊戯王をやめてしまう人は多数いるだろう。猫山蜜柑…君はそれでも続けて、楽しんでくれるか？」
「はいっ！」
「そうか…それだけで多少は勇気づけられるよ。にしてももう仕事は出来ないだろうな…。宮野真保にも伝えてくれるか？」

蜜柑はタカミネからの伝言を聞き、それを伝えるために走った。タカミネはため息を１つ溢し、公園を後にした。