124話 月に写る兎　作：紅瑠璃

蜜柑と真保とタカミネは先を急いだ。ようやくタカミネコンポレーションにたどり着いた。正面口を探し見つけたが機械がうようよと居て入れそうにない。そこで裏口からの侵入を試みたが開かない。

「このドアは自動ロックがついている…。他にこの中に行ける所は…正面口と電力室だろう。」
「電力室…ですね。」

三人は電力室を目指し、入る。したに続く階段を降る。中は薄暗く奥の景色が見えなかった。しかし水が流れる音は聞こえた。真保は白衣から小型ライトを出し辺りを見回す…。下水道…にも見える。迷路のようだ。タカミネを先頭に真保、真保の肩を強く掴みキョロキョロと見回す蜜柑。ひとつ目、二つ目の角を曲がった所に男が一人立っていた。皆が見たことある顔。

「やぁ…社長。お元気そうで。」
「…カグラ…。」
「その二人も連れてきてくれたんだ。お礼にスゴいものを見せようかな。こいっNo.39希望皇ホープ。」

カグラが呼ぶと私たちの後ろからホープが現れた。そのホープはパッと見だったが光と言うよりも闇を出していた。きっといつだかのNo.96に取りつかれたときの影響がまだあるのだろう。

「おもてなしをしてあげなさい。」
「ホォォーッ！」

ホープがこちらに飛んできたかと思うと蜜柑とタカミネを連れ去って上へと飛んでいってしまった。真保は捕まらないように避けていたのでその場に残ることができた。

「あぁ…君が残ったか…。仕方ない…僕がおもてなしをしようか。」

カグラが腰から取り出したのはナイフ。まさか殺すのか…にしては何か形が変だ。さらによく見ればトリガーがついている。しかしカグラはナイフらしきものを手に走ってきた。私は腰につけたデュエルディスクショットを取りだし反撃するが動きが早い。あっさり馬乗りにされてしまった。

～蜜柑の周囲～

「ぐにゃぁぁっ」
「くっ…。あれは本物の希望皇ホープ…のようだな。」
「いや、違うよ…あいつからは闇を感じる。にゃら、私が光に戻す。」

蜜柑は拳をつくり、構える。やる気満々…集中していたとこを誰かが吹き飛ばされてきたとこで集中が切れた。吹き飛ばされてきたのはNo.98と戦っていた宮野京子だった。

「ううっ…痛い…。」
「きょ、京子さんッ！」
「ん？…おっ。蜜柑…あいつは強すぎ。」

前を見ると希望皇ホープと絶望皇ホープレスのツーショットを見た。もしかして希望皇ホープから出ている闇は絶望皇ホープレスの強さに変換されているのではないかと考えてみた。つまり、先にホープをどうにかしないといけなさそうだ。

～宇佐美の周囲～

「永村…あいつは運がないねぇ…自分の不在中に町が襲われるなんて。まぁ、とても重要な話をしてるらしいから仕方ないのよね…。」

そう言いながら次々にNo.を倒す。そして彼女は足を止めた。面白そうな敵がいるからだ。何か金色で竜のような姿をしたNo.。

「あなたの番号は何かしら？」
「貴様…私が何者か知っての口か？私はナンバーズの神。No.100ヌメロン・ドラゴンであるぞ！」

神…。耳で聞くとスゴそうだが実際はどうなのか。刀を抜き、弧卯を起こす。

「そう…なら神を倒せば私は神ってことね。」
「お前などに私は負けるはずなかろう！」

ヌメロン・ドラゴンはその口から炎、氷等を放ち、水を操って見せた。そこで私も円弧連鎖月見卯に変え攻撃をする。これになればそこそこ楽しくなった…が内心は退屈だ。何せこの時点で私の勝ちは絶対のものになったから…

「人間よ。あれほど口を叩くわりには動きに隙が出来てきたぞ。」
「はぁ…はぁ…。その私も本物の私かしら？」
「ふん。貴様の姿はしっかりとこの瞳に写っておるぞ。私の瞳にはお前の小細工など通用せぬ。」

どうやらヌメロン・ドラゴンはナンバーズの神というだけあって他のナンバーズの力を少しだけ使えるようだ。だから炎を出したり、氷を出したり出来たのか。私は遊戯王ってのはあんまり知らないが厄介だ…だが、私が勝つには変わりない。

「そんなに本気見せるならさぁ…私も本物…良いよね～。」
「貴様人間ごときが本物になろうとも私を…神を倒すことはできぬ！」
「へぇ…なら私は神をも欺いたってことね…。」

声は後ろから聞こえる…しかし姿はない。次は前、右、左…四方八方から聞こえる。バカな…私の瞳にあの女の小細工など効かないはず…。突如目の前に現れたあの女は刀に向け、こう唄う…。

「骸が踊る宴…宵闇に唄う朽ち果てた卯…空に写るは虚無の月…見上げろ！月下輪廻ノ兎」

確かそんなことを言ったか、言ってないか…意識が遠くなる…。

「月下輪廻ノ兎…発動条件は夜であること。満月になればなるほど強くなり、新月になればなるほど弱くなる…。そうね…「弧卯」は別の物を見せる。「円弧連鎖月見卯」は五感を支配する。「月下輪廻ノ兎」は人を操る…。記憶、言語、体内構造、五感、意識、感情…ありとあらゆる生命に関することを操る…。さらに、目を植え付けることも出来る。まぁもう私の声は届いてないのだろうけど。」

宇佐美真奈子の前には動くことのないNo.100…意識が石のようだ。まるでそこにオブジェでも建ったのかNo.100は完全停止した。宇佐美はその様子を観賞するかのように覗き見ていると桐谷真澄がやって来た。桐谷はNo.100を見るなり驚くがとても聞く気にはなれなかった。恐ろしい…ただその感情だけが頭を、体を走った。

～蜜柑の周囲～

「つまり…黒いホープを引き付けろと。」
「その間にミカが白いホープを戻す！」

京子と蜜柑が作戦を練っていた。普段は作戦を気にしない二人が頑張っている。京子がホープレスを引き付けている間に蜜柑がホープを闇から引きずり出すとのことだ。作戦が実行された…京子がホープレスに攻撃をする。

「ぐにゃぁぁぁっ！」

蜜柑が力一杯に殴る…が、ホープの特徴的な効果…攻撃の無効により弾かれてしまう…。これではいつまでも攻撃が通らない。

～真保の周囲～

「はぁ…はぁ…はぁ…。ど、どうする。私の射撃では当たらない…。力では負ける。てか、眼鏡にヒビが入ってた…。兎に角…逃げなきゃ。」

私は馬乗りにされてしまったがサイコデュエリストの力を使いカードで目眩ましをすることに成功した。そして、私は逃げている。あいにく小型ライトも落とした。逃げるのに必死で眼鏡が壊れていることに今気がついた。私はまだ死にたくない…あんなナイフで喉は切られたくない…。私は逃げる…その角を右に曲がったその時だった。

「おかえりなさい…さぁおもてなしをさせてくれ。」

戻ってきてしまった…のか？私は半歩後ろに下がる。